第309話~新人どもよ!覚悟しろ!~
「それでは旦那様。私たちは魔法の訓練の方へ行きますので」
「ああ、頑張って来いよ」
訓練所の教官たちと訓練の打ち合わせをした後、俺とリネットは前衛職用の訓練場へ向かった。
「パパ、また後でね」
ホルスターと銀はエリカたちの方へついて行った。
ホルスターはまだ小さいからお母さんの方がよかったのだろうと思う。
男親としてはちょっと悲しいが、子供ってそういうものだから仕方ない。
俺も小さい頃はどちらかというと母親の方にくっついていたしね。
まあ今となっては父親とも母親ともぎくしゃくとした関係になってしまったのでどうでもいいけどね。
それはともかく。
「リネット行くぞ!」
「うん」
俺とリネットは気合を入れ直すと、前衛職の訓練場へと入って行く。
★★★
「おい、お前ら喜べ!今日はお前らのために特別講師の先生が来てくださっている。冒険者ギルド最強の戦力として名高い冒険者チーム『竜を超える者』のSランク冒険者、ホルスト先生とリネット先生だ」
今日の訓練は教官のそんな挨拶から始まった。
折角紹介してくれたので、俺とリネットはそれに合わせて挨拶をする。
「今紹介していただいたホルストだ。今日はよろしく頼む」
「同じくリネットだ。今日はよろしくね」
「よろしくお願いします!!!」
俺たちの挨拶に対して訓練生の返事は大きく、やる気の高さを感じられるのだった。
さて、挨拶も終わったところで訓練の開始だ。
まずは恒例のアレから始めることにする。
「お前ら、かかってこい」
俺は一人木剣を持つと、生徒たちの前に立ちそう宣言する
俺のその宣言に訓練生たちが驚いた顔になる。
「ホルスト教官、お一人で我ら全員と戦うおつもりですか?」
「そうだが……何か問題でも」
「いや、しかしさすがに」
「いいから、四の五の言わずにかかって来い!それとも俺が怖いのか?」
「舐めるな!」
バカにされたと思ったのだろう。
俺のその挑発とともに数人ほどが俺に襲い掛かってくる。
しかし。
「ふん、こんなものか」
数秒もたずに全員が地に倒れ伏してしまった。
「さあ、どんどんかかって来い!」
俺はさらに挑発する。
「うおおおおお」
「うりゃあああ」
仲間があっさりとやられたのを見てやる気に火がついたのか、訓練生たちが次々に俺に襲い掛かってくる。
それを見てうれしくなった俺はニヤリと笑いながら剣を握り直す。
「いいぞ、いいぞ。その意気込みだ!」
そして、そのまま情け容赦なく訓練生たちを地面にたたき伏せて行くのだった。
★★★
五分後。
「ふう、こんなものかな」
俺は訓練生たちを全員地面にたたき伏せていた。
いつもより時間がかかったような気もするが、今回の参加人数は今までで最大の300人ほどいたらしいのでこんなものだろうとも思う。
もっと素早く動くこともできるが、それをやると訓練にならないしね。
というのも、この訓練では相手の隙をついてそこを攻撃するようにしているからだ。
そうやって自分が実は隙だらけなのを自覚させ、そこを改善させるのが目的なのだ。
だから、力任せにたたき伏せては訓練の意味がないので、こうしているのだった。
さて、全員が倒れたのを見て俺は声をかける。
「お前ら、まだまだ隙だらけだな。そんなことでは冒険者としてやっていけないぞ」
俺の言葉を聞いて訓練生たちはおのれの無力さを思い知ったのかうなだれている。
そんな訓練生たちに俺は諭すように言う。
「だが安心しろ。ここの教官たちは俺が鍛え上げた優秀な教官たちだ。彼らについてしっかりやれば、ここを出るころにはいっぱしの冒険者になれるはずだ。だからしっかりやれ!とりえず……」
そこまで言うと俺は剣を持ち立ち上がり、もう一度剣を構える。
「今日は個別指導してお前らの悪いところを指摘してやる。さあ、やる気のあるやつからかかって来い!」
そう言いつつ誰かが挑んで来るのを待つ。
すると。
「相手してもらっていいですか?」
「私もお願いします」
戦士と槍遣いの女の子の女の子の二人組が最初に名乗り出てきた。
俺はやる気のあるやつは大歓迎だ。
男とか女とかそんなのは関係なくだ。
この世界やる気のあるやつの方が上へ行けるのだ。
だから歓迎してやることにした。
「ほう、いいぞ。お前らやる気あるな。名前を聞いておこうか」
「マーガレットです」
「ベラです」
「マーガレットとベラか。良い名前だ。今回のメンバーの中ではお前らが一番やる気があるようだな。いいぞ!揉んでダメな所を徹底的に指摘してやるから覚悟しろ!」
「「はい、お願いします」」
ということで、俺の個別指導はマーガレットとベラという二人の子から始めることになった。
★★★
3分後。
「はあ、はあ」
俺が相手をしたマーガレットとベラが地面に倒れて洗い呼吸で息をしていた。
「全力でかかって来い!」
そう言って向かわせてきたので、二人とも息切れしてこの有様というわけである。
ここから1分ほど待って落ち着いてから指導を開始する。
「マーガレットはそうだな。ちょっと慎重すぎるかな。魔物のなかにはがむしゃらに襲い掛かってくるやつもいるから反撃に出るタイミングをうまく考えないと、魔物を倒すことはできないぞ」
「はい」
「それと剣を振る時に左手の扱いがおろそかになっている。もうちょっと素振りの練習をしてきちんと型を固めないと、敵に隙をつかれてしまうぞ。だから訓練ではその辺を中心にやると強くなれると思うぞ。だからそこら辺を頑張れ!」
「はい、頑張ります!」
「それと……」
俺はもう一人のベラの方を見る。
「ベラの方はだな。槍を突き入れようと躍起になり過ぎている感じがあるな。マーガレットと逆で攻撃に偏り過ぎている。ここには槍の師範もいるから、その辺を重点的に指導してもらえ」
「はい、そのようにします」
「よし、お前らへの指導は以上だ。さあ、次は……」
と思い訓練生たちの方を見ると、すでに俺に指導してほしくて訓練生たちが並び始めていた。
ようやく訓練場に良い意味での緊張感が出てきたようで、俺はうれしくなってきた。
ただこうなると俺一人では手が足りないのでリネットを呼ぶ。
「よし、お前ら!俺でもリネットでも好きな方の列に並べ!二人でお前たちのダメな点を指導してやる」
「うおおおお」
俺がそう言うと訓練生たちからよい返事が帰って来た。
「では、次は俺たちをお願いします!」
早速列の先頭に並んでいた連中がやってくる。
「よし!その意気だ!」
もちろん俺やリネットも喜んでそいつらのことを鍛えてやるのだった。
こんな感じで前衛職の会場での訓練は進んで行くのだった。
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