今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第277話~パトリックの新装備を買う そして、嫁たち、ドライヤーを手に入れて子供のようにