今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第338話~開拓村の建設 土壌改良と代官所の建設 そして、開村式 ……って、ヴィクトリア、代官所が悪代官の屋敷っぽくないからといって騒ぐなよ!~
第338話~開拓村の建設 土壌改良と代官所の建設 そして、開村式 ……って、ヴィクトリア、代官所が悪代官の屋敷っぽくないからといって騒ぐなよ!~
最後の仕事の代官所と倉庫の建設もそんなに時間はかからなかった。
代官所といってもこんな片田舎の開拓村の代官所だ。
代官といっても常駐ではない。
他のいくつかの村との兼任で定期的にそれぞれの村を行き来するのだ。
だからそんなに大きい建物ではない。
ただそれでも代官所なので見た目はそれなりのものを建てる。
一応建物はレンガ造りの立派な建物にして、建物の周囲には土壁の壁も建設する。
「『天土』」
俺がまず魔法で整地してから大工さんたちが建物を建て始める。
建物のうち木を使っている部分は俺のパーティーが切って来た木材を使用し、レンガは用水路の工事でエリカとヴィクトリアが作った物の残りを使用している。
代官所の横には村の倉庫も設置する予定なので、結構な材料がまだいるので足りない分の材料を調達するのが俺たちの仕事だ。
ちなみに、倉庫は自警団用の武器や非常用の食料を保管したり、徴税した作物の一時保管などに使われる予定である。
「これで材料は一通りそろったかな」
半日ほどで足らない材料を調達した後は本格的に暇になる。
例のごとく俺たちに建築の技術はないので、基本見学するしかすることがないのだ。
「こうやってたまにはのんびりと見学しているのもいいかな」
そんな風にのんびりしていると、ヴィクトリアが突然こんなことを言い始めた。
「う~ん、ただ見ているだけなのは退屈で死にそうですね。そうだ!どうせ暇なら畑の土壌の改良工事とかやりませんか?」
今日のヴィクトリアはどうしたんだ?
急に自分から働きたいとか言い出すなんて、何か悪いものでも食べたのか?
突然勤労意欲に目覚めたヴィクトリアを見て、俺はそんなことを思ったのだった。
★★★
「畑の土壌の改良?魔法でそんなことができるのですか?」
畑の土壌の改良工事についてモーリスさんに話すととても驚いていた。
そして。
「是非ともお願いします。この荒れ地を最初からある程度収穫が期待できる農地に変えていただけるのなら、村人たちも非常に助かるでしょう」
そうやってお願いされてしまった。
俺、そんなことやるのは初めてなんだけどな。
でも、こうなった以上は引っ込めないし、村人のためになるというのなら是非ともやり遂げたかった。
ということで、とりあえず近くの村から少し畑の土をもらってくる。
そして、開拓村の耕作地の土と比べてみる。
「うん、大分違うものだな」
二か所の土を見比べると、大分異なっていた。
工作予定地の土が乾燥していてさばさばとした固い土だったのに対して。
「こっちは大分柔らかいな」
すでに畑となっている土の方は適度に水分を含んで柔らかく、植物の生育に必要な栄養分などがしっかりい含まれているような感じだった。
「それでヴィクトリア。この工作予定地の土をこっちの畑のような土に変えることが本当にできるのか」
「ええ、できますよ」
俺の質問に対してヴィクトリアは自信たっぷりにそう答えた。
「何せ神属性魔法は神の力を宿した魔法ですからね。この位の事造作もないです」
「そうなのか?」
「そうなのです。まあ、とりあえず実験してみましょうか」
ということで、とりあえず実験ということでやってみることにする。
★★★
「大事なのはイメージですよ」
さて、いざ土の改良を試みっようとすると、ヴィクトリアがそうアドバイスしてくる。
「イメージ?」
「はい、イメージです。畑の土をイメージして魔法を使うとうまく行くと思いますよ。とりあえずは畑の土を触りながらやってみるのがいいのではないかと思います」
イメージねえ。
そんなことくらいでうまく行くものなのかな。
まあ、このヴィクトリアも一応魔法の女神様の娘。
普段は全然だけれども、たまにはいいことを言うので信じてみようと思う。
とりあえず左手にもらってきた畑の土を持ち、右手に改良予定地の土を持ち畑の土の方を見ながら魔法を使ってみる。
「『天土』」
すると驚くべき変化が起こった。
「お?これは!」
俺の右手に握られていた荒れ地の土が畑の土のように水けを含んだ柔らかいものに変わったのだった。
「これなら行ける!『天土』」
魔法を足元の地面に対して使用する。
「やった!これなら行けるんじゃないか?」
魔法を使用した足元の土を触ってみると、こちらも土が水けを含んだ柔らかい土になっていた。
慎重な俺はここで村人を何人か呼んできて確認してもらう。
その結果。
「この土なら1、2回豆などを植えて栄養を与えてやればすぐにでも小麦が取れるようになるんじゃないか」
「さすがご領主様の御一族だ!」
「用水路や家ばかりか、畑の土まで用意してくれてありがとうございます」
と、絶賛の嵐だった。
「いやー、それほどでも」
褒められまくった俺は照れくさくなって思わず苦笑いをしてしまった。
というか、舗装工事に整地作業に土地改良にと、なんにでも使える『天土』の魔法ってっ本当に万能過ぎない?
ヴィクトリアなど。
「まさに土木無双ですね」
とか言っちゃっているし。
さて、こうして村人たちにも褒めてもらったことだしバンバンと地の改良をしていこうと思う。
★★★
大体一週間ほどで土地の改良は終わった。
荒れ放題だった土地が多少はマシになった。
「おい!この辺から豆をまいて行くぞ!」
「おう!」
気の早い村人の中にはすでに畑に豆をまいて将来に備えようとしている人もいる。
こうやって豆をまいた後に麦をまくと収穫が良くなるのだそうだ。
開拓村は何年間かは免税になるらしいので、その間に収穫量を上げて蓄えを築いておこうという腹積もりなのだろうと思う。
それはさておき、俺が土地の改良工事をしている間にも村の建物の建設は進んだ。
村の家の数は10軒以上増え、代官所と倉庫も完成した。
できた家には村人が家族を呼び寄せ、村の中での女性や子供の比率も上がってきている。
後、代官所や倉庫などの村の重要な建物も完成している。
見るとそれなりの建物が出来上がっていた。
ただ、意外だったのはヴィクトリアのやつが代官所を見てがっかりしていたことだ。
「こんなしょぼい建物、悪代官の住居としてはふさわしくないです!」
と、訳の分からないことを言っている。
お前は一体何を期待していたんだ?
片田舎の代官所が金銀財宝で埋め尽くされているとか、ありえないぞ。
そういえば、こいつどっかのダンジョンでも悪代官に関して妙なこだわりを持っていたからな。
その延長でこう言っているのだと思うが、現実はこんなものだ。
大体この村の代官に就任予定の人は、エリカのお父さんの話によると、真面目な人でとても悪代官になれる人ではないみたいだしな。
ただそれをヴィクトリアに言っても余計不貞腐れるだけ泣きがするので言わないでおこうと思う。
それはともかく、これで俺たちの仕事もほぼ終わりだ。
ということで最後に開村式を開催して締めたいと思う。
★★★
「それではこれより開村式を始めます。まず最初は開拓責任者のホルスト様のご挨拶から始めます」
開村式は俺の挨拶から始まった。
というか、俺、いつの間に開拓責任者になっていたの?
聞いていないんだが。
……まあ、よく考えたら俺がこの中で一番地位が高いからそうなったのだろうが。
実際、俺はヒッグス家の重臣家の当主だし、嫁さんはヒッグス家の娘だし。
よく考えたら、俺以外が責任者になれる要素がなかった。
まあ、いいや。もう終わった話だし。それより今は挨拶をしようか。
「皆様、こんにちは。ご紹介に預かりましたホルストです。この度は皆さまの努力の甲斐があって何とか村の開拓をやり遂げることができました。本当ご苦労様でした」
俺の挨拶はそんな調子で始まり大体一分ほどで終わった。
その後にモーリスさんや村長が挨拶し、開村式の主要な部分は終わりだ。
最後は村人同士の親睦会も兼ねた食事会が行われた。
オーク肉や捕って来た野鳥を焼いた肉料理やスープ、焼きたてのパンなどが振る舞われる。
そこまで豪華な食事ではなかったが、一仕事終えた後の御馳走だ。
「うめえ!」
「もっとおかわりくれ」
村人たちもそうやって楽しんでくれているようで何よりだ。
もちろん俺たちも楽しませてもらっている。
「仕事の後のご飯はおいしいですねえ」
ヴィクトリアのやつは相変わらず食べているし、他の嫁やホルスターたちも。
「このオーク、脂がのっておいしいですね」
「本当だね」
「ホルスターちゃん、銀姉ちゃんが鳥さんのお肉取ってあげるね」
そうやって笑顔で食事を楽しんでいるのだった。
そんな皆の笑顔を見て俺は思うのだ。
こうやって頑張って開拓を手伝ってよかったな、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます