今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第292話~ノースフォートレスの町への帰還~
第292話~ノースフォートレスの町への帰還~
ダークエルフ王の王子様とエルフ王の王女様の婚約が決まってから数日後。
俺たちはファウンテンオブエルフを出てノースフォートレスへ帰ることにした。
「旦那様、準備ができましたよ」
俺が庭でパトリックの方の準備をしていると、エリカが声をかけてきた。
「もうすぐパトリックの準備も終わるから、ほんの少しだけ待ってくれ」
俺はそう返事して玄関で待つように伝える。
しばらくしてパトリックの準備が終わったので玄関へ行く。
すると。
「ホルストさん、待ちくたびれました」
俺の姿を見たヴィクトリアが近寄ってくる。
待ちくたびれたようで、やっと出発できそうなのでうれしそうだ。
玄関を見ると嫁たちやヴィクトリアのお母さんたちが勢ぞろいしていた。
それに。
「この度はよろしくお願いします」
嫁たちの他にネイアさんがいた。
ネイアさんはこの度ヒッグスタウンのヒッグス商会の本部へ異動になったので、俺たちが連れて行ってあげることになったのだった。
「栄転、おめでとうございます」
今回は栄転ということで、昨日ここの従業員の人たちが送別会を開いてくれたそうだ。
「ネイア姉ちゃん、行っちゃうのお?寂しいよお」
と、いとこのマロンさんには泣きつかれたそうだが、それ以外は賑やかだったそうだ。
さて、皆も準備できたようだし、出発することにする。
★★★
「それではお気をつけてお帰りください」
「ネイア姉ちゃん、お手紙書くから返事ちょうだいね」
ハリスンさんやマロンさん、その他商館中の人たちに見送られて商館を出る。
商館を出た後は城門へまっすぐに行き、さらに街道まで出る。
そして一時間ほど街道を進んだところで。
「もうそろそろいいかな?『空間操作』」
転移魔法を使い一気に移動する。
それを見て、ネイアさんが驚く。
「これが転移魔法。……まさかホルスト様がこんな強力な魔法を使えるって、とてもすごいですね」
一応事前に説明をしておいたのだが、実際に転移魔法を使う所を見て驚愕したようだった。
何だろうか。
俺も男なので、ネイアさんのような美人さんに褒められると、つい嬉しくなってニヤニヤしてしまいそうになるのだが、今は嫁たちが横にいる。
嫁たちにバレると絶対に後で何か言われる。
残念だが、ここは我慢の時だ。俺は思いを内に閉じ込める。
それはともかく、転移魔法を抜けた先は。
「あそこがヒッグスタウンだよ」
ヒッグスタウンの目の前の街道だった。
ここまで来たら、目的地は目の前だ。
「さあ、行こうか」
俺たちは馬車を走らせて町の中へ入って行く。
★★★
「パパ、ママ、お帰りなさい」
「お帰りなさいませ」
エリカの実家に行くと、そうやってホルスターと銀が出迎えに出て来てくれた。
「ああ、元気にしていたか」
俺たちは二人の頭を撫でてやると、お土産のお菓子を渡す。
「お父さんたちはおじいちゃんたちに挨拶してくるから、それでも食べながら庭で遊んでいなさい」
「「は~い」」
お菓子をもらった二人は庭にある木の影に行くと、
「ホルストちゃん、あ~んして。銀姉ちゃんが食べさせてあげる」
「うん、あ~ん」
二人でそうやって仲良くお菓子を食べ始めた。
仲が良くていいことだと思う。
二人が遊んでいるのを見届けた俺たちはエリカのお父さんとお母さんの所へ行く。
「やあ、よく無事に帰って来てくれたね」
「本当、エリカたちの元気な顔が見られてうれしいわ」
エリカの御両親も俺たちの帰還を喜んでくれて、歓迎してくれるのだった。
一通り挨拶が終わったところで本題に入る。
まずはネイアさんがお父さんと今後について話し合う。
「君がネイアさんだね。娘から話は聞いているよ。何でもとても優秀だとか。あまり人を褒めたりしない娘がそう言うのだから、私としても期待しているよ」
「お褒めいただきありがとうございます」
「それで、これからのことなんだけどね」
そう言いながら、お父さんは書類の束をネイアさんに見せる。
それは研修用の資料だった。
「ハリスンに聞いた話によると、君は受付や倉庫の在庫管理の仕事をしていたそうだね。ただ君の希望は世界中の支店に勤務することだと聞いている。となると、商会の一通りの仕事は覚えてもらいたいと考えている。そこでしばらくの間は主に内勤の仕事をしてもらって、書類作成や会計の仕事なんかをしてもらおうと思っている。それで構わないかな」
「はい、お願いします」
お父さんに今後の仕事の内容を聞かされたネイアさんはペコリと頭を下げた。
「それと、君の住むところなんだけど、希望通り女子寮でいいのかね?一応そんなには広くないけど一人部屋を空けて掃除させておいたから、今日からでも使えるよ。どうするかね」
「それでは今日から使わせてもらっても大丈夫ですか」
「ああ、構わないよ。後で案内しよう」
お父さんとネイアさんの話し合いはこうして終わった。
これで、ネイアさんの身の振り方も決まったようで俺たちも一安心だった。
その後は、お父さんたちにお土産を渡したりしながら雑談したりして楽しんだ。
★★★
「おじい様、おばあ様、さようなら。また来るね」
「ああ、ホルスター。また来るんだよ」
「おばあちゃん、ホルスターちゃんにまた会える日を楽しみにしているから、元気にやるのよ」
エリカの実家での用事が終わったので、俺たちはエリカの実家を出た。
本当なら、このままノースフォートレスへ帰るところだが、その前に寄る所がある。
「ここだな」
俺はパトリックをヒッグス商会の女子寮の前に停める。
ここへ来たのは、もちろんネイアさんを送っていくためだ。
「ヴィクトリア」
「ラジャーです」
俺の指示でヴィクトリアが収納リングからネイアさんの荷物を出す。
「リネット」
「うん」
それを俺とリネット、ネイアさんの3人で運ぶ。
一人暮らしとはいえ、ネイアさんも女性。
出発前に結構整理したらしいが、それでも服とか小物類とか結構荷物は多かったので、俺とリネットも手伝うことにしたのだ。
3人でそのまま寮の管理人室へ行き、管理人さんに挨拶をする。
「すみません。今日からここでお世話になるネイアです。よろしくお願いします」
「ネイアさん?ああ、話は聞いていますよ。部屋は3階の302号室ですよ」
挨拶が終わると、管理人さんに案内されて部屋に行き、そこへ荷物を置くと、再び寮の外へ出る。
「皆様、ここまで送っていただきありがとうございました」
「ああ、頑張るんだよ」
最後にそう挨拶してネイアさんと別れる。
そして、そのままノースフォートレスの町へ向かう。
★★★
「久しぶりの我が家だなあ」
家に入るなり俺はそう呟き、ソファーに横になる。
何か月か家を留守にしていた割には家はきれいだった。
まあ、ヒッグス家のノースフォートレスの屋敷の人たちが定期的に清掃してくれていたので、そのおかげだと思う。
俺以外の嫁やホルスターたちも自分の部屋へ行き、自分の荷物を置いてきた後、全員リビングへ戻ってきてのんびりしている。
と、ここまでは良かったのだが、ここで問題が発生する。
「それで、私たちの部屋はどうするのかしら」
ヴィクトリアのお母さんとおばあさんのことだ。
うちの家には二人の部屋はまだない。
空き部屋はあるがベッドとかは用意していない。
ということで、俺は二人に聞いてみる。
「明日ベッド買ってきますから、今日はリビングに布団を敷いて寝てもらっても大丈夫ですか?それとも、エリカのお父さんからヒッグス家の屋敷で生活してもらっても構わないという許可はもらっていますので、そっちの方がいいですか」
「まあ、あまり知らない人と暮らすのも嫌だから、ここでいいわ」
ということで話はまとまったのだった。
さて、これでやることが大分増えた。
まずはお母さんたちのベッドを買わなきゃだし、ギルドへも挨拶へ行かなければならない。
冒険者仲間の奴らにも会って、お土産を渡したり、飲みに行ったりもしたい。
それに、ギルドの訓練所へもしばらく顔を出していないから顔を出しておきたいし、商業ギルドへ旅の道中手に入れた物を売りに行きたい。
と、考えれば考えるほどやることは山積みだ。
「さあ、頑張るぞ!」
明日から大変忙しくなるのを感じながらも、俺は将来のことを考えると、ワクワクが止まらないのだった。
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