第16章~獣人の国に巣食う悪党ども~
第353話~神聖同盟レポート~
獣人の国への街道が復旧した。
その知らせを受けて、俺たちは早速獣人の国へ向かうよう手はずを整えることにした。
ということで、まずはこの前の研究所の件の後始末からだ。
「じゃあ、行くぞ!」
俺は嫁たちを連れて王都乗リットンハイム公爵邸。つまりワイトさんの所へ向かう。
目的は今回のダンジョンの件についての報告をするためだ。
「こんにちは」
「これはホルスト様、ようこそいらっしゃってくださいました」
約束した時間にリットンハイム公爵邸に向かうと、屋敷の執事さんが門の所で待っていて、俺たちを出迎えてくれた。
執事さんはそのまま俺たちを客間に案内してくれ。
「もう少ししたら若旦那様が参られますので、少々お待ちください」
そう説明してくれると、お茶とお菓子を出して歓待してくれた。
「さすがは公爵家。よいお茶とお菓子を出してきますね」
と、ヴィクトリアのやつがお菓子をほおばっている。
というか、お前、ワイトさんの所でがつがつとお菓子を食べるんじゃない!
はしたないと思われるだろうが!
食ってもいいが、もうちょっとお上品に食え!
うれしそうに食うヴィクトリアを見てそんなことを思った俺はさすがに注意しようと思ったが。
「ヴィクトリアさん、よそ様の家でそんなにがつがつ食べては失礼ですよ」
「は~い」
そうやってエリカが先に注意してくれたので、俺の言う手間が省けてよかったと思う。
エリカに言われた後はヴィクトリアも大人しくなったし、これで万事解決だ。
「やあ、待たせたね」
そうやって俺たちがワイワイやっているうちにワイトさんがやって来た。
ということで、早速報告会の開始と行こう。
★★★
「一応、ノースフォートレスの町の警備隊や宮廷魔術師たちから報告が上がってきてはいるけど、実際にキメラとかいう魔物の研究をしていた不審者たちと接触したという君たちの話も聞いてみたくてね。それでここまで来てもらったんだよ」
開口一番、ワイトさんはそう切り出してきた。
現在ワイトさんは王国軍の参謀本部のお偉いさんに出世しており、今回のダンジョンの件について担当しているという話だ。
なので、研究所の連中と直接対峙した俺たちの口から直に話を聞きたいということのようだった。
ワイトさんの話を聞いた俺はどうしようかと思う。
相手は神聖同盟という危険な連中だ。
連中は結構強固な組織みたいなので下手にしゃべると情報が洩れる可能性もある。
ただワイトさんは信頼できる人だし、王国もすでに神聖同盟のことを知っている。
だから、まずはこんなことから話してみることにする。
「ワイトさんは以前国王陛下が大悪魔に襲われた件を覚えていますか?」
「大悪魔?ああ、覚えているよ。確かホルスト君たちが退治したという……」
「はい、その通りです。それでは、その大悪魔が現れた時、国宝が盗まれたという話もご存じですよね」
「国宝?ああ、確か秘密組織と通じていた騎士団の者が盗んだとか」
「その秘密組織の名前とか、ワイトさんはご存じですか」
「確か神聖同盟という連中だとか……まさか!」
ここまで話したところでワイトさんも研究所を運営していた連中の正体に気が付いたのか、ハッとした顔になる。
「そう、そのまさかです。これは危険なので警備隊の人たちには言っていないのですが、研究所の連中の正体は神聖同盟の連中ですね」
「ううむ」
俺のその返答を聞いて、ワイトさんはうなるような声を出し、何度もウンウンと頷くのであった。
★★★
「それで、ホルスト君は何で連中の正体を知っているんだい?」
「簡単なことですよ。研究所の中に忍び込んで奴らの会話を盗み聞きしたのです。あいつら、俺たちがいるとも知らないで、堂々としゃべっていましたからね」
「そうなんだ。それでそいつらが話していたのは、自分たちの名前だけ……というわけではないよね」
「はい、その通りです」
