第316話~ダンジョン演習講座 出発編 組み合わせはじゃんけんで決めました! ホルスト、ヴィクトリアと組んで新人たちの訓練をする~

「さて、お前ら出かけるぞ」

「「「はい」」」


 ダンジョン演習講座の当日、俺たちは嫁たちを連れて家を出た。


「パパたち、行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃいませ」


 今日は冒険者ギルド主催の行事なのでホルスターと銀はお留守番だ。


「「ホルスターちゃんたちの面倒は私たちが見ておくから、気を付けて行ってくるのよ」」


 ホルスターたちのことはヴィクトリアのお母さんとおばあさんが見ているというので、任せて俺たちだけで講習へ行くことにした。


「「「「行ってきます」」」」


 お母さんたちにホルスターたちを預けた俺たちは集合場所の大規模訓練場へと向かう。

 今日は徒歩だ。

 パトリックもお留守番だ。

 というのも今日行くダンジョンは町の近くにあるので馬車が必要ないからだ。


「お、着いたな」


 そうこうしているうちに大規模訓練場へと到着する。


「ワー、ワー、ワー」

「キャー、キャー、キャー」


 訓練場ではすでに訓練生たちが勢ぞろいしており、出発が待ち遠しいのかワイワイはしゃいでいた。


「よお、ドラゴンの!」


 そんな時ふいに後ろから肩をたたかれ声をかけられる。


「ああ、フォックスさん」


 振り返るとそこにはフォックスがいた。


「フォックスさんも今日は教官として参加するんですか」

「おうよ。ギルドの職員の姉ちゃんに頼まれてな。講習会に教官として参加することにしたんだ」


 俺の問いかけにフォックスは笑いながらそう答えるのだった。


 今日講習に参加する訓練生は多い。

 それらが数名のチームでダンジョンへ入って行くのだ。

 俺たちや教官たちだけではとても手が足りなかった。


 そこでフォックスたちのようなベテラン冒険者たちが手伝うことになったのであった。


「それにしても、いつの間にかこの講習会への参加者も増えたものだな」

「ええ、そうですね」

「本当、最初はもっと少なかったのに立派になったものだ。まあ、そういうことでお互いに頑張ろうぜ」

「はい、頑張りましょう」


 フォックスとの会話はこれで終わりだ。

 というのも。


「さあ、、出発だぞ!」


 と、教官たちが言い始めたのですぐに現地へと向かったからだ。


★★★


 訓練生の一団が向かったのは最近発見されたという新しいダンジョンだ。


 そんなに大きくないダンジョンで第三層までしかない。

 各階の広さもそこまででもない。


 今回の講習では第一層のポイントポイントを回ってくるのが課題なのだが、大体20分ほどで回ってこられるようになっている。

 その程度の広さなのだった。


「それじゃあ、ドラゴンの、行ってくるぜ」


 先陣を切ったのはフォックスのやつで、訓練生を引き連れてダンジョンへ入って行く。


 今回の訓練では4~10人くらいの訓練者のグループに教官かベテラン冒険者が一人ないし二人ついて行くという形で行われる。

 具体的に言うと、訓練生たちにダンジョンの一階のマップを渡してそれを元にチームごとに指定されたポイントを回るというやり方だ。


 これを訓練生だけでやっていく。

 教官たちは聞かれたらアドバイスをするが、積極的には手伝わないことになっている。


「それでは、旦那様私たちも行ってきますね」


 そうこうしているうちにエリカとリネットが訓練生たちについて出発して行った。

 今回うちのチームは俺とヴィクトリア、エリカとリネットという二組に分かれて訓練生たちの指導にあたることになっている。


 ちなみに組み合わせはじゃんけんで決めたようだ。


「「「じゃんけん、ポン」」」

「「「あいこで、しょ」」」


 三人でそうした白熱した戦いが繰り広げられ。


「今回はワタクシの勝ちですね」


 勝ったヴィクトリアが俺と一緒に行くことになったというわけだ。

 あまり勝負ごとに強くないヴィクトリアが勝ったのを見て俺は珍しいこともあるものだなと思った。


 これは帰りは雨が降るなとも思ったりしたが、俺たちは知らなかった。

 俺たちに待ち受けていたものは雨どころかもっとひどい事態であることを。


★★★


「よし、俺たちが付いているから、お前らが講習で習ったことを全部出し切ってみろ」

「「「「「はい」」」」」


 俺たちの番が来たので訓練生たちを引き連れてダンジョンへ入って行く。


 俺たちと行く訓練生は男だけのチームで全部で5人いる。

 全員が前衛職で、訓練場を卒業したらしばらくこのメンバーで仕事をしていくという話だった。


 前衛職だけのパーティーってバランスが悪くないかって?


 その可能性は高いが、魔法使いは前衛職ほどは数が多くないからな。

 パーティーに入れるのは難しいと思う。


 そういう場合は、前衛職の間で弓使いや回復役などの役割分担をしてやっていくのが一般的だ。

 魔法使いがいなくてもこれならそれなりに魔物の相手ができるのだ。

 多分彼らもそのようにやっていくのだと思う。


 それはさておき、ダンジョン探索は順調だった。


「この道は地図によるとこっちだな。それじゃあ行くか」

「待てよ。その前に現在位置をマッピングしておかないと。さもないと道に迷ったら場所が分からなくなるぜ」


 そんな風に訓練生たちは一致団結して協力しながら進んで行っている。

 ここへ来る前に事前に座学の講義を受けているはずだから、それに沿ってやっている。

 うん、基本に忠実でとてもいいと思うぞ。


 これなら俺たちの出番はないかなと思っていると。


「ホルストさん前方に魔物です」


 ヴィクトリアが警戒用に放っていた土の精霊が魔物を発見した。

 俺は急いで訓練生たちへ警告する。


「お前ら、魔物が現れたようだぞ!戦闘態勢に入れ!」

「「「「「はい」」」」」


 こうして俺の指示で訓練生たちは一斉に戦闘態勢に入るのだった。

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