第288話~ヨルムンガンドとの決戦開始!~

 ヨルムンガンドへ向かいながら俺は頭の中の魔法リストを確認する。


『神属性魔法』

『神強化+6』

『天火+6』

『天凍+6』

『天雷+6』

『天爆+6』

『天土+6』

『天風+6』

『天罰+5』

『神獣召喚+3』

『神約+3』

『重力操作+5』

『魔法合成+4』

『地脈操作+4』

『空間操作+5』

『世界の知識+4』


 と、こんな感じだ。


 何か『神約』とかいうのが増えている。

 すぐにヴィクトリアに聞いてみると。


「『神約』ですか?ああ、それは敵にデバフを与えるの能力ですね。例えば相手の攻撃力や防御力を下げたりできます。ただし、こっちにもペナルティーがありますね」

「ペナルティー?」

「そうですね。相手の攻撃力を下げる代わりに自分の素早さが下がるとかですかね。最もペナルティーの内容はその時によって違いますので、何が出るかはその時次第ですね。もちろん、魔法を解けばペナルティーも解除できますよ」


 うん。何というか微妙な能力だなと思った。

 だが、それが大きな勘違いだったことに俺は後で気が付くことになる。


 さて、魔法のリストを確認したので次はヨルムンガンドの情報を得ることにする。


「『世界の知識』」


 俺はヨルムンガンドに対して魔法を使う。


 『ヨルムンガンド』

 世界を呑み込むほどに巨大な黒い蛇。

 その食欲は旺盛でとにかく何でも食べる。

 防御力はあまり高くないが、強力な再生能力を持つ上に巨体なので、これを滅ぼすのは至難の業である。

 攻撃方法は巨体を生かした突進を主にするが、バジリスクのような『石化の視線』も使ってくるので、対策用のアイテムは持っておこう。

 『蛇を殺すには頭を潰せ』の言葉通り頭が弱点。

 ただ再生能力は高いので、頭の他にも胴体を300メートルくらい一緒に吹き飛ばして再生を少しでも遅らせよう。

 頭を潰した後は、『重力操作』、『空間操作』、『地脈操作』の三魔法合成『異世界への追放』を使ってさっさと封印してしまうのが吉。


 と、以上が検索結果である。


 しかし、この『世界の知識』という魔法は本当に役に立つな。

 何せ敵の倒し方から敵の攻撃方法まで教えてくれるのだから。


 特に今回など『石化の視線』については知らなかったので大いに助かった。

 知らないまま行っていたら石にされていたかと思うと、本当ゾッとする。

 おかげで対策しておけば石にならずにすみそうだった。


 早速ヴィクトリアに指示を出す。


「ヴィクトリア。石化を防止するアイテムがあっただろう。あれを出せ」

「ラジャーです」


 俺の指示でヴィクトリアがマジックアイテムを取り出すと早速みんなでそれを装備する。

 そして。


「『神獣召喚 ケリュネイアの鹿』」

「はい、ここに」

「特殊能力をかけてくれ」

「『黄金の角の導き』」


 呼び出したケリュネイアの鹿にのバフをかけてもらう。


「これで、準備完了だな」


 ということで、早速ヨルムンガンドと戦うことにする。


★★★


「うわー、酷い光景だね」


 ヨルムンガンドに近づいてみると、あまりにもひどい光景にリネットが嫌そうな顔をした。


 というのも、あれだけあった神聖同盟の連中の死体がきれいさっぱりなくなっていたからだ。

 どうやらヨルムンガンドに食べられたらしかった。

 ヨルムンガンドは何でも食ってしまうらしいので、ヨルムンガンドにしてみれば、目の前のおいしそうな餌を食べただけの話だと思うが。


「邪神に利用されるだけ利用された挙句、最後は魔物の餌になるとか哀れな奴らだ」


 要は神聖同盟の奴らは使い捨てにされた格好になるわけだが、俺は同情しない。

 邪神に仕えるとはそういうことだから。

 邪神というのは自分に仕えるものでさえこんな風に雑に使うのだから、この末路も当然の結果だと思う。


 それよりも問題がある。


「ヨルムンガンドのやつ、さっきより若干大きくなっていないか?」


 ヨルムンガンドの体が先ほどよりも大きくなっていたのだ。

 どうもヨルムンガンドのやつ、神聖同盟の奴らを食べて少し体力が回復したらしかった。


「これ以上何か食べて大きくなられたらかなわないな」


 ということで、これ以上何か食べないうちに攻撃に移ることにする。


★★★


「とりあえず『神器レストリクシオン』を使って奴の動きを封じ込めるとするか」


 俺は嫁たちにとりあえずの行動を伝える。


 奴にこれ以上動き回られると厄介そうだからな。

 例の遺跡こそ何事もなく無事なようだが、周囲の森の木々は奴が動いたせいで大分へし折られているようだし。