俺はワイトさんの質問に対して肯定の返事を返す。
「やはりノースフォートレスの町と西の獣人の国とを結ぶ街道沿いで起きた魔物の群れのスタンピードは奴らの仕業だったようです」
「その件については部下からキメラという奇怪な魔物が元凶の可能性がある。そう聞いていたのだが、やはりそれで間違いないのかい?」
「間違いないですね。自分たちで自慢げにそう言っていましたからね」
「なるほど、よくわかった。ホルスト君の話を聞く限りでは今後その神聖同盟とやらの動向には十分注意する必要があるようだね」
「ええ、注意しなければならないと思います」
そこまで話すと、俺とワイトさんはお互いに顔を見合わせて、ウンウンと頷き合うのだった。
「それで、ホルスト君は神聖同盟のことについてどこまで知っているんだい?」
「これは以前に国王陛下にも話したことがあるのですが、この世界に封じ込められた邪悪な存在の復活をもくろんでいる組織ということくらいしか知りません。あ、後今回の一件で妙に高い技術力を持っていることもわかりましたけどね」
「ふむ、我々が持っている情報と大差はないようだね。そういうことなら、こうしないかい?今後お互いに神聖同盟の情報を手に入れたら情報交換をしようじゃないか」
「いいですね。そうしましょうか」
ということで話はまとまった。
今後神聖同盟の情報を手に入れたらお互いに教え合う。
その方向で俺たちは協力することになったのだった。
★★★
そうやってワイトさんとの話が終わった後は。
「「「うわー、ヘラさん、お腹が大きくなりましたね」」」
ワイトさんが食事を用意してくれたので、食事をしていくことになった。
その席に出席したワイトさんの奥さんのヘラさんを見て、嫁たちが前述のような発言をしたというわけだ。
前に妊娠のお祝いに来てから数か月、奥さんのお腹も大分大きくなったいた。
次の春前くらいには出産予定のようだ。
「触ってみますか?」
「「「是非!!!」」」
ヘラさんがそう嫁たちを誘ってきたので、嫁たちがヘラさんのお腹を触っている。
で、触りながらチラチラと俺の方を見ながらアピールしてくる。
多分、自分たちも子供が欲しいというアピールだと思う。
まあ、アピールしてくるのはいいのだがワイトさんの前でやるなよ、とは思う。
ただ、完全に無視すると後が怖いので、手を振って「もうちょっとの辛抱だ」と、無言で言ったことにしておいて誤魔化すことにする。
そうやって、嫁たちがヘラさんの大きくなったお腹に夢中になっている間、俺はワイトさんと雑談する。
「そういえば、前にリネットさんのお父さんに注文していたオリハルコンの剣。あれがとうとう出来上がったんですよ」
「ほう、それは素晴らしいですね」
「ちょっと見てみますか?」
「ええ、喜んで」
そう言うと、ワイトさんは出来上がったオリハルコンの剣を持って来て見せてくれた。
「ほほう。さすがリネットのお父さんだ。この刃の波紋。とても美しく仕上がっていますね。これなら戦場でも活躍してくれるでしょう」
「ははは。歴戦の勇者であるホルスト君にそう言ってもらえると嬉しいな」
「それに、この剣の鞘の装飾も美しいですね。これなら目立つから、上級の軍人として箔が付くでしょう」
「やはりホルスト君は剣に対して造詣が深いね。僕は軍でも上の方だから、部下に威厳を示さなければならないからね。だから中身だけではなく、目立つ鞘にも気を配ったんだよ」
「おっしゃる通りですね。上官ならそういう部分にも気を遣わないといけませんからね。そうしないと部下が付いてきませんからね。さすがだと思います」
「ありがとう」
とこんな感じで、リッテンハイム公爵家の人たちと楽しく交流してから家に帰ったのだった。
これでこの先神聖同盟に関する情報も手に入れやすくなったことだし、俺的には有意義に過ごせた一日だった。
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