第299話~中古品オークション ヴィクトリア編~

 ヴィクトリアです。


 今オークション会場に来ています。

 とは言っても何のオークションに参加するか決めていないので、会場をうろうろしています。


 というのも、ワタクシの目的はオークションに参加して何かを競り落とすことなのでとりあえず適当なオークションに参加できればいいやと思っているからです。

 そうやってワタクシが会場を歩いていて目に着いたのは。


「ほほう。アクセサリーのオークションですか」


 アクセサリーのオークション会場でした。

 グルっと会場を一周して、出品予定の商品を見て回ります。


「お、このペンダント良いですね」


 そんな中ワタクシは一つのペンダントに目をつけます。

 銀?の鎖にちっちゃなルビーがくっついているペンダントでした。


「結構かわいらしいペンダントですね。よし!これを競り落としましょう」


 これを競り落とそうと決めたワタクシはこのオークションに参加することに決めました。

 ホルストさんから許されている予算は金貨2枚までです。

 これで買えるとよいのですが、どうなるのでしょうか。


 そんな感じでドキドキしながらワタクシはオークション会場へ入りました。


★★★


「これよりオークションを始めます」


 進行役の男性のそんな言葉でオークションは始まりました。


「まず最初はこちらの真珠のイヤリングからです。銀貨30枚からのスタートです」

「銀貨35枚だ」

「こっちは銀貨38枚だ」


 オークションが始まるとそんな風に次々に値段が上がっていきます。


 これを見ているだけで楽しいですね。

 特にワタクシなど元々何か欲しいという主体的な目的があって来たわけではなく、オークションを楽しみたいという曖昧な目的で来ているので、これだけでも十分楽しめるのですよ。


「さて、それでは次の品物のオークションを始めます。次の品はミスリル銀製のルビーのネックレスです」


 そうこうしているうちにワタクシが狙っていた品物が出てきました。


 というか、ミスリル銀?

 普通の銀の鎖だと思ったらミスリル製だったのですか。

 うーん、これは少し高くつくかもしれませんね。


「それではオークションスタートです。銀貨70枚からどうぞ」


 ワタクシがそんなことを考えているうちにオークションが始まりました。

 うーん、銀貨70枚からのスタートですか。

 やはりミスリル製だと少しお高いんですかね。


「銀貨75枚」

「銀貨80枚」


 値段もいいペースで上がって行っていますし。

 まあ、ワタクシにも金貨2枚分、銀貨にして200枚分の予算があるので大丈夫でしょう。

 これを使い切るつもりで行きます。


「銀貨120枚」


 ワタクシはいきなりその値段をつけました。

 前の人からいきなり銀貨40枚アップです。


 欲しい物があったら値段は一気に釣り上げた方がいい。そうすれば相手が戦意喪失して競ってこなくなる。

 昔読んだ漫画にそんなことが書いてあった気がするので試してみました。

 確かに一気に値段が上がったことで会場の空気が一瞬だけ静まりかえりました。


 勝ちましたね!

 ワタクシがそう思ったのも束の間。


「銀貨150枚!」


 ワタクシに競り掛けてくる商人がいました。

 よく肥えた貪欲そうな顔の人でした。

 その顔を見たワタクシはこの人にだけは負けたくないなって思いました。

 あのペンダントがこの人の物になるのが妙に嫌だったからです。


 ということで、ワタクシも競り掛けます。


「銀貨155枚!」


 銀貨5枚分値段を釣り上げます。しかし。


「銀貨160枚!」


 相手もどうしても欲しいのか値段をあげてきます。

 ここからワタクシと太った商人の熾烈なオークションバトルが始まります。


「銀貨165枚!」

「銀貨170枚!」

「銀貨180枚!」


 と、どんどん値段が上がって行きました。そして……。


「それでは、こちらのペンダントは銀貨350枚でそちらの女性の方が落札しました」


 気が付いたら銀貨350枚でペンダントを落札していました。

 落札したワタクシはふふんと誇らしげに鼻を鳴らしますが、すぐにあることに気が付きます。


 え?銀貨350枚?確か予算は銀貨200枚までだったはず。

 そのことに思い至ったワタクシの全身から大量の汗が流れ出ます。


 銀貨350枚。予算を銀貨150枚もオーバーしているじゃないですか。

 まずい!マズイ!MAZUI!

 絶対にまずい!

 これ絶対怒られます。


 まあ、ホルストさんあたりはワタクシに甘いので、泣きつけば許してくれるかもしれませんが、エリカさんはそうはいきません。

 エリカさんは無駄遣いには厳しいのです。

 銀貨数枚とかいうのならまだしも、銀貨150枚もオーバーしたら絶対怒られると思います。


 オークションで落札してしまった品物はキャンセルできませんし……本当どうしましょうか。

 どうやらあの太った商人にあおられて熱くなりすぎてしまったようです。

 ああ、あの時ワタクシは何であそこまで熱くなってしまったのでしょうか。


 この後のことを考えると、ワタクシは頭を抱えるのでした。


★★★


 俺とリネットは武器・防具類のオークション会場へ出かけた。


「うーん。中々いい品物が見当たらないね」

「そうだな。いい品がないなあ」


 ただ二人で会場中を見て回るもののこれはという品は見つからなかった。

 そんな中。


「お、これは」


 1本のショートソードを見つけた。


「うん?何か気に入ったの見つけたの?」

「このショートソードいいかなと思って」

「どれどれ」


 リネットが俺からショートソードを受け取り品物を改めてみる。

 そして、がっかりした顔になる。


「これ、全然ダメな品じゃない?柄の所にはめ込まれている赤い石はきれいだけど、あまり手入れもされていないから切れ味もよくなさそうだし」

「だからいいんじゃないか。ホルスターの練習用に」

「え?ホルスター君の練習に使うつもりなの?」


 俺がこの剣をホルスターの剣の練習に使うつもりだと聞いて、リネットが驚いた顔になる。


「でも、ホルスター君ってまだ2歳じゃない。剣の練習にはまだ早いんじゃないの?」

「そうか?魔法の練習だってもうしているし、剣の練習を始めても早くはないと思うぞ」


 リネットの反論に対して俺は自論を展開する。


「俺の計画としては、まず木剣で基本を教えて、その後に本物の剣で練習させるようにしたい、と思っている。ただ子供に良い剣を持たせると危ないだろ?だけど、このなまくらな剣なら練習にぴったりだと思う」

「まあ、確かにこのぼろい剣。練習にはもってこいかもね。わかった。他にめぼしい物も見当たらないし、これのオークションに参加して雰囲気だけでも楽しもうか」


 ということで、リネットも賛成してくれたので俺たちはこの剣を買うためにオークションに参加することにしたのだった。


 ただ、この時俺はこの剣に結構な価値があることを知らなかった。

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