第334話~エリカのお父さんの頼み事 さあ、開拓村を建設しよう~

 さて、赤色カミツキガメの依頼をこなした後も俺たちはいくつか依頼を受けて稼いでいた。


「今日も大儲けだな」

「そうだね。ワイバーンが五匹。いい稼ぎになったね」


 今日の獲物はワイバーンだった。

 最近、ノースフォートレスの町から少し離れた所の村をワイバーンの群れが襲うという話だったので俺たちが退治を引き受けたのだった。


 正直依頼料自体は安かった。

 まあ、片田舎の小さな村の依頼なのでそんなに大金を出せなかったのだ。


 だが、獲物のワイバーンはいい値段になる。

 そっちを見込んでこの依頼を引き受けた俺たちは、依頼を引き受けると件の村に向かいさっさとワイバーンの群れを片付けたのだった。


「しかし、あのワイバーンたち間抜けですね。ワタクシたちが空を飛べないものと思い込んでやたらと空の上から挑発してきましたが、ワタクシたちがホルストさんの魔法で空を飛ぶのを見た途端急に慌て逃げ出しましたからね。いい気味でしたね」

「本当ですね。物事舐めてかかってはいけないといういい教訓をあのワイバーンたちが身をもって教えてくれましたね」


 ヴィクトリアたちの言う通り、ワイバーンは俺たちのことを舐めてかかってきたので、お望み通り本気で戦ってやると、ワイバーンたちはあっさりと全滅したのだった。


 こうしてワイバーンの群れを全滅させた俺たちはさっさと町へ帰るのだった。


★★★


 ワイバーンを冒険者ギルドに引き渡した俺たちは、その後ホルスターと銀を迎えにエリカのお父さんの屋敷へ向かった。


「お義父さん、いつもありがとうございます」

「いや、別に構わないよ。それどころか、僕としてはもっとホルスターをうちに遊びに来させてほしいくらいだよ」

「ははは、そうですか。まあ、時間がある時にはなるべく遊びに行かせますよ」

「ああ、お願いするよ。それより折角来たんだ。ご飯くらい食べて行きなさい」

「はい、それでは是非」


 ということで、お父さんの屋敷でご飯を食べていくことになった。

 そのままリビングに行き、お父さんが用意してくれた食事をみんなで食べる。


「うん、エリカさんのお父さんの所のご飯はいつ食べてもおいしいですね」


 そんな風にヴィクトリアを始め、皆が満足しながらご飯を食べていると、エリカのお父さんがこんな話をしてきた。


「ところで、風の噂に聞いたんだが……」

「何ですか?お義父さん」

「ホルスト君は魔法で土木工事をするのが得意だそうだね」

「土木工事ですか?」

「うん。何でもこの前も魔物のスタンピードが発生したときに大急ぎで城壁を築いて、魔物の進行を食い止めたと聞いているのだが」


 確かにその通りだ。

 俺はこの前の魔物の群れのスタンピードの時に立派な城壁を築いた。

 その城壁は軍にも評価され、高値で買い取ってもらっていた。

 金貨200枚だった。


 前に北の方に城壁を築いた時にも買い取ってもらったことがあったからこれで軍には大分儲けさせてもらったことになる。


「ええ、確かに城壁を造りましたけど、それが何か?」

「実はね。そのホルスト君の建築魔法の腕を見込んで造って欲しいものがあるんだ」


 そう言いながら、お父さんは俺に詳細な話を始めるのだった。


★★★


「このワインはとってもおいしいですね」

「ああ、そうだな」


 その日の晩、俺はエリカと二人、寝室で秘蔵のワインを飲んでいた。


 前にどこかのダンジョンで手にいれた逸品で、もうこの世界では流通していないものだ。

 売ればすさまじい金額になるだろうが、俺たち、特にエリカには売る気はさらさらない。

 たまに贈り物としてあげることがある程度で、その他は全部自分たちで楽しむつもりだ。


 それに贈り物と言っても身内にしかあげたことがない。

 あげたことがあるのは、エリカ、ヴィクトリア、リネットの家族くらいのものだ。


 なお評価はとても良く、みんな喜んでくれた。特にワインに造詣が深いエリカのお父さんは、


「このもう存在しないと言われる幻のワインが飲めるだなんて」


と、涙を流して喜んでいた。


 こんな風に俺とエリカは高級ワインを開けながら、大人の時間を過ごしているというわけだ。


 ちなみにホルスターは今日銀と寝ている。


「ホルスターちゃん。今日エリカ様はホルスト様と寝られるみたいですから、お二人の邪魔をしないように銀お姉ちゃんと寝ましょうね」

「うん」


 そんな風にうれしそうについて行っていたので、今頃は仲良くおねんねしていると思う。


「それで、旦那様はどうなされるおつもりですか?」


 それはともかく、仲良くワインを飲んでいるとエリカが前触れなしに話を切り出してきた。

 どうなされるつもりなのですか?何をかって?

 もちろん夕食の時にお父さんから頼まれた件だ。


 お父さんの話によると、ヒッグス家には現在開拓村をいくつか造る計画があるそうだ。

 それでその中の一つの村の建設の手伝いを俺にしてほしいということだった。


「開拓村の新規開拓かあ。いつもお世話になっているお父さんの頼みだから別に手伝うのは構わないのだけど……」

「構わないのだけど?」

「開拓村の建設って何をするかよくわからないんだよね。だから、どうしたらうまく行くか想像がつかないんで、どうしようかと思っているんだ」

「ああ、そういうことなら大丈夫だと思いますよ」


 俺の疑問に対してエリカがそう即答する。

 その顔は妙に自信に満ちていた。


 まあ、エリカは小さい頃から開拓とかヒッグス家の仕事について色々聞かされてきただろうからそういう方面についても何をしていくのか大まかにわかっているのだと思う。


「開拓村の建設で主に旦那様がするのは三点ほどだと思います」

「三点?三つもあるのか」

「ええ、そうです」


 俺の問い返しに対して、エリカはコクリと頷く。


「開拓村の建設に置いて大規模な工事が必要な工事は、用水路の建設、区画整理、住民の住居の建設ですね。父はその辺の一番大切な工事を旦那様に手伝って欲しいのだと思います」

「用水路ねえ。造ったことが無いからうまく造れるかわからないぞ」

「開拓に際してはヒッグス家の方から技師が指導に来ると思います。旦那様には、技師の指導通りに作ってもらえれば問題なく造れると思います」

「指導通りにか。うまく行くかな?」

「大丈夫ですよ。大雑把でもいいから概要を造ってしまえば、細かい部分はヒッグス家が派遣した職人さんたちが仕上げてくれます。ですから旦那様は大まかな部分をやればいいと思います」


 細かい部分は置いといて大まかに造ってしまえばよいか。

 確かに、用水路を造る上で一番大変なのは土を掘って大まかな形を整えることだろう。

 エリカのお父さんの考えとしてはそこをやってほしいということなのだろうと思う。


 そう考えたら不思議とできそうな気がしてきた。

 だから、俺はエリカにこう言った。


「わかった。そういうことなら引き受けようか」

「まあ、引き受けてくださるのですね。ならば、明日にでも私の方からそう父に報告しておきましょう」


 と、こんな感じで俺たちは開拓村の建設を引き受けることになったのだった。

 開拓村の建設だなんて初めての経験だが、果たしてうまく行くのだろうか。

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