今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第325話~『聖域の守護者』発動! 魔物の群れをせん滅せよ!~
第325話~『聖域の守護者』発動! 魔物の群れをせん滅せよ!~
「『神獣召喚 ヤマタノオロチ 『聖域の守護者』発動』」
指揮所の上に立った俺は手をあげると同時に『神獣召喚』の魔法を発動する。
ヤマタノオロチのシルエットが一瞬浮かび上がり、壁の周囲が淡い光に包まれる。
ヤマタノオロチの『聖域の守護者』の効果は範囲内の戦闘能力の向上である。
今回は城壁の上とその周囲をその範囲に指定したので、そこにいる限り味方の冒険者たちは魔法の恩恵を得ることができるというわけだ。
「うおおおおお」
「何だ。この力は」
城壁の上にいた冒険者たちが、そのバフ効果に驚き歓声をあげているのを見てもその効果のほどがよくわかる。
『聖域の守護者』の効果はかなりのものみたいだから、城壁の周囲で戦っていれば死ぬ可能性はかなり減るはずだ。
さて、こちらの準備も整ったことだし攻撃開始だ。
「全軍、かかれ!」
俺は全軍に攻撃命令を下すのだった。
★★★
レイラです。
今、私は魔物の大軍と戦っている。
「『風刃』」
「プギイイイイ」
今も一匹オークを魔法で叩き切ってやったところだ。
オークは壁をよじ登って来ていたのだが、私の魔法を正面からくらって地面に落ちていくのであった。
ただ、敵は目の前のオークだけではない。
「レイラ、オーガが一匹壁をよじ登って来たみたいだ。私とベラはそっちに応援に行くから、フレデリカと一緒に援護して!」
「わかった」
今度はオーガが一匹壁を登ることに成功したみたいで、何人かの冒険者が対応にあたっている。
マーガレットとベラも応援に行くつもりらしいので、私とフレデリカに援護を要請してきたのだ。
オーガは手強い敵なので、マーガレットたちが数人がかりでかかっても中々倒せないでいる。
「まずは私から行くよ」
ということで、フレデリカがまず弓で援護する。
フレデリカが放った矢はビュッと一直線に飛んでいき、オーガの右目に見事に命中する。
「うぎゃあああ」
右目を潰されたオーガが絶叫する。
そこへ私が追撃の一手を放つ。
「『火矢』」
私の放った火の魔法がオーガの顔面に直撃する。
「があああ」
顔をまともに焼かれたオーガが呼吸ができなくなってもがき苦しんでいる。
今回、素材や食料になる魔物はなるべく燃やさず切り刻んで行けと言う指示が出射ているが、オーガはその対象外だ。
むしろオーガは焼いてもいいから優先的に倒せと言う指示になっている。
オーガは強い上に金にならないからそういう指示になっているのだと思う。
ということで私も遠慮せずに燃やしたのだった。
「えい!」
「やあ!」
燃やされて動きが鈍くなったオーガに対して、マーガレットをはじめとした冒険者が攻撃する。
ドスッ。ザスッ。
脇の隙間から槍や剣を突き入れ、オーガの心臓などの急所を攻撃する。
「キュー」
さすがのオーガも急所を的確にやられて絶命する。
「「「「やった!オーガを倒せた!!」」」」
オーガという大物を倒せた私たちは手を取って喜び合った。
ゴブリンやオークに苦戦していた私たちがここまでになれたのも訓練のおかげだと思う。
あの地獄のような兄嫁の特訓も無駄ではなかったということだ。
それに兄貴のあの支援魔法。
前にダンジョン演習の時に使っていたのと同じやつだと思うけど、こんなに能力が強化されるなんて初めて知った。
まあ、前の時は兄貴が戦って私は戦わなかったから、その時は効果が分からなかったけど、今こうして戦ってみるとその効果がよくわかる。
体が軽い!
魔法の威力が段違い!
力や素早さも段違いで、仲間たちも大活躍!
何せ私たちでもオーガと戦えるくらいに強化されているのだから。
ここまで強力な強化魔法があるだなんて私は聞いたことがなかった。
こんな魔法、兄貴はどこで身に着けたのだろうか?
正直同じ魔法使いとして羨ましいと思う。
同じ血を分けた兄妹だというのにこの格差は酷いと思う。
ああ、ダメ!また私の嫉妬に火がつきそうだ。
落ち着きなさい!レイラ!今はまだ戦いの最中なのよ!
