第352話~年が明け、獣人の国への街道が復旧する そして、地脈の封印への道が開かれる!~

「さて、それじゃあ神殿にお参りに行くぞ」


 ダンジョンの探索から帰ってのんびりしているうちに年が明けたので、家族で新年の神殿参りに出かけた。

 全員で歩いて町の神殿へと向かう。


「ホルスト君、すごい人だね」

「ああ、そうだな」


 予想通り神殿の周辺は人であふれていた。

 この状況の中歩くと大人はともかく子供が迷子になる可能性がある。

 そこで考えてきたプランを実行することにする。


「ホルスターと銀は俺の肩に乗りな」

「「は~い」」


 ホルスターと銀を俺の肩に乗せて歩くことにする。

 これならはぐれる心配はないので、俺としては一安心だ。


 そうやって二人を肩に乗せながら歩いてると、お祈りする人たちの列があったのでそれに並んで順番を待つ。

 しばらくすると順番が来たので、花と寄付金を置いてからお祈りする。


 うちの家族全員が真剣な顔で何やらお願いしている。

 皆子供が早く欲しいと常々言っているから、元気な子供ができますようにとでも願っているのだろう。


 ちなみに俺は今年こそ妹のやつから解放されますようにとお願いしておいた。

 だって、あいつ面倒くさいんだもの。

 昨年、いや一昨年からどれだけ迷惑を掛けられたか。思い出すだけでも頭が痛い。

 来年、いやもう今年か。

 今年こそはあいつのしりぬぐいから解放されたい!


 俺は真剣にそう願うのだった。


★★★


 さて、新年のお祈りが終わった後はお楽しみの時間だ。


「さあ、屋台巡りをしますよ。銀ちゃん、ホルスター君。ヴィクトリアお姉ちゃんが好きなのを買ってあげますからついてきなさい」

「はい、ヴィクトリア様」

「うん、ヴィクトリアお姉ちゃん」


 神殿からの帰り道、ヴィクトリアが銀とホルスターを連れて屋台巡りをしている。


「獣人の国名物『肉巻きパン』?なんですか、これ?とてもおいしそうですね。是非買わねば」


 今も何か変わった食べ物を見つけたようで、早速買い食いしている。


 というか、肉巻きパン?

 どうやらパンの周りにタレをつけて焼いた肉を巻き付けたもののようだ。

 サンドイッチの具とパンの位置を入れ替えたような料理だ。

 俺も初めて見る料理だが、これはこれで濃厚なタレの匂いがしておいしそうだった。


「これは中々おいしいですね」

「そうだね、ヴィクトリアお姉ちゃん」

「さすがは、ヴィクトリア様です」


 食べた三人は満足しているようなので、良かったと思う。

 その後も、三人はクレープを食べたり、おもちゃを買ったりと、屋台を楽しんだようで、


「「「今日は楽しかった」」」


と、満足しながら帰宅したのだった。


★★★


 お参りから帰った後は、しばらくのんびりしてから嫁たちが夕食の支度を始める。

 今日のメインは最近では我が家の新年の恒例メニューとなっているお雑煮のようだ。


「銀ちゃん、昆布でおだしをとる時はあまり煮過ぎてはダメですよ」

「はい、エリカ様」

「ヴィクトリアちゃん、アタシが野菜を切るから、そっちは卵焼き用の卵を割ってね」

「ラジャーです」


 銀を交えて全員で仲良くご飯を作っている。

 その一方で俺はホルスターの相手をしている。


「ほうら、ホルスター。パパとあっち向いてホイして遊ぼうか」

「うん」

「「じゃんけん、ポン」」

「あっち向いて、ホイ」

「あ、パパ。僕の指さす方向いちゃったね。僕の勝ちだね」

「ああ、負けちゃったな。よし、次は負けないぞ」


 という感じで遊んでやっていた。

 ホルスターも楽しそうにしてくれているし、俺も息子と遊べて楽しいのでこれでいいと思う。


 こうして正月の一日はのんびりと過ぎていく。


★★★


 そうやって家族でだんらんをしていると。


「新年明けましておめでとうございます」


 妹のチームがパトリックの世話に来た。


 え?正月なのに仕事をするのかって?

