第339話~お前が何で今日の誕生日会のことを知っていたんだ?~

 開拓村から帰ってしばらくした頃。


「今日も儲けたな」


 今日も魔物の討伐依頼をして帰ってきた俺はホクホク顔だった。

 今日の依頼はノースフォートレスと王都を結ぶ街道上に突然現れたというドラゴンの退治だった。


 仕事自体は楽だった。

 ドラゴンとはいってもよくいる地竜だったので、今更俺たちの脅威にはならなかった。

 さっと目的地まで行くと、さっさと首を切り落として帰ってきたのだった。


 そして、ドラゴンを引き渡してギルドを出た俺たちは、今日の予定を果たすために目的地へと向かうのだった。


「お兄ちゃん」


 と、そこへ突然妹のやつが現れて声をかけてきた。

 どうやら俺たちが帰ってくるのを待ち伏せていたようだった。


 正直言うと、今日はこの後楽しい行事が待っているので妹のやつなんかと話したくはなかったんだが、公衆の面前で話さないのも変な噂が立つので、話だけは聞いてやることにした。


「どうした?何の用だ?俺たちは今日は忙しいんだが」


 俺がそう聞き返してもレイラのやつは何も答えず、それどころかサプライズをかましてきた。


「お兄ちゃん、お義姉さん。お誕生日おめでとう」

「「「おめでとうございます」」」


 妹がそう言うと同時に妹のパーティーの子たちも現れ、俺とエリカの二人に花束を渡してきたのだった。

 俺とエリカは妹の突然の行動に狐に化かされでもしたような顔をするのだった。


★★★


 その後、俺たちは場所を移動し、俺とエリカの誕生日会を開くために予約していた店に移動した。


「やった!お兄ちゃんにおごってもらえる!今日は張り切って飲んじゃお」


 もちろん妹たちも一緒だ。

 というか、俺のおごりで腹いっぱい食う気満々だった。

 他の子たちは。


「「「いや、そういうつもりでプレゼントとを贈ったわけではないです」」」


 そう言って遠慮しようとしていたのだが、妹のやつだけは。


「別に昨日からお店だって予約していて準備万端なんだから、遠慮しなくていいのに」


 と言いながら、ついてくる気満々だった。

 どうやら他のメンバーの子たちは俺たちの誕生日を純粋に祝うために来てくれたようだが、妹のやつには下心があったようだ。


 というか、お前はなぜ俺たちが昨日から店を予約していることまで知っている!

 他人のプライベートまで調べるんじゃない!

 正直こんな妹いらねえ、他のパーティーの子たちが妹だったらよかったのに。

 とか思ってしまったね。


 だから妹だけは死んでも連れて行きたくなかったが。


「いけませんよ、旦那様。折角プレゼントをくれたのにむげに扱っては。旦那様が狭量だと言われてしまいます」


 と、エリカにたしなめられたので連れてきたのだった。

 癪に障ったが、エリカに言われては逆らえなかった。

 何せ俺は嫁さんたちには逆らわないことにしているからな。

 それに妹におごったところで金銭的にどうこうなるわけでもないし。


 ここは寛大な気分で行くことにする。


★★★


「6名で予約していたのですが、10人に増えても大丈夫ですか」

「10名様ですか?ちょっと確認するのでお待ちください。……大丈夫ですよ。どうぞお通りください」


 急に人数が倍近くになったので席の方大丈夫かなと思ったが、何とかなりそうだった。

 そのまま店員さんに誘導されて席に着く。

 席に着くなり、妹たちの方をちらっと見ながらこう言ってやる。


「折角お祝いに来てくれたんだ。好きに食べてくれて構わないぞ」

「「「「ありがとうございます!ゴチになります」」」」


 そう異口同音に返事をしてきた。

 妹の仲間の子たちはともかく妹のやつもこういう時に何を言うべきかくらいは知っているんだなと思った。


「俺はエールで」

「ワタクシはワインがいいですね」

「アタシはリキュールがいいかな」

「私もヴィクトリアさんと同じワインでいいですね。ホルスターと銀ちゃんはぶどうジュースでいい?」

「「うん」」


 とりあえず飲み物の注文を、ということで俺たちは自分の飲みたいものを注文する。

 そして、それに続いて妹のパーティーの子たちが注文する。


「お兄ちゃん、私この高そうなワインがいいなあ。頼んでもいい?」

「好きにしろ」

「じゃあ、これにする。みんなは?」

「私もワインでいいかな。マーガレットとベラはどうするの?」

「私はエールがいいかな」

「私もマーガレットと同じでいいよ」

「エールが三つにワインが三つ。リキュールが一つ、ぶどうジュースが二つですね」


 こうやって注文が終わってしばらくすると。


「お待たせしました」


 飲み物と簡単なおつまみが運ばれてきた。

 ということで早速宴を始めることにする。


「お誕生日、おめでとうございます」

「みんな、ありがとう。それではカンパ~イ!」


 皆のお祝いの言葉を受けた後、俺が乾杯の音頭を取って宴が始まる。


「ジャンジャン持ってきてください」


 お腹を空かせていたのだろう。ヴィクトリアのやつがどんどん注文している。

 大量の料理が運ばれてきて、それが次々と消えていく。

 まあ、今日はうちの家族の他にいつも腹を空かせている妹のパーティーもいるからな。

 食料の減り具合が激しいのもよくわかる。


 それはそれとして、妹のやつヴィクトリアが注文したのを食うだけで、意外と自分からは積極的に注文しない。

 実はこいつなりに遠慮しているのかなと思ったが。


「ねえ、フレデリカ。この料理ってどんなの?」

「さあ?」


 とか仲間に聞いているので、メニューに載っている料理がどんなのかよくわかっていないだけの様だった。

 まあ、この店は妹たちの稼ぎではあまり来られないような値段の高い店だからな。

 それで見たことがないメニューばかりで戸惑っているのだと思う。


 それを見ていると、妹のやつ案外バカなんだなと思えて、今までのうっぷんが晴れていく思いがしたのだった。


★★★


 さて、宴もたけなわになってきた頃、俺は妹のやつに気になっていたことを聞いた。


「レイラ。お前何で今日俺たちが誕生日会を開くって知っていたんだ。俺とエリカの誕生日はもう過ぎているのに」


 そう俺たちの誕生日はすでに過ぎていた。

 それでも今日誕生日会をやったのは、ヴィクトリアやリネットがそれでも一応ケジメとして開こうよと言ったからである。


「ああ、それね」


 そして、俺の疑問に対して、興味深い返答を返してきたのだった。

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