まずは目の前の戦いをこなさないと!
……よし、落ち着いた。
すべては魔物を倒してからよ。
ということで、私は全力で魔物を倒しに行くのだった。
★★★
「戦況は悪くないようだな」
俺は指揮所で全体の戦況を把握していた。
冒険者たちの腕が全体的に上がっているのと、俺の『聖域の守護者』の効果もあって戦況はこちらが大分押しているようだ。
「今の所、敵の部隊の2割ほどを削ったようだよ。その上、こちらに怪我人や死者はほとんど出ていないみたいだよ」
各所から上がってくる報告をリネットがまとめて俺にあげてくれる。
2割、すでに一万ほどの敵を屠ったのか。
こちらの兵力が五千ということを考えると上々の戦果だ。
ただやはりこちらの戦力は少ないし、体力にも限界はある。
ここは一気に勝負を決めたいところだ。
「それでは一気にトドメを刺しに行くぞ!」
「「「はい」」」
俺は嫁たちを連れて指揮所の外へ出る。
そして、まずはエリカとヴィクトリアに命令する。
「エリカ、ヴィクトリア。打ち合わせ通りに敵の後方部隊をたたいて敵を混乱させるぞ!準備はいいか?」
「「はい!!」」
二人の準備はいいみたいなので、ここで攻撃を開始する。
え?なぜ最初からそれをしないのかって?
そんなことをすれば敵が逃げ出して後始末が難しくなるだろうが!
だからある程度敵をこちらに引き付けて逃げにくくする必要があったのだ。
今までの戦いはその準備期間だったというわけだ。
ただ機は熟した。
だから敵を一気に追い詰める!
「『極大化 天風』」
「『極大化 雷嵐』」
「『極大化 精霊召喚 風の精霊』」
俺とエリカとヴィクトリアの三人が強力な風魔法を敵の後方へ向けて放つ。
「グモオオ」
敵の後方にすさまじい真空の刃の嵐が発生し、魔物たちが次々に刻まれて肉の塊と化していく。
数分それが続いた後に残されたのはバラバラにされた大量の魔物たちだけだった。
これらの魔物は後で回収して食料や素材になってもらうことにする。
「さて、これで残った魔物は一万くらいかな?」
魔物の数が大分減ったので一気に勝負を決めることにする。
★★★
「ヴィクトリア」
「ラジャーです。はい、お求めの聖石です」
俺はまずヴィクトリアに言って聖石を出させて魔力を回復させる。そして。
「『神獣召喚 ヤマタノオロチ 『聖域の守護者』発動』」
『聖石の守護者』をかけ直して効果範囲を戦場全体に広げる。
『聖域の守護者』は範囲を広げると魔力を消耗するので、あらかじめ聖石で魔力を補充したのだった。
「それじゃあ、皆行くよ!」
それを受けてリネットが冒険者たちを引き連れて壁を降り戦場へと突っ込んで行く。
その勢いはすさまじい。
リネットの実力と神器の力と俺の魔法の相乗効果で、単なる斧の一振りで数十体の魔物を撃破しているし、それに勇気づけられた冒険者たちも負けじと魔物たちを追い詰めて行っている。
その勢いに怖気づいたのか、魔物たちが逃げ始めた。
もちろん俺には魔物たちを逃がす気など毛頭ない。
「お前たちに苦しめられた人々の恨みを思い知れ!『天土』」
俺が速攻で魔法で巨大な穴を掘り魔物たちが逃げられないようにする。
「プギャアア」
完全に逃げ道を塞がれた魔物たちはパニックに陥って、すぐさま組織的な戦闘力を喪失してしまって一方的に狩られる存在になってしまっている。
これで後は見守るだけでいいかなと俺が思っていると。
「ホルストさん、あれを見てください!」
ヴィクトリアが俺が造った穴の向こうを指さす。
「あれは……キメラ?」
そこにはこの前戦ったのと同じキメラがいた。
しかもこの前のやつと違って凶悪な殺気を放っている。
俺たちでなく魔物たちに対して。
それが分かった俺の中にピンと電撃のようなものが走り、俺はすべてを悟る。
もしかして、あれが今回の魔物たちのスタンピードの原因では?
そう感じた俺は剣を抜き、次なる戦いに備えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます