第329話~妹たちとの大規模訓練終了 魔法職編~

 ヴィクトリアです。


 今日は今期の大規模訓練の訓練最終日ということで最初の挨拶が終わった後、皆にこれまでの成果を披露してもらうことになりました。


 ということで、とりあえず魔法使いコースの教官さん、エリカさん、ワタクシの順に挨拶します。


「みんな、よく頑張りましたね。今日で訓練も最後です。ここを卒業です。ここを出た後も冒険者として頑張ってくださいね」


 まず教官さんがそのように挨拶すると、パチパチと訓練生の子たちが拍手をして挨拶に応えます。

 そして、握手が鳴りやむと、次はエリカさんの番です。


「みなさん、ここまでよく修業しましたね。最初私が来た時、皆さんの実力を拝見させてもらいました。その時はこのレベルでは魔物に対抗するには心許ないなあと思いましたが、ここでの修行の結果、みなさんもレベルアップを果たし、今では魔物とも十分に渡りあえる実力が身についてきたと思います。ただ、油断は禁物ですよ。世の中には突拍子もない攻撃を仕掛けてくる魔物もいるのです。油断なんかしているとケガでは済まないこともあるのです。ですから、自分の実力を考えこれからの冒険者生活を充実したものにしてくださいね。私からは以上です。そして最後に一言……みなさん、ご卒業おめでとうございます」

「ワー、ワー」


 パチパチパチ。

 エリカさんの挨拶が終わると、大きな歓声と拍手が沸き起こります。


 まあ、今回の訓練、エリカさんが中心となってやっていましたからね。

 訓練生の子たちもエリカさんの薫陶を受けて頑張りましたからね。

 おかげで魔法の腕も上達して、いっぱしの冒険者になれましたからね。

 感慨もひとしおなのだと思います。


 その証拠がこの大きな歓声と拍手というわけです。


 こうしてエリカさんの挨拶がいいムードに包まれたまま終わった後、最後にワタクシの挨拶が始まりました。


「では、ワタクシからも挨拶させてもらいます。前の二人と同じようなことを言いますが、みなさんよく修業に耐えましたね。素晴らしいですよ。この経験を糧に冒険者としても頑張ってくださいね。それでは最後にワタクシからもお祝いさせてもらいますね。ご卒業おめでとうございます」


 パチパチパチ。

 ワタクシの挨拶が終わるとエリカさんにも負けないくらいの拍手が沸き起こりました。

 歓声が沸き起こらなかったのは、ワタクシの生徒は回復役の子が多くて内向的な性格の子が多かったからだと思います。


 さて、こんな感じで冒頭の挨拶も終わったので、次は訓練生の子たちの成果の披露の番です。


★★★


 レイラです。


 とうとう訓練の最終日が来てしまった。

 いや、それは別にいいのだけど、何が問題なのかというと、今日私をはじめ訓練生たちは今までの訓練の成果の披露をしなければならないのだ。


 私には過去訓練生の実力を兄嫁に見せる時に簡単な魔法をミスってしまって兄嫁に睨まれた経験がある。

 その時の兄嫁はとても怖かったので、以来ちょっとしたトラウマになっている。


 だから、今日も失敗して怒られやしないかと、内心ビクビクしていたりする。


 でも、逃げたりはできない。

 逃げたりしたらそっちの方が兄嫁は怒るだろうし、うちのチームの評判にも関わる。


 だから、何とか踏みとどまっている。


「『火矢』」

「『風刃』」


 私の前の子たちが次々と魔法を披露していく。

 皆ここへ来たころよりもずっと上達している。


「『精霊召喚 風の小精霊』」


 フレデリカもここで身に着けた魔法を披露して成功させている。

 フレデリカの呼び出した風の小精霊が真空の刃を放ち、的をぶち抜く。


 『精霊魔法』。精霊を呼び出し使役する魔法だ。

 私は聞いたことがない魔法だったが、世の中にはそういう魔法があるらしい。

 兄貴の側室の子が使えて、ここで回復役の子たちに補助の攻撃手段として教えていたのを、フレデリカが身につけたというわけだ。


 というか、回復魔法の教官たちにも教えていたので、「良い魔法を教えてもらった」と、教官たちでさえ喜ぶくらいの代物だった。


 聞くところによると、兄貴の側室はこの魔法をヒッグス家の訓練でも教えたらしくヒッグス家の戦力を向上させることに成功したらしい。

 それに兄嫁は兄嫁でヒッグス家の連中に彼らの知らない魔法を教えたり、兄貴やもう一人の側室も騎士団の連中の訓練に付き合ってやったりして、ヒッグス家の戦力は向上の一手らしい。


 それを聞くと、ヒッグス家の御屋形様、兄嫁のお父さんが兄貴たちの世話を焼くのもよくわかるというものだ。


「それでは、次はレイラさん」


 私がそんなことを考えている間に順番が来た。

 私は前に出て杖を構え、魔法を唱える。


「『火矢』」


★★★


 エリカです。

 現在私は大規模訓練場で魔法使いコースの訓練生の子たちの成果の披露を見守っています。


「『火矢』」

「『風刃』」


 私の目の前で皆さん、次々に魔法を放って行きます。

 うんうん。みんな順調に成長したようですね。

 この分なら冒険者としても十分通用すると思いますよ。


 そんな感じで訓練生たちの様子を見ていると、レイラさんの番がやってきました。


「『火矢』」


 彼女は『火矢』の魔法を放ちました。


 初級の魔法ですが、彼女は以前訓練生の実力を見るために行われた魔法の披露の時にあろうことかこの魔法を失敗しました。

 失敗した彼女は恥ずかしそうな顔をしていましたが、まあ初心者でもちょっと練習すればできるような魔法を失敗したのだから恥ずかしいのは当然です。

 訓練生の子たちにも笑われていましたしね。


 それで、レイラさんが今回あの時と同じ魔法を使用してきたのはあの時のリベンジのつもりだと思います。

 中々いい根性を見せてきていいと思いますよ。


 ボン。


 実際、レイラさんの魔法は的に命中すると炸裂し的をちゃんと燃やしましたし。

 どうやらきちんと成長できたようです。


 と、ここまでは良かったのですが、この後がいけません。


「やった!」


 うまく行ったレイラさんは子供のようにはしゃぎます。

 ウキウキして足が踊っています。

 そして、そのまま自分の席へ帰ろうとしたとき悲劇が起こりました。


「ギャン」


 喜びのあまり足元への注意がおろそかになってしまい、地面に落ちていた小石に躓き、顔面から地面に転がり込んでしまいました。


「痛いのお~」


 とかわいらしい声を発しながらごまかそうとしていましたが、逆効果だったようで、周囲の子たちに思い切り笑われていました。


 しかし、神様の呪いがかかっているとはいっても本当にドジな子ですね。

 将来が心配になりますが、これで魔法使いコースの日程は終了です。


 後は卒業式だけですので、この後そちらに向かうことにします。

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