 当たり前だろう。パトリックは正月関係なく餌も食うし散歩もするんだよ。

 誰かが世話をしなければならないのだ。

 ということで、妹たちに世話をしてもらうことにする。


 ただ、正月ということで、その間給料は増額してある。


「銀貨五枚の追加でどうだ」


 そうやって誘いをかけたら。


「喜んで!」


 と、話に乗って来たので、任せることにした。

 小一時間ほどで仕事が終わってまた家の方へ来たので、


「ほらよ。今日の給金だ」


と、渡してやる。

 すると、ここで妹のやつ、サプライズをかましてきた。


「「「「ヴィクトリアさん、お誕生日おめでとうございます」」」」


 今日はヴィクトリアの誕生日でもある。

 なので、そうやってヴィクトリアに花束とホールケーキをくれたのだった。


「え?本当にくれるのですか?ありがとうございます!」


 誕生日プレゼントをもらったヴィクトリアは非常に喜んでいた。

 というか、俺も旦那として嫁さんが嬉しそうにしているのはうれしかった。

 だからヴィクトリアが。


「折角だから、ご飯うちで食べて行ったらどうですか?」


 と、妹たちを誘っても何も言わなかった。

 本当は妹なんかを誘いたくはなかったが、誕生日プレゼントまでくれた相手を追い払うわけにもいかず、しょうがないので黙認することにしたのだった。


★★★


「うわ!何このワイン!とってもおいしいんですけど」

「ふふふ、そうでしょう。これはワタクシたちが前にダンジョンで見つけたワインで、もう作っていないので、王侯貴族と言えども飲めないような幻のワインですからね」


 うちの秘蔵のワインを飲んで驚いている妹たちにヴィクトリアがそう説明してやっている。

 今日は新年会兼ヴィクトリアの誕生日会ということで、エリカ秘蔵のワインを飲んでいて、妹たちもそのおこぼれに預かっているということだ。


 今日の夕飯は豪華だ。

 まずは前菜的な意味も込めて雑煮と簡単なおかずを食べた後、注文しておいたヴィクトリアの誕生会用の豪華なオードブルを食べている。

 このオードブルは王都のホテルの特注品で、一般的な住居の一か月分の家賃が一瞬で飛んでいくくらいの値段がした。


 なので、みんな喜んで食べている。


「ねえ、お兄ちゃん。これドラゴンのお肉かな?」

「多分そうだろうな」

「本当?私ドラゴンの肉って食べるの久しぶりだから、うれしいな」

「何、ドラゴンの肉?私は初めて食べるなあ。……うん。これはおいしいね。ベラも食べたら?」

「うん、食べる。……本当、おいしい」

「私の家も最下級貴族だったから、実はドラゴンの肉って食べたことないんだよね。ということで、いただきます!……うん、ほっぺたが落ちそうなくらいおいしい!」


 特に妹の仲間の子たちはドラゴンを始めて食べる様で、オードブルに入っているサイコロステーキ状の小さなドラゴンの肉をありがたがって食べていた。


 というか、ドラゴンの肉ってフレデリカのような村一つしか所有していないような小さな貴族だと簡単に食べられないものなんだな。

 一口に貴族と言ってもその格差はすさまじいものがある。


 今日の宴会を通して俺はそんなことを学んだのであった。


★★★


 そうやって正月をのんびりと過ごしてからしばらく経つと、ギルドから連絡があった。


「西の獣人の国への街道が復旧しました」


 そんな風に報告が入って来た。


 それを聞いた俺はやっと来たか、と思った。

 これでやっと残り一か所の地脈の封印に取り掛かることができる!

 俺は嫁たちを集めてこう告げる。


「やっと獣人の国へ行けそうだ。ここをこなせば神命を果たせる。そうしたら……」

「「「そうしたら?」」」

「今度こそたくさん子供をつくろう。つくって、楽しい家庭を築こう」

「「「はい!!!」」」


 と、こんな感じで俺は嫁たちと意気投合するのだった。


 獣人の国。住人の多くが獣人だという国。

 そこではどんな冒険が待っているのだろうか。

 その冒険とその後の嫁たちとの子作り。


 それを思うと、俺はワクワクする気持ちを抑えらえられないのだった。

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