第343話~妹よ!ダンジョン探索はピクニックじゃないんだぞ!~

「さて、お前ら行くぞ!」


 翌日の朝早く俺たちはダンジョンへ向けて出発した。

 俺の嫁たち三人と妹のパーティー四人を引き連れてダンジョンへ出発する。

 ホルスターと銀は昨日のうちにエリカのお父さんの所へ預けてきた。


「おじい様たちの言うことを聞いて良い子にしているんだぞ」

「うん。パパたちもお仕事頑張って来てね」

「ホルスターちゃんのことはこの銀にお任せください」


 二人は良い子なのでお父さんの所で大人しくしていることと思う。


 それはともかく、全員が集合したので早速出発した。

 問題のダンジョンは町の近くなので徒歩で行く。


「何で馬車使わないのよ~」


 徒歩で行くことに対して妹のやつが文句を言っているが。


「最近ギルドの依頼でパトリックを結構使っているからな。今回くらいは休ませてやらないとかわいそうだろうが!」


 そう言って不平を一蹴してやる。

 ちなみにパトリックはエリカの実家のノースフォートレス屋敷に預けてきたので任せておいても安心だと思う。


 さてそんな感じで妹の相手をしているうちにダンジョンへと着いていたのだった。


★★★


「お、ダンパさんに聞いてきた通りだな」


 ダンパさんに聞いてきた通りダンジョンの入り口には扉が設けられ、厳重に施錠がされていた。


「とりあえず扉を開けるとするか」


 俺はダンパさんから借りてきた鍵で扉を開ける。

 カチャリ。と小さな音を立てて扉が開く。


「うん、特に変わった様子はないな」


 ダンジョンに特に変わったところはなく、前にキメラが出た時と同じように見えた。

 とはいえ、仕事で来た以上は中の様子を探らなければならない。


「よし!中へ入るぞ!」


 ということで俺たちはダンジョンの中へと入って行くのだった。


★★★


「キャー、銅鉱石よ!銅鉱石。ちょっとマーガレット、掘るのをの手伝って!持って帰ってギルドに売って生活費にするんだから!」

「うん、任せて!」

「ベラとフレデリカはそっちの鉄鉱石を回収して」

「うん、わかった」

「こっちは任せて!」


 ダンジョンに入るなり、妹のやつが目の色を変えてダンジョンの鉱物を回収している。

 仲間の子たちに指示して次々と回収して自分たちのマジックバックに収納している。

 そういう仲間同士でじゃれ合っている様子を見ていると、仲良し同士でピクニックでもしているようで何となくほほえましい気持ちがわいてくるから不思議だ。


 しかし、ここはダンジョン。油断は禁物だ。

 俺は妹たちに注意する。


「おい!お前らあんまりはしゃぐな!ピクニックに来ているんじゃないんだぞ!ここはダンジョンなんだ。いつ敵が出てくるかわからないんだぞ。鉱石を掘るんだったら、もっと静かに魔物たちに気づかれにくいようにしろ」

「大丈夫よ、お兄ちゃん。わかっているって」


 俺の指摘に対して妹のやつはそう答えたが、本当にわかっているかは定かでない。

 本当どうしようもないやつだ。

 こんなのと兄妹だと思うと本当に泣けてくる。


 しかし、こいつ誰に似てこんな性格になったのだろうか。

 オヤジもオフクロもこうではないし、不思議なことだ。


 ということで少し考えてみると、そういえばすでに亡くなっている母方のばあちゃんが割といい加減な所があったのを思い出した。


 ばあちゃんは天然で細かいことは気にしない性格だったため、物事を適当に捌いて行く人であり、そのせいでじいちゃんにいい加減にしろとよく怒られていた。

 妹のやつ、そういう所ばあちゃんにそっくりだと思う。

 血は争えないとはこういうことを言うのだと思う。


 まあ、どうでもいいか。

 妹とはいえ他人事だし。


 ただ一つ心配なのは、将来生まれて来るであろう俺の子供たちが妹のやつに似やしないかということだけである。


 頼むからそれだけは勘弁してほしいと俺は切に願うのであった。


★★★


 その後、第一層の探索は順調に進んだ。

 まあ、この前新人たちの訓練で来た時と状況的に大差はないから当然と言えば当然の結果だった。


 ただ、この前との違いといえばダンジョン内の採取物が多い事だろうか。

 このダンジョン、しばらく立ち入り禁止になっていたからその間に採取物が増えたようである。


 第一層は洞窟エリアで、先ほどから妹たちが採掘しているような安い鉱石の他に薬草などもとれた。

 そして、それらの量は確実にこの前来た時よりも多いようだった。

 それを見て妹のやつが狂喜乱舞するくらいには、ね。


 ただ妹のやつが見境なく取り過ぎると次に来る人の分までなくなるので、一応釘をさしておくことにする。


「おい!あまりとり過ぎるなよ!次に来た人たちの分がなくなるからな」

「大丈夫だって」


 そう言いつつコツコツと銅鉱石をマジックバックに放り込む妹を見て、本当かよと心の中でツッコミながらも、俺は妹の行動を見守るしかないのであった。


★★★


 そうこうしているうちに第二層への下り階段がある場所までやって来た。

 この前、キメラと戦った場所のすぐ側だ。


 多分何もないとは思うが、もしかしたら何かの痕跡とかが見つかるかもしれない。

 そう考えた俺はここの調査をすることにする。


「リネット、お前はマーガレットやベラと一緒に周囲の警戒にあたってくれ」

「「「任せて!」」」

「残りのメンバーはこの辺りの探索だ。気合い入れていけ」

「「「はい」」」


 リネットたち三人が周囲の警戒をしている間に調査をすることにする。

 ただここで妹のやつが反抗してくる。


「え~、私たちもやるの~?調査って、お兄ちゃんたちの仕事じゃないの?」

「当たり前だろうが!お前らは俺たちの補助ということでギルドに申請して連れて来てやっているんだぞ!だからきちんと働いてもらうぞ!」


 そう叱り飛ばしてやると、「仕方がないなあ」とか言いつつ、妹のやつも『探知魔法』を使って周囲の探索をし始めるのだった。


★★★


 結論から言うと、調査の結果、この辺りには何もないことが判明した。

 まああれから大分時間が経っているから、もし痕跡とかが当時残っていたとしても今となっては消え去っている可能性が高いし、あのキメラがどこかから紛れ込んできた存在だったのなら、そもそも痕跡など初めからなかった可能性もある。


 ということで、第一層の探索はこれで終了とし、次へ行くことにする。


「お前ら、次へ行くぞ」

「「「「「「はい」」」」」」


 そして、俺たちは第二層への階段を下りて行くのであった。

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