第350話~神聖同盟の秘密兵器を叩き潰せ!後編 VS.四魔獣のクローン~

 四魔獣のクローンを倒す糸口をつかんだ俺たちは早速攻撃を開始する。


 まず狙うはヨルムンガンドだ。

 クローン?だっけ?

 確かに本物そっくりとはいえ能力があれだけ落ちているのならばヨルムンガンドなどただの大きい的である。


 ということで、一気に攻めていく。


「『神化 魔法合成『天火』と『天爆』と『天罰』の合成魔法『神々の怒り』」

「『神化 大爆破』」

「『神化 聖光』」

「「『大爆破』と『聖光』の合体魔法『聖爆破』」

「『戦士の記憶』よ、力を貸して!フルバースト『真空断』」


 各々が力を集中して最強技を繰り出していく。

 ドゴーン。

 全員の攻撃が集中してヨルムンガンドがすさまじい勢いで焼き尽くされて行く。


 数秒後。


「お、跡形もなく消えたな」


 俺たちの総攻撃のおかげでヨルムンガンドのクローンは跡形もなく消滅した。

 生命反応のかけらすら感じることができなかった。

 本物は同じような規模の攻撃を食らっても生き残ったのにである。

 所詮、偽物は偽物ということなのだと思う。


 さて、これで残りはキングエイプとグランドタートルの偽物が二匹。

 さっさと片付けてしまうことにしよう。


★★★


「バ、バカな!」


 ヨルムンガンドのクローンがいとも簡単に倒されて所長が焦っている。

 焦った所長は事態を打開しようとしてキングエイプとグランドタートルのクローンに慌てて命令を下す。


「キングエイプにグランドタートルよ!早くそいつらを倒してしまえ!」

「「グオオオオオ」」


 所長に命令されて今度は残りの二体が襲い掛かってくる。


「『極大化 天雷』」


 俺は二匹への権勢のため魔法を放つが。


「ピキー」

「何?!」


 二匹のうちグランドタートルが前に立ち、俺の魔法を防いでしまう。

 さすがは能力が落ちているとはいえグランドタートルのクローン。

 この程度の魔法なら防いでしまうことができるようだった。


 その上、グランドタートルの後ろにいるキングエイプは攻撃の準備を行っている様子である。

 どうやら二匹で防御と攻撃の担当を決め攻めてくる腹積もりらしかった。

 それなりに有効な手なので厄介だ。


 ということで、こちらもからめ手を使うことにする。


「『天土』」


 魔法で二匹の魔獣の足元に落とし穴を掘ってそこに落としてやる。

 そうやって二匹を足止めしている間に攻撃の準備をすることにする。

 ただ魔獣たちがこれくらいで黙っているわけもない。


「ウホホホホホ」

「ピキピキー」

「やばい!『超振動波』と『荷電粒子砲』だ!」


 落とし穴にはまった二匹が各々の必殺技を放ってきた。

 どちらも山くらいなら吹き飛ばしてしまえるくらいの強力な攻撃だ。

 まともにくらえばただでは済まない。

 だが。


「『神化 防御結界』」


 すぐさまヴィクトリアが魔法で攻撃を防いでしまう。

 オリジナルより能力が下がっているとはいえ、あの二匹の攻撃を魔法一つで防いでしまうとか、ヴィクトリアの腕も上がったものである。


 そうやってヴィクトリアが敵の攻撃を防いでくれている間に俺は攻撃の手はずを整える。


「『神獣召喚 ネズ吉 窮鼠猫を噛む 発動』」


 まず神獣召喚の魔法で攻撃にバフをかける。


「リネット。俺がグランドタートルの防御結界を何とかするから、その隙に一撃を加えてくれ」

「心得た!」


 その上でリネットに指示を出してから、攻撃を開始する。


「『神強化』。『一点突破』」


 準備が整うと、俺はグランドタートルに対して必殺剣を放つ。


「ピキピキー」


 当然グランドタートルは防御シールドで防御してくるが、この攻撃は本家本元のグランドタートルの防御シールドでさえも貫いた技だ。


 しかもあの時よりも俺は強くなっている。

 パリーン。そんな破壊音とともに防御シールドが破壊される。


「フルバースト『一撃必殺木工割』」


 そこにリネットが必殺技をぶちかます。

 グランドタートルに一気に近づき、その甲羅の上から一気に大斧を振り下ろす。

 バッキーーーーン。

 それだけで大きな音を立てて甲羅が真っ二つに割れ、中身が外にあらわになる。


「『究極十字斬』」


 そこへトドメの一撃を俺が放つ。


「ピー」


 短い悲鳴を残してグランドタートルは地面に倒れ動かなくなる。

 これで残るキングエイプのみである。


★★★


 最後のキングエイプは簡単だった。


「ウホホホー」


 仲間をあっさりと倒した俺たちを見て恐怖しているのか、次々と『超振動波』を放ってくる。

 だが、それらの攻撃はヴィクトリアの魔法ですべて弾かれてしまう。


「『究極十字斬』」

『フルバースト『真空断』」


 その間に俺とリネットがキングエイプに攻撃を仕掛ける。


「ウキー」


 それだけでキングエイプも息絶えてしまった。

 本物だったらこんな攻撃で死んだりはしないだろうから、こいつも所詮は偽物ということなのだろう。


 さて、これで強敵は全滅だ。

 後は所長をどうにかするだけだ。


★★★


「どうか命だけは助けてください!」


 四魔獣を倒した後、所長の方へ向かって行くと、所長は土下座して降伏してきた。

 今まで対峙してきた神聖同盟の幹部たちは命を賭して俺たちに抵抗してきた。


 そいつらに比べたら今の所長の態度は拍子抜けだった。

 まあ、そっちの方が俺たちにはありがたいから別に構わないけどね。


「さあ、それじゃあ洗いざらい話してもらおうか」

「はい、何でもお聞きください」


 そんなわけで、これから所長に話を聞こうとしたときそれは起こった。


「この恥さらしめ!」


 突如そんな声が研究所の中に響き渡った。


★★★


「何だ?この声は?」


 突然研究所内に響き渡った声に俺たちは驚き慌てる。

 その声はものすごく無機質で、声に暖かさがなく、聞いていてとても怖いものだった。


 そんな俺たちの驚きを無視し、その声は所長に命令する。


「さあ、生物研究所所長よ。神聖同盟の一員としての務めを果たせ!」

「はは!畏まりました」


 すると所長は先ほどまでの全面降伏の態度を改め、確実に破滅への道を歩み始める。


「『小爆破』、『小爆破』、『火球』、『火球』」


 魔法で研究所中を破壊し始め、火を放ったのだ。

 所長の魔法の威力は結構なもので研究所の設備が次々と破壊され、研究資料が灰になって行く。


「この野郎!」


 俺は急いで所長をとっ捕まえ、地面に組み伏せる。

 そして、その目を見て思わずうなる。


「この目、常人のそれじゃない!」


 所長の目は人間の瞳の色とは思えないほど赤く染まっており、そこからは所長の背後に人ならざる存在の臭いがプンプンしたからだ。


 それはともかく、俺に捕まった所長は。


「神聖同盟、万歳!」


 最後にそう叫ぶと、糸の切れた操り人形のように動かなくなった。

 後で調べてみたら奥歯に毒を仕込んでいたようで、それを使って服毒自殺をしたようだ。


 ということで、最後はちょっとしっくりしない形で研究所の件は終わってしまった。


 色々な謎も残った。

 一番の謎は最後に聞こえた声の主は誰かということだが、それ以外にもこいつらがクローンだとかいう俺たちの知りえない技術をどこで知ったのかということなど、不明な点はたくさんあった。

 それらについては、おいおい調べるとして、今は最優先すべきことがある。


「旦那様、早く火を何とかしないと焼けてしまいます」


 所長が放った火の後始末だった。


 やれやれ。

 そう思いつつも、俺は嫁たちと頑張って消火作業を始めるのであった。

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