 まあ遺跡の方はヴィクトリアのじいちゃんたちが造ったものだから無事なのだろうが、このまま奴を放っておくとエルフの国が窮地に陥りそうだからな。


 しかも奴の体はまだ異空間から全部出てきていない。

 それなのにこの状況だから、急いで対応する必要があった。


「ということで、ヴィクトリア、例のブツを出してくれ」

「ラジャーです」


 俺の指示でヴィクトリアが収納リングから神器を出す。

 それを渡された俺は使おうとするが、そこでハタと気が付く。


「これってどう使うんだ?」


 俺が神器の使い方を知らないことに。

 どうしようかと困っていると。


「おや?」


 神器の金具の部分に一枚の紙が挟まっていることに気が付く。

 早速それを取り出して読もうとするが。


「ダメだ。読めない。これ神代文字だ。ヴィクトリア、頼む」

「お任せください」


 ということでヴィクトリアに渡して読んでもらう。


「どれどれ」


 神を渡されたヴィクトリアはすぐに読み始める。


「『ヴィクトリアちゃんへ あなたが今この紙を読んでいるということは、あなたは今からこの神器を使おうとしているのでしょう。だったら、おばあちゃんが使い方を教えてあげます。』」


 この紙の最初はそんな風な文章で始まっていた。

 どうやらヴィクトリアのおばあさん。これがヴィクトリアに渡ると思ってこの紙に使い方を書いてくれたようだった。


「『まず、この神器は神にしか使えません。そしてこの神器を使うには強い思いが必要なのです。』」


 神にしか使えない神器か。なるほど、これはヴィクトリアがいなかったら使えなかったな。

 それに強い思いか。

 確かに強力な神器にふさわしい使用条件だと思う。


「『あなたがこの神器を使おうとしているということは、ヴィクトリアちゃん、好きな相手にはぐらかされ続けているか、旦那様に浮気でもされているのでしょう。でも、大丈夫。この神器さえあれば、そんな不埒者でも簡単に捕まえられるから。』」


 ……何か急に雲行きが怪しくなってきた。

 というかおばあさん。あなたはヴィクトリアに酷いことをした男を捕まえさせるためにこの神器を渡したのですか。


 まあ、百歩譲ってそれはいいです。


 でも、今の説明を聞いて3人の嫁の目つきが変わったのですが……これはどうしてくれるんですか。

 絶対3人の嫁たち、いいことを教えてもらったという顔をしていますよ。

 これ、俺が将来何かしでかしたらこの神器で俺が捕まえられるパターンですよね?

 将来俺がこれで縛り上げられたらどうしてくれるんですか!


 え?お前が浮気とか変なことをしなければいいだけだろって?

 もちろん俺は浮気する気なんてこれっぽっちもありませんが、世の中勘違いということがあるのですよ。

 それなのに嫁たちに武器を与えてくれて……なんてことをしてくれたんですか!

 絶対俺が捕まることになったら恨みますからね!


 と、そんな俺の心の葛藤をよそに、ヴィクトリアは続ける。


「『ということで、これを使う時は相手を捕まえたいという強い気持ちを抱きながら、『レストリクシオン、〇〇〇を捕まえなさい』と唱えるのです。そうすれば、後は神器が勝手に拘束してくれるわ。おばあちゃん、あなたの恋が成就することを願っているから頑張ってね。』」


 おばあさんの言葉はこれで終わりだった。


 しかし、読み終わった後も嫁たちの視線がきついのは気のせいではないと思う。

 本当に余計なことはしないで欲しいものだ。


 それはともかく、これで神器の使い方はわかった。

 早速これを使ってヨルムンガンドを拘束するとしよう。


★★★


「レストリクシオン、ヨルムンガンドを捕まえるのです」


 ヴィクトリアがそう言いながら神器の力を解放する。

 すると、スルスルと神器が動き出し。


「?」


 あっという間にヨルムンガンドを拘束してしまった。


 拘束されたヨルムンガンドは何が起こったかわからず、最初呆然とした様子だったが、すぐに自分が拘束されたと気が付いたらしい。

 バタバタと体を激しく振り回して拘束を解こうとする。


 しかし。


「???」


 神器はヨルムンガンドが体を動かすたびに適度に伸び縮みして、決してヨルムンガンドが振りほどけないように拘束し続けるのだった。


 これは行ける!

 そう判断した俺は攻撃を開始することにする。


「お前ら、行くぞ!」

「「「はい」」」


 こうして、俺たちとヨルムンガンドの決戦が始まったのだった。

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