今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
閑話休題42~その頃の妹 やっとノースフォートレスの町へ着く~
閑話休題42~その頃の妹 やっとノースフォートレスの町へ着く~
私レイラとフレデリカの二人はようやくノースフォートレスの町へ着いた。
王都からここまでの旅は結構つらかったと思う。
何せ食うにも困るような貧乏旅。
毎日お金の節約のために最小限の食事しかせずに、いつも空腹だった。
王都からここまで10日以上その状態で歩き続けたのだった。
本当、今思い出してもよくそんな真似が自分にできたものだと思う。
しかし、それもここまでだ。
この町に着きさえすれば希望があるはず。
講習中は寮費はタダだし、食事も安く食べられるという話だ。
「さあ、フレデリカ、これから頑張るよ」
「そうだね、頑張ろう」
そうやって二人で誓うと、手を取り合って町の中へと入って行くのだった。
★★★
「ああ、王都から講習会に参加されるレイラさんとフレデリカさんですね。……確かに書類を確認しました。それではこちらの入寮の書類に名前をお書きください」
「「はい」」
私たちは町へ入ると真っすぐに冒険者ギルドへ向かった。
そして、受付へ行き王都でもらってきた書類を確認すると、入寮申込書を書いてくれと言われたので今書いているというわけだ。
「はい、申込書はこれで大丈夫です。いつでも入寮してもらって構いませんので、大規模訓練場の方へ行ってください。それと訓練が始まるのは10日後ですので、それまではのんびりしていただいて大丈夫ですよ」
「「ありがとうございます」」
これで手続きはすべて終わりだ。
早速寮へ向かうことにする。
と、ここで。
「ねえ、レイラ。掲示板の所へお菓子が置いてあるよ」
「え?本当?」
フレデリカに言われて掲示板の所を見ると確かにお菓子が置かれていた。
しかも側に貼ってある紙には。
「『エルフの国のお菓子です。ご自由にどうぞ。一人一個までです』……って、これ食べていいの?」
そんなことが書かれていた。どうやらこのお菓子は食べてもよいらしかった。
「「いただきます」」
もちろん私とフレデリカはすぐさまお菓子を口に入れた。
誰が置いたのかは知らないが、くれるというのならもらう。何せ私たちは。
「まだ、昼ご飯食べてないから超ラッキーだね」
「これで、昼飯食べなくても夜までもつかな?」
このようにお腹を空かせていたのだから、タダ菓子はこの上なくありがたかった。
それを食べながら私たちはうきうきした気分で寮へ向かった。
★★★
「以上で説明は終わりだ。質問はあるか」
「食堂とかあると聞いているのですが、それはどうなっているのですか?」
「一階に大食堂がある。ここの講習生には補助が出ているので、安いメニューなら銅貨3枚で食べられるぞ。量も結構あるので、お前たちならそれで満腹になるんじゃないかな」
「銅貨3枚!それは安いですね」
「ああ。ただ安いがタダというわけではない。だからみんな訓練が休みの日なんかにギルドで簡単な仕事をして生活費を稼いでいるな」
「そうなんですね」
「ああ。それで他に質問は?」
「ないです」
「それでは部屋へ案内しよう」
寮へ着いた私たちは寮監の人に寮の規則について聞いた後、部屋へ案内してもらうことになった。
「ここだ」
「「うわあ、結構いい部屋ですね」」
私たちが案内された部屋は4人部屋で、内装もきれいでよい部屋だった。
少なくとも私たちが王都で住んでいたボロアパートよりはましな感じであった。
「お前たちのベッドはこことそこだ。好きな方を使うといい。後、残りの二つのベッドは後から人が入ってくると思うから、来たら仲よくしろよ。それじゃあな」
「「ありがとうございました」」
一通り案内が終わると、寮監さんはその場を去ろうとした。
だが、何かを思い出したのか再び私たちの方を向きこんなことを言った。
「そうそう、一つ言い忘れていたんだがな。明後日パーティーがあるんだけどお前たちも来るか?」
「パーティーですか?」
「そうだ。実はここの訓練所の創設に多大な貢献をしてくれた冒険者チームがあるんだが、そこのメンバーが今度Sランクに昇進することになってな。そのお祝いのパーティーがあるんだ」
「そうなんですか」
「パーティーは華やかにやるらしくて、参加費は無料で飲み放題食べ放題で、くじ引き大会とかもやるそうだぞ」
「つまりタダでお腹いっぱいになるということですか?」
「そうだ。で、参加するか?」
「「もちろんです!!」」
当然私たちは即答した。
タダで飲み食いできるという機会を私たちが逃すわけがなかった。
「そうか。なら一階の受付で申し込んでおいてくれ」
最後にそう言い残すと、寮監さんは去って行った。
残された私たちはワクワクが止まらない。
「パーティーか。いいねえ。お腹いっぱい食べようね」
「そのためにも明日はご飯少なめにして、明後日に備えよう」
と、そんな風にしてパーティーに向けて備えるのだった。
★★★
「うわー、レイラ凄い人の数だね」
フレデリカが会場に集まった人の多さに驚いていた。
まあ、今日はタダでご飯が食べられるとあって大勢の冒険者たちが集まって来ているから人が多いのもしょうがなかった。
もっとも私たちもそのうちの一人であるので、人のことをとやかく言えないけどね。
それはともかく、今会場ではSランク昇進式が開かれている。
とは言っても私たちからは良く様子が見えなかった。
というのも新参者の私たちは広い会場の隅っこの方だったから式の様子が分かる場所ではないからだ。
別に構わないけどね。見たところで腹が膨れるわけでもないしね。
それよりも早くパーティー始まらないかな。
そう思っていると。
「おめでとうございます」
突然会場中が祝福の声と拍手の音に包まれる。
どうやら式が終わったので、みんなで祝福しているようだった。
「「おめでとうございます」」
一応私たちも周囲に合わせて拍手や祝福の言葉を述べておいた。
「それでは、これから食事会の開始となります」
それらの喧騒が収まると、パーティー開始のアナウンスが流れる。
「行くよ、フレデリカ」
「うん」
私たちは会場に突撃した。
★★★
「ああ、幸せ!」
皿の上に置かれたチキンステーキを食べながら私は思わずそう呟いた。
ちなみにこれで3枚目だ。
肉何てしばらくまともに食べていなかったから、ここぞという時に食っておかなければと思った私は、腹いっぱい食べることにしたのだった。
「うん、オーク肉最高!」
一方のフレデリカは私の横でオーク肉のステーキを食べていた。
とてもいい笑顔で食べているのでこれもおいしいのだと思う。
「味見したいから、それ一口ちょうだい」
「じゃあ、そっちも一口ちょうだい」
フレデリカも私のチキンステーキをおいしそうだと思ったのか、お互いに一口ずつ交換してみる。
「「うん、おいしい」」
お互いに気に入ったようなので、私はオーク肉をフレデリカはチキンステーキを取りに行く。
と、こんな感じで私たちは幸せな時間を過ごすのだった。
★★★
ただ、幸せな時間はここまでだった。
「あの人、レイラのお兄ちゃんじゃないの?」
フレデリカが突然そんなことを言い始めたからだ。
フレデリカの言う方を見ると、確かにうちの兄貴がいた。
どうやら横にいる女二人と一緒にみんなから祝福の言葉を受けているようだった。
「……って言うか、あの二人兄貴の側室の女じゃない。しかも会話を聞いていると、今日Sランクに昇進したのってあの二人っぽいし」
何ということだ!このパーティーが兄貴の嫁たちのためのものだったなんて!
しかもさらに漏れ聞こえてくる会話によると、このパーティーの費用はかなりの部分兄貴が負担しているらしかった。
まあ、兄貴は嫁ラブみたいだからこのパーティーの費用なんかなんとも思っていなさそうだけど。
それはともかく、この事態に気が付いた私は一気に気持ちが暗くなった。
だってそうでしょう?
この私がその日のご飯にも困る中、兄貴がこんなパーティーに大金をドバっと使っているだなんて。
悔しくてたまらない!
今食べている食事だって、兄貴はそんなこと思ってないだろうが、まるで兄貴に恵んでもらっているような気がしてとても惨めだ。
「ねえねえ、お兄ちゃんの奥さんのお祝いなんでしょう?お祝い言いに行かなくていいの?」
そうフレデリカに指摘されても。
「行きたくない。兄貴に私がここにいるのがばれたら怒られるから。下手すると追い出されるかもしれないし」
「そんなことないって。レイラとお兄ちゃんの仲が良くないことは知っているけど、さすがにお祝いに来てくれた妹を追い出したりしないと思うよ。それどころか、気分がいい今ならお小遣いくらいくれるかもよ」
「ううん。それでも行かない」
と言って、決して行こうとしなかった。
その後結局私はなんとなく最低な気分のままでパーティーを過ごしたのだった。
え?すぐに帰ったりしなかったのかって?
当たり前じゃない。折角のタダ飯の機会を逃してなるものですか。
今までの冒険者生活で、利用できるものは利用しろってことをちゃんと学んできたからね。
それが嫌いな兄貴であっても、ちゃんと利用するわよ。
だから、料理の残りをタッパーに詰めて持ち帰ったし、キッチリとくじ引きまで引いて帰ったわよ。
ハズレのお菓子しかもらえなかったけど。
とにかく、こんな感じで私はパーティーでタダ飯を食べたのでした。
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