今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
閑話休題51~その頃の妹 ギルドマスターに会う~
閑話休題51~その頃の妹 ギルドマスターに会う~
レイラです。
兄貴に言われて転移門をくぐると本当に目の前にノースフォートレスの町があった。
「「「本当にノースフォートレスの町だ。すごい!」」」
目の前に本当にノースフォートレスの町があってフレデリカたちが驚いている。
というか、私も驚いている。
転移魔法なんて伝説級の魔法だ。それを兄貴が使えるだなんて……簡単には信じられなかった。
兄貴はそんな魔法をどこで覚えてきたんだろうと思う。
できることなら私にも教えて欲しいなんて思うけど、兄貴とは仲良くないから無理な気がする。
おっと!今はそんなことを考えている時ではない。
兄貴から預かって来た手紙をギルドマスターに届けなければならない。
「みんな、行くよ!」
「「「うん」」」
こうして私たちはギルドへ向かって一目散に走るのだった。
★★★
夕方近い冒険者ギルドの中には結構な数の冒険者がいた。
みんな今日の依頼を終えて帰って来て、今から報酬を受け取るのだと思う。
そんな中、私たちは比較的すいている受付を見つけてそこへ並ぶ。
五分ほどで私たちの順番が来る。
「お待たせしました」
ギルドの職員さんが笑顔で迎えてくれる。
きっと私たちのことを依頼を終えて帰ってきた冒険者だと思って迎えてくれているのだろうと思うが、残念ながら私たちの用件はそれではない。
私は単刀直入に用件を言う。
「ギルドマスターに会わせてもらえないですか」
「ギルドマスター、ですか?失礼ですが、ギルドマスターはお忙しいので、一般の冒険者では簡単には会ってくれないと思いますが」
「実はお兄ちゃんに手紙を預かって来たんです」
「お兄ちゃん?」
「お兄ちゃんはホルスト・エレクトロンと言います」
「ホルスト・エレクトロン?まさかSランク冒険者のホルスト様?あなたはホルスト様の妹さんなのですか?」
それまで私の話を適当に聞いていただけに見えた職員さんの顔が、兄貴の名前を聞いた途端真剣なものになる。
それだけで兄貴のネームバリューの凄さが分かり、ちょっとだけムカついたが、今はそれどころではない。
「そうです。ホルストの妹のレイラ・エレクトロンです。実はお兄ちゃんがギルドマスターからダンジョン探索の依頼を受けていて、私たちもそれについて行ったのですが、ダンジョンの第三層で隠し通路を発見したのです。その件で手紙を預かって来たのです。だから、ギルドマスターにお会いして手紙を渡したいのです」
「わかりました、レイラさん。そういうことでしたら、すぐに取り次ぎます」
「お願いします」
そう言うと、職員さんは席を離れ、すぐにギルドマスターに取り次いでくれたのだった。
★★★
数分後、私たちはギルドマスターの執務室に通された。
「初めまして。私がギルドマスターのダンパだ。君がホルスト殿の妹さん?ホルスト殿から手紙を預かって来たんだって?」
「はい。妹のレイラです。ダンジョンを探索していたら隠し通路を発見したので、その件に関してお兄ちゃんから手紙を預かってきました」
「そうか。それでは手紙を読ませてもらうから、その間お茶とお菓子でも食べてのんびりしていなさい」
「ありがとうございます」
ギルドマスターさんが手紙を読んでいる間、私たちは出してくれたお茶とお菓子を食べながらのんびりとする。
ここのお茶はかなりおいしかった。
普段私たちが飲んでいる安お茶とは大違いだ。
お茶請けのお菓子もチョコレートのかかった高そうなクッキーで、とてもおいしい。
「ベラ、このお茶とってもおいしいね」
「そうだね、マーガレット」
「フレデリカ、クッキー食べまくっているけど、そんなに気に入ったの?」
「うん、とっても」
仲間たちも大満足のようで、満面の笑顔で楽しそうに食べている。
そのうちにギルドマスターも手紙を読み終えたようで、再度私に声をかけてくる。
「レイラ君と言ったかな。一つ聞きたいんだが、この隠し通路とやらは、そんなに厳重に隠されていたのかね?」
「はい、お兄ちゃんが結構本気で爆破しないと通れないくらいには巧妙に隠されていましたね」
「何ということだ!」
私の話を聞いたギルドマスターは、バタと椅子を倒しながら急いで立ち上がる。
その顔は心なしか青ざめていた。
そして、そのまま職員さんを呼び出すと、こう指示する。
「おい!今すぐ冒険者たちを非常招集しろ!」
「非常招集?何かあったのですか?」
「うむ。このままだとまたスタンピードが起こってしまうかもしれない。その前に対処する!」
え?非常招集?
私は事態の急展開にただ驚くしかないのであった。
★★★
それからはとてもドタバタした展開が続いた。
町中から手の空いている冒険者たちが集合して来て、町の城門の前に集結する。
もちろん私たちも強制参加でその中にいる。
さらに言えば参加者は冒険者だけでなく、軍の軍人さんもいる。
どうやらギルドマスターさんが軍に声をかけて集めたらしかった。
その上、さっきから頻繁に早馬が行き交っていて、町は騒然としている。
どうやら最悪の事態に備えて周囲の町や村と頻繁に連絡を取っているようだった。
この訳の分からい状況に集まった冒険者たちは不安がっている。
「一体何が起こっているのよ!」
「訳わからないよ!」
皆しきりに不安を口にしている。
そうこうしているうちにギルドマスターさんがやって来て、皆にこう告げた。
「町近くのダンジョンに凶悪な魔物がいる可能性が高くなった。万が一ダンジョンから出てくると、スタンピードなどが起き、周囲に甚大な被害が出る可能性がある。それを防ぐため、我々はダンジョンの周囲を警戒することになった。ということで今からそのダンジョンは向かう。諸君らは万が一の事態に備えて万全の態勢を整えるように」
ギルドマスターの話によると、私たちはあのダンジョンの警戒をするために派遣されるようだった。
どうやらギルドマスターはダンジョンから以前お兄ちゃんが倒したキメラとかいう凶悪な魔物が出てきてスタンピードが起こるのを警戒しているようだ。
だからその前に対処するつもりのようだ。
ギルドマスターの話が終わると同時に全員でダンジョンへ向けて出発する。
「これからどうなるのだろう」
皆口々にそう不安を口にしている。
もちろん私も不安でたまらない。
前に見たあの奇妙な魔物。あのお兄ちゃんが危険だというくらいなのだから、本当に危険なのだと思う。
だから、私はこう願うのだった。
お兄ちゃん、何とかして!
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