第324話~冒険者大集合!……って、妹よ、お前まで来たのか そして、決戦開始!~

 避難民たちを連れて防壁まで帰ってくると、防壁の周囲は人でごった返していた。


「お、すごい数の冒険者たちだ。それに何だか冒険者以外の人たちも大勢いるような」


 集まっている人の数の多さに驚いた俺はそんな感想を漏らす。

 そのくらい明らかに人が多かった。


 後で後方支援の責任者を務めていたダンパさんに尋ねると。


「ノースフォートレスだけでなく近くの町や村の冒険者たちも集まって来たんだ。前にドラゴンの集団が襲ってきた時に結構賞金ができただろう?今回はあれほどの金額は期待できないかもしれないけど、すごい数の魔物が来ているだろう?だからドラゴンほどではないにしても、それなりに稼げるんじゃないかと思ってみんな集まって来ているのさ」


 とのことだった。

 うん、何というか貪欲な奴らだ。


 でもそのおかげで戦力は整ったし、士気も高いので何とかなりそうな気はする。

 俺はお前らのそういう所嫌いじゃないから、頑張ってくれよ。


「それと避難民の中でもやる気のある人が後方の支援部隊として手伝ってくれている」

「そうなんですか?それは助かりますね」

「うん、彼らも魔物に故郷を追い出されて怒っているからね。一矢報いたいと思って手伝ってくれているんだよ」


 一矢報いたい、か。

 その気持ちはよくわかる。

 避難民を救出中、魔物たちに滅茶苦茶にされた町や村をいくつか見てきたが、故郷をあんな風にされたら誰だって怒ると思う。

 だからこうして俺たちを手伝って少しでも魔物に復讐したいと考えているのだと思う。


「後、軍の方はどうなっています?」

「先遣隊は到着したんだけど、ほとんどが騎兵なんだ。本隊の歩兵は足が遅いから到着までにまだ時間がかかると思う。それで、今回は防衛戦闘が主になるので騎兵の出番はあまりないから、その機動力を生かしてここからノースフォートレスの町までの間の街道の警備に回ってもらっている。おかげで避難民の避難が安全かつスムーズに行われているし、物資の補給も順調だよ」


 なるほど本隊はまだ到着していないか。それでも先遣隊だけでも来てくれているのがありがたかった。

 これで後顧の憂いなく魔物と戦える体制が構築できるからだ。


 事態を大体把握した俺は大きく頷く。


「さて、それではいっちょ魔物たちを撃退するとしますか」


 俺は手を組んでそう気合を入れるのだった。


★★★


「おや、お前たちも来ていたのか」


 魔物襲来までまだ時間があるので、うちのチーム全員で防衛施設の見回りをしていると妹のパーティーと遭遇した。


「そうよ。敵は大軍ということで訓練所の訓練生にも召集がかかっているのよ」


 ふーん。そうなのか。

 まあ、訓練も最終段階に入っていたし、今の訓練生たちなら魔物とも十分に戦えると思う。


「そうか。まあ、頑張れよ」

「言われなくてもやってやるわよ!」


 すごくやる気だが、こいつ一体どうしたのだろうか。

 何か変な物でも食べたのだろうか。


 気になって聞いてみると。


「お前、妙にやる気だな。何かあったのか」

「だって、聞く話によると、ここで活躍すれば結構報奨金を稼げるって話じゃない。ここで稼いで一気に借金を返すんだから!」


 なるほど金目当てということか。

 こいつ無駄遣いが激しいらしくてあまり金がないらしいからな。

 まあ、考え方は人それぞれだし、それで血眼になって働くと言うのなら、俺は何も言わない。


 というか、借金?

 ……そういえば、エリカがこいつに借金があるって言っていたな。


「借金っていくらあるんだ?」

「残り銀貨45枚くらい。少しずつ返してきたけど、ここで一気にケリをつけたいのよ!」


 銀貨45枚か。こいつにとっては結構な金額なのだろう。

 何でも下水をぶっ壊して背負った借金らしいのだが、俺としては頑張って返せとしか言えない


 それよりも一つ思ったことがある。

 お前、俺からアルバイト料もらっているのだから、それ溜めて一気に返せよ、と。

 それなのに無駄遣いしまくるとか、本当ダメな妹である。


 それでも今回の戦いではこいつにも頑張ってもらわないといけないから、ここは発破をかけておくことにする。


「まあ、頑張ってくれよ。お前の魔法、エリカに鍛えられて大分マシになったそうじゃないか。期待しているぞ」

「任せといて!」


 と、俺におだてられた妹のやつは張り切るのであった。

 妹との話はこれで終わりだ。


「それじゃあな」


 他にもやることがあるので俺はその場を離れるのだった。


★★★


 それから二日後。


「魔物が来たぞおおおおお」


 壁の上に設置された物見やぐらで監視をしていた冒険者が大声で叫ぶのが聞こえてくる。

 どうやら数万の魔物たちが到着したようだった。


「行くぞ!」

「やるぞ!」


 それを受けて冒険者たちが一斉に飛び出し、所定の配置へ移動していく。


「よし!俺たちも出るぞ!」

「「「はい!!」」」


 俺も嫁たちを引き連れ、壁の上に上り指揮所へと入って行く。


「いよいよだね」


 指揮所にはすでにダンパさんが入っており、テレスコープを使って指揮所の窓から魔物たちの様子を観察しているところだった。


「ええ、そうですね。それで現在の状況はどうなっていますか?」

「魔物の軍勢は大体5万くらいだね。それが壁の前面に群がるように集まっているね。ただ、軍勢と言えるほどはまとまっておらず、本能でこっちへ襲い掛かって来たという感じだね」


 5万の無秩序な魔物の群れか。

 正直烏合の衆だと思うが、数的には圧倒的だと思う。

 こっちの部隊は大体五千人くらいだ。

 烏合の衆相手とは言え、これは結構きついともいえる。


 まあ、いい。

 いざという時は俺たちがどうにかすればいいだけの話だ。

 何せ俺は三十万の魔物をあっという間に消し炭にすることもできるからな。

 手段さえ選ばなければどうにでもなる。


 ただ、俺的には集まってくれた冒険者たちになるべく稼がせてやりたかったし、ギルドに儲けが出るようにして、被害を受けた人たちの復興資金の足しになるようにしたかった。

 というのも、ギルドが儲かれば、王国に税金が入ってそれが復興資金に回されるし、ギルド自身も復興のために多少の寄付をするだろうからだ。


 だから『重力操作』の魔法で太陽の光を収束して一気に焼き尽くすとかはやらない。

 そんなことをしたら魔物の肉や素材まで燃えてしまって、金にならないからな。


 よって、そのための作戦もちゃんと考えていて、皆にも作戦を伝えている。


 ということで、俺は指揮所の上に立ち、声を大きくするための魔道具を持ち全軍にこう呼びかける。


「いいか!お前ら!今から伝えていた作戦を実行するから、気合いを入れろ!」


 そう言うと、俺は右手を上げ、作戦を開始する。

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