今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第308話~大規模訓練場へ稽古をつけに行く~
第308話~大規模訓練場へ稽古をつけに行く~
「それではお母さんとおばあさん。半月分のお小遣いです」
「あら、ホルスト君ありがとう」
「これでこの前から行きたかったフルーツパフェがおいしいと評判のお店に行けるわ~」
「ははは、どうぞ行って楽しんできてください」
今日は月二回のヴィクトリアのお母さんとおばあさんへのお小遣いの支給日だ。
二人には一回につき銀貨10枚ずつをお小遣いとして渡している。
銀貨10枚といえば普通の家の一か月分の家賃くらいの金額なのだが、二人は毎回これをきれいさっぱり使い切っている。
二人には貯金しておこうとか、そういう概念はないらしかった。
いや、無い事はないと思うが、少なくとも人間の世界でそれを発揮しようという気は無いように思われる。
何せ二人は神様で、そのうちに天界へと帰るつもりなので、ここで遊べるだけ遊んでおこうという腹積もりなのだと思う。
ここのお金なんて天界へ持って帰っても仕方がないしね。
まあ二人には色々お世話になっているからこの位のお小遣いをあげるくらいは構わないと俺は思っている。
「それじゃあ、出かけて来るわね~」
俺にお小遣いをもらった二人は、早速着替えるとどこかに出掛けてしまった。
パフェがどうこう言っていたから、自分たちで言っていたようにパフェでも食べに行ったのだと思う。
ついでにランチでも食べてのんびりと買い物でもしてくるのだろうと想像できる。
二人にはここにいる間はできるだけのんびりと過ごしてほしいものである。
★★★
「さて、それでは出かけるぞ」
お母さんたちが出かけて少ししてから俺たちも出かけた。
「ほら、ホルスターに銀。見ていてやるから、パトリックの手綱を引いてみろ」
「はい、ホルスト様」
「うん、パパ」
ホルスターと銀にパトリックを操らせてやりながら目的地へ向かう。
二人にはここ最近随分とパトリックの世話をさせてきた。
二人が一生懸命パトリックの世話をする様子は子供らしくてとてもかわいらしかった。
最初はおっかなびっくりという感じでやっていたのだが、最近はずいぶん慣れてきたようで手際もだいぶ良くなってきたように思う。
それを見てそろそろ頃合いかなと思った俺は、二人にパトリックの操縦を任せてみることにした。
さすがに単独での騎乗はまだ早いので、とりあえず馬車の御者台に座らせて手綱を引かせてみることにする。
「ホルスター、手綱を引くときはあまり急に引いたりするな。パトリックがびっくりするだろ?パトリックは賢いんだから、人間はパトリックを補助してやるような感じでやればいいんだよ」
「うん、わかったよ、パパ」
「銀は手綱を引く手に力が入り過ぎだな?初めて手綱を引くから緊張しているんだろうが、あまり力を入れすぎると、パトリックまで緊張しちゃうからな。もっと肩の力を抜いて、リラックスしてやりな」
「はい、ホルスト様。頑張ります」
俺の指導を受けながら二人がパトリックを操る。
最初から結構手厳しいことを言っているようにも見えるかもしれないが、こういうのは最初が肝心だ。
ここで厳しめに指導してやっておいた方が、後々二人のためになる。
そう考えて心を鬼にして二人に指導をしている。
二人もそんな俺の思いに気が付いてくれているのか、俺の言う通りに一生懸命にやろうとしている。
本当に二人とも素直だと思う。
その甲斐があって最初は中々いうことを聞いていなかったパトリックも徐々に二人の言うことを聞くようになってきている。
この分だと数か月もしたら二人をパトリックの背中に乗せてやってもいいかな。
俺は二人を見ながらそう思うのだった。
★★★
そうこうしているうちに目的地に着いた。
「お、ホルスト君が言っていた通りに確かに大規模訓練場の建物大きくなっているね」
目的地に着くなり増築された建物を見ながらリネットがそんなことを言う。
そう俺たちが今日来たのはギルドがやっている大規模訓練場だ。
俺たちは今日ここで特別講師として指導にあたるつもりできたのだった。
ノースフォートレスの町にいる時は、時たまこうやってボランティアで指導しに来ているので今回もその一環だった。
ということで早速受付へ行く。
「ホルスト様。ようこそ来てくださいました」
受付へ行くと受付の職員さんが頭を下げて歓迎してくれる。
というのも俺たちの指導は好評だからだ。
まあ、Sランク冒険者に指導してもらえるなんて金額に換算すると莫大なものになる。それが無料なのだから歓迎されるのも普通の反応だと思う。
「こっちへどうぞ」
俺たちの出番までまだ時間があるのでそれまで休憩室でのんびりする。
「飲み物とお菓子をお持ちしましたよ」
休憩室でのんびり雑談していると、職員さんがお茶とお菓子を出して歓迎してくれる。
「いただきま~す」
お菓子を見るなりヴィクトリアがすぐさま手を出す。
出してくれたお菓子はクッキーだった。
チョコレートのかかったとても甘いやつだ。
このクッキーはノースフォートレスの町でも高級店として知られている店の品物だ。
俺たちがここへ始動に来る時にはいつもこのクッキーを出してくれている。
「おいしいです~」
食ったヴィクトリアも満足したのか、顔に満面の笑みを浮かべている。
「うん、ここの店のクッキーはいつ食べてもおいしいね」
「ここの味は上品な感じがしていいですよね」
ヴィクトリアだけでなくリネットとエリカも満足したのか、二人ともニコニコ顔だ。
「銀姉ちゃん、このクッキーおいしいね」
「そうだね。あ!ホルスターちゃん、クッキーの食べかすがお口についていますよ。銀姉ちゃんが取ってあげるね」
ホルスターと銀も先ほどパトリックを操って体力を消費したせいか、良い勢いで食べている。
それを見ていると、二人にはもっと食べてもらって大きくなって欲しいなあ、なんて思ったりする。
ホルスターは俺の子だから背は高くなると思う。その上で顔もエリカに似て美形だからな。
女の子が放っておかない良い男になる。そんな気がする。
銀は顔はかわいいのだが、背は高くならないような気がする。
母親である白狐もそんなに大きくないからな。
多分その点は期待できないと思う。
まあ背が高い低いは親の影響が強いからこればかりは運命を受け入れるしかない。
「ホルスト様方、そろそろ時間ですよ」
俺がそんなことを考えながらのんびりとしているうちに時間が来たようだ。
「さあ、行くぞ!」
「「「はい」」」
俺は嫁たちを引き連れていざ訓練に向かうのだった。
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