第289話~決戦決着!~
ヨルムンガンドを拘束することに成功したので、早速攻撃を開始する。
「初手から全力で行くぞ!」
「「「はい」」」
この前ファウンテンオブエルフの地下遺跡で魔人と戦った時、様子見ということで軽い魔法で攻撃したところ、猛烈な反撃を食らいあわやということがあった。
ということで、今回は初っ端から本気で行くことにする。
「『極大化 魔法合成 『天火』『天爆』『天罰』の三魔法合成神々の怒り』」
俺は今使える最強の攻撃魔法である三魔法合成を使用する。
「『極大化 大爆破』」
「『極大化 聖光』」
「「『極大化 大爆破』と『極大化 聖光』の合体魔法『極大化 聖爆破』」」
エリカとヴィクトリアも自分たちの最強魔法をぶつけてくる。
さらに。
「『戦士の記憶』よ!アタシに力を貸して!『真空断』」
リネットも『戦士の記憶』で自分にバフをかけてから必殺技を放つ。
「行けえええ!」
全員の最強攻撃が一斉にヨルムンガンドに襲い掛かる。
ドッゴオオオオオン!!!
3つの攻撃が同時にヨルムンガンドに命中し、大爆発が発生して、周囲を白煙が覆い一時的に周囲の状況が確認できなくなる。
「やったか!」
手ごたえを感じた俺は白煙が晴れるのを今か今かと待ちわびる。
しかし、白煙が晴れた時に現れたのは。
「ダメだったか。頭部くらいは吹き飛ばせたようだが、それ以上先まで一緒に吹き飛ばせなかったようだな」
吹き飛ばした頭部が3分の1くらい回復したヨルムンガンドの姿だった。
今の攻撃で頭部くらいは吹き飛ばせたようだったが、『世界の知識』によると200メートルくらい吹き飛ばせとあったはずなのにそこまでのことはできなかったようだ。
とはいえ、今の攻撃で仕留めきれなかったのは痛い。
『世界の知識』によると防御力は低いとのことだったが、そこは4魔獣の1匹。
最低限の防御力はあるのだと思う。
すぐもう一発同じ攻撃をすればいいだろう、って?
今の一撃でかなりの魔力を使ったのですぐに同じ攻撃はできない。
ということで、一旦下がって作戦を練り直すことにする。
★★★
少し後ろに下がると俺たちはすぐに回復作業を始めた。
「ヴィクトリア、聖石を出せ」
「ラジャーです」
ヴィクトリアに聖石を出させて、それで魔力の回復を図る。
普段から聖石に大量の魔力を蓄えてあるので、魔力の回復は順調に行えている。
「リネットはヴィクトリアに『体力回復』の魔法をかけてもらっとけよ」
「うん」
リネットは体力を結構消費したので、
「『体力回復』」
ヴィクトリアに魔法をかけてもらって、体力を回復してもらっている。
このように回復はうまく行っているのだが、問題はこの後どうするかだ。
「さっきと同じ攻撃を加えても結果は同じだろう。……となるとより強力な攻撃を加えるしかないのか」
しかし、あれより強力な攻撃って……。
俺がそうやって悩んでいると、エリカがこう提案してきた。
「旦那様。ここは思い切って『神化』を試してみてはどうでしょうか」
「『神化』か。確かにあれはあ強力だと思うけど、まだ誰もものにできていないじゃないか」
『神化』は『極大化』のさらに上を行く魔法の強化術だ。
『神属性魔法』に内包される神の力や神器に宿る神の力を使って魔法を強化するのだが、今まで練習でうまく行ったことはなかった。
「でも、旦那様。できるできないではなく、やるしかないのですよ。この状況を突破するにはそれしかないのです」
それしかない、か。
確かにエリカの言う通りだ。
ヨルムンガンドも今はレストリクシオンで動けない状況だが、それもいつまで持つかわからない。いつレストリクシオンの戒めが解け、ヨルムンガンドが動き出すか……そうなると世界に大災厄が訪れるだろう。
そうなる前にどうにかするには、エリカの言う通り気合で『神化』を使うしかないのだ。
俺は覚悟を決めることにする。
「わかった。エリカの言うようにすることにしよう。皆力を貸してくれ」
「「「はい」」」
俺の意見にみんな賛同してくれたので、早速行動に移ることにする。
「その前に一ついいかな」
と、ここでリネットが言いたいことがあるらしく割って入って来た。
「何だ?」
「実はね。この前ヴィクトリアちゃんのお兄さんに伝授された技があるんだけど、それを使ってみようと思うんだ」
「え?リネット、ジャスティスのやつに何か教えてもらったの?」
「うん」
そういうリネットの顔はどこか申し訳なさそうだった。
何でそんな顔を?と思ったが、とりあえず話を聞いてみることにする。
「それで、どんな技を教えてもらったんだ?」
「技というか、神器の有効な使い方かな。『フルバースト』って言うんだけど」
「フルバースト?」
「神器に込められた力を最大限に引き出す方法かな。『魔法でいう所の『神化』みたいなものである。弟子二号も、結構神気の使い方に慣れてきたみたいだから、そろそろ教えても大丈夫だと思うから教える』って言っていたよ」
ふーん、要するに技版の『神化』というわけか。
まあ、リネットも普段から神器の力を使いこなそうと練習しているからな。とうとうそういう奥義を使うようになる時が来たということなのだと思う。
あれ?
と、俺はある事実に気が付く。
「リネットがフルバーストを使えるということは……もしかして俺も?」
「うん、多分必殺剣を使う時にフルバースト使えるみたいだよ。ヴィクトリアちゃんのお兄さん、そう言ってたし」
やはりか!あいつなぜ俺にそのことを教えなかったんだ。
もしかして、俺はリネットほど神気を使えてないとか?
そんなことはないと思うが……一体どういうことなんだ。
俺がそんな風に困惑していると、リネットが申し訳なさそうにこう言ってきた。
「お兄さん、こうも言っていたんだよね。『弟子一号は最近妹とイチャイチャし過ぎなのである。ちょっとムカつくから、あいつのことは放っといて先に弟子二号に教えるのである。そして、弟子二号がそれなりにものにできたと思ったら、弟子一号に教えるのである。さもないと弟子二号にも教えないのである』ってね。だから今まで黙っていたんだ。ゴメン!」
何というか、開いた口が塞がらないという感じだった。
あいつ、実は結構根に持っていたんだなと思った。
でも、そういう男の嫉妬はあまり見せない方がいいと思うぞ。
そんなのを見せられると、女の子は引いちゃうからね。
「本当にお兄様ったら。そんな理由でホルストさんに教えなかったなんて……。妹として恥ずかしいです」
実際、ヴィクトリアも呆れているしね。
まあ、いい。それよりもフルバーストに関してだ。
「それで、リネットが今それを俺に教えるということは?」
「うん、大分ものになって来たと思う」
「わかった。そういうことならリネットにもそれを使って攻撃してもらう。頼りにしているからな」
「うん、頑張る!」
と、こんな感じで攻撃方法が決まったのでヨルムンガンドを攻撃することにする。
★★★
「『神化 魔法合成『天火』『天爆』『天罰』の三魔法合成神々の怒り」
「『神化 大爆破』」
「『神化 聖光』」
「「『神化 大爆破』と『神化 聖光』の合体魔法『神化 聖爆破』」」
再びヨルムンガンドの前に立った俺たちは、『神化』を使って魔法を唱え、待機状態にする。
いつもならここでうまく行かないことが多いのだが、今日はスムーズにできた。
多分追い詰められて集中力が普段よりも高まっているせいだと思う。
「魔法に一番重要なのは集中力よ」
いつもヴィクトリアのお母さんがそう言っていたが正にそれは金言だったというわけだ。
「『戦士の記憶』よ!アタシに力を貸して!『フルバースト 真空断』」
リネットの方も準備ができたようで、技を待機状態にする。
さて、全員の準備ができたようなのでいざ攻撃しようとすると、ヨルムンガンドが最後の抵抗を試みてきた。
「シャアアア」
何とレストリクシオンの拘束を一部解除し、大きく口を開けてきたかと思うと、そこからピュッと唾液を吐き出してくる。
その唾液は明後日の方向に飛んで行ったものの、その飛んで行った先にある大木に命中すると、ジューと一瞬でその大木を溶かしてしまった。
どうやら唾液は強力な酸のようだった。
まあ、ヨルムンガンドは何でも食べるそうだから消化液も強力なのだろう。
そういえば神聖同盟の奴らもアダマンタイトの鎧ごと食っていたしな。
この位は当然できるのだろう。
……って、今はそんなことを考えている場合ではなかった。
ピュッとヨルムンガンドがまた唾液を吐いてくる。
しかも今度は俺たちへ直撃コースだ。
まずい防御しないと!
俺は行ったん魔法を解除して防御に回ろうとしたが、
「させないよ!」
その前にリネットが動いていた。
リネットは俺たちの前へ立つと盾で酸を防御する。
フルバースト状態のリネットの盾の防御力はすさまじく、盾で防御したにもかかわらずその盾には傷一つついていなかった。
というか、リネットさん、フルバーストで技を待機状態にしたまま防御とかできるの?
俺、一回『神化』解除しないと動けないんですけど。
……うん。『フルバースト』使えそうだな。今度絶対に教えてもらおう。
さて、防御はリネットがやってくれるみたいなので攻撃開始だ。
「『神化 神々の怒り』」
「「「『神化 聖爆破』」」
俺とエリカとヴィクトリアが待機状態にしていた魔法を一斉に解き放つ。
ヨルムンガンドもビュッと唾液を吐いて迎撃してくるが、俺たちの魔法とぶつかった瞬間、ジュっと唾液は蒸発してしまった。
それを見て、リネットももう攻撃が来ないと悟ったのか。
「『フルバースト 真空断』」
待機していた必殺技を放つ。
そして、3種類の攻撃がほぼ同時に命中し、チュドドゴドーンというすさまじい爆発音が周囲に響き渡り、土煙が舞い上がる。
「『天風』」
俺はすぐさま魔法でその土煙を吹き払う。一刻も早く状況を確認したかったからだ。
すると見えてきたのは。
「やった!成功だ!これなら回復する前に封印できるぞ!」
首から先、200メートルどころか500メートルほどが消えてなくなったヨルムンガンドの姿だった。
思ったよりも威力が高かったが、より良い結果が出たのでよしとする。
ということで封印作業の開始だ。
★★★
「『神化 魔法合成 『重力操作』『空間操作』『地脈操作』の三魔法合成『神化 異世界への追放』」
『世界の知識』で知った通り『異世界への追放』を使ってヨルムンガンドの封印を開始する。
今回、一応『神化』を使っておいた。
別に使わなくても大丈夫な気がするが、念のためである。
まあ、『神化』の練習にもなるしちょうどいいのではないかと思う。
そんな感じで魔法を使うと。
「お?」
ヨルムンガンドの残骸が黒い穴の中へ吸い込まれて行く。
「ブラックホールに吸い込まれているみたいですね」
その光景を見て、ヴィクトリアがそんなことを呟く。
ブラックホール?何それ?
そう思い、聞いてみると。
「宇宙にあるなんでも吸い込む穴のことです」
という返答が返って来た。
うん。やっぱり訳が分からんが、何となく合っている表現だと思った。
そんな風にやっているうちに、黒い穴が吸い込むのをやめたかと思うと、黒い穴自体が消えてしまった。
もうヨルムンガンドの残骸はどこにも残っていない。
どうやら封印作業が終わったようだ。
「やったな!」
「ようやく終わりましたね」
「疲れました」
「結構な強敵だったね」
ようやく人作業終えた俺たちはそうやって一息つくことができたのだった。
これで遺跡への障壁を取り除くことができた。
後は遺跡へ入って行くだけである。
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