第345話~隠し通路~
第三層になると魔物の出現する魔物種類がガラリと変わった。
「ふむ、オーガか」
妹たちが薬草を回収するのを見物しながら進んでいるとオーガが三体出現した。
「レイラ!お前たちは下がっていろ!」
さすがにオーガ三体となると妹たちの手には負えなかったので俺が対応することにする。
俺は愛剣クリーガを抜きながらオーガたちの前に進み出ると。
「おい!ウスノロども!相手してやるから、かかって来いよ!」
と、挑発してやる。
「ウガアアア」
知能が低い癖に俺が悪口を言ったのが分かったのか、オーガたちが一斉に俺に攻撃してくる。
しかも単縦陣でバカ正直に真っすぐに俺に向かってくるだけの単純なことしかできない。
本物のバカだ!
軽くひねってやることにしよう。
「おりゃああ」
剣を大上段に構えて一気に斬りかかって行く。
ザシュ。バシュ。ドス。
あっという間にオーガ三体の首をはねてやる。
首をはねられたオーガは息絶え、地面に転がる。
それを見て妹のパーティーの子たちがはしゃいでいる。
「レイラのお兄ちゃん凄い!」
「オーガを一撃で倒すとか、人間技じゃないね」
と、やたらと俺のことを褒めてくる。
褒められた俺はちょっと照れくさくなって。
「いやあ、それほどでも」
と、照れ笑いし、手を振った。
若い女の子に褒められるのは気持ちがいいものなので、本当ならもっと手を振ったりしたかったが調子に乗るのはここまでにしておく。
というのも嫁たちのきつい視線を感じたからだ。
調子に乗るな!
嫁たちの視線はそういうメッセージを俺に投げつけて来ていた。
ということで、この場を離れ先へ行くことにして誤魔化すことにする。
「さて、オーガも片付けたし、このエリアもそんなに広くないから先へ行くぞ!」
★★★
オーガと戦ってからしばらく進んだ後、何の前触れもなく突然ヴィクトリアが立ち止まった。
「あれ?おかしいですね」
そんなことを言いながらしきりに首を捻って何か考えている。
どうしたのかと気になった俺が声をかける。
「ヴィクトリア、何かあったのか?」
「いえね。あそこの壁なのですが」
俺に聞かれたヴィクトリアは、そう言いながらダンジョンの壁の一部を指し示す。
俺はヴィクトリアが指示した壁を見る。
そこは一見すると何もない普通の壁にしか見えない場所だった。
「あそこの壁がどうかしたのか?」
「ワタクシの土の精霊の報告によると、あの壁の向こうに何か空間があるみたいです」
「空間?それってつまり……隠し通路ってことか!」
「はい、その通りだと思います」
ヴィクトリアの話を聞いた俺はその問題の壁の部分に近づき、トントンと壁を叩いてみる。
叩いた感じでは壁の向こうに空白がある感じはしなかった。
俺はもう一度ヴィクトリアに聞いてみる。
「本当にこの先に隠し通路があるのか」
「はい、間違いないと思います。ただこの壁は分厚いので普通に探したのでは多分発見できないと思います」
「ふむ」
厚い壁か。なるほど確かに発見しにくいかもしれないな。
しかし、隠し通路か。気になるな。
そんなものが隠されているとしたら、あのキメラもここから出てきたのかもしれない。
「とりあえず、隠し通路を露出させてみるか。お前らもそれでいいか?」
「「「はい」」」
俺の意見に嫁たちも賛成してくれたので、壁を破壊して隠し通路に入って行くことにする。
「『神強化』。必殺剣『一点突破』」
俺は剣を抜き、必殺剣『一点突破』を使用する。
『一点突破』は四魔獣の一匹グランドタートルの防御シールドを突破できるほどの突破力を持つ。
この程度の壁を砕くことなど造作もなかった。
案の定。
「お、出てきたな」
ガラガラと音を立てて壁が崩れると、隠し通路が出現した。
奥の方を覗き込んで見ると、下り階段らしきものが確認できる。
「ビンゴだな」
隠し通路を見つけた俺は奥へ進もうとするが。
「何だ。この瘴気は!」
下り階段の先からはただならぬ瘴気が漂ってきていたので、進むのをやめて立ち止まる。
この先には絶対キメラクラスのやばいものがある!
俺の直感がそう告げていた。
★★★
「レイラ、お前たちは町へ帰ってギルドに行き、ギルドマスターのダンパさんにこのことを伝えてくれ」
俺はこのことを報告するために妹のやつを町へ帰すことにした。
「え~、私も行きたい。だってこの先未探索エリアなんでしょ。だったらお宝がっぽり……」
「バカ野郎!!!」
俺はお宝目当てでついて来ようとする妹のやつを叱り飛ばした。
「階段の先から漏れ出てくる瘴気を感じないのか!この先は危険なんだ。この先にはキメラクラスの凶悪な魔物がいる可能性がある。お前たちの実力では殺されるだけだ。だから大人しく町へ帰れ」
「わかった。そうする」
俺が叱りつけると、渋々帰ることを認めたのだった。
と、ここでエリカがこんな提案をしてきた。
「旦那様、この子たちだけをギルドに行かせてもギルドの方が信用してくれるかわかりません。ここは旦那様が手紙を書いて持たせてはどうですか」
「それもそうだな。よし、手紙を書くとするか」
「それと、この子たちだけではこのダンジョンから帰れるかはなはだ心もとないです。それに悠長にしている時間もないと思います。ここは、旦那様の魔法で送り届けるのがよろしいかと」
「わかった。俺もそうする方がいいと思う」
これにて方針は決まった。
ということで早速行動を開始する。
★★★
手紙を書き終えた俺はそれを妹のやつに渡した。
「ほら、これをちゃんとダンパさんに渡すんだぞ」
「うん、わかった」
「それと今から俺が秘蔵の魔法を使ってお前たちを町まで帰す。ただ、秘蔵の魔法なので他言無用だぞ。それが約束できるのなら、手紙を届ける報酬と口止め料ということで、前金に銀貨50枚。帰ってから金貨1枚をやる。どうだ?約束できるか?」
「え?銀貨50枚に金貨1枚。そんなにくれるの?」
「ああ」
「うん、もちろん誰にもお兄ちゃんの魔法のことは話しません。皆も大丈夫だよね?」
「「「うん」」」
ということで話はまとまった。
「ほらよ。銀貨50枚だ」
「わーい」
まずそうやって妹のやつに銀貨を渡した後、魔法を唱える。
「『空間操作』」
転移門を作り、こことノースフォートレスの町を繋げる。
目の前に突如現れた不思議な門を見て妹のやつがハッとした顔になる。
「お兄ちゃん、これってもしかして転移魔法?」
「そうだ」
「こんな魔法どこで覚えたのよ」
「それは秘密だ。それよりもこの門を抜ければ目の前はノースフォートレスの町だ。ちゃんと手紙を渡すんだぞ」
「わかった」
そう言うと、妹たちは転移門の向こう側に行ってしまった。
さて、これで万が一の場合の備えもできたことだし、俺たちは先へ進むことにしよう。
「お前ら、行くぞ!」
「「「はい」」」
そして、俺たちは下り階段を下りて先のフロアに進むのであった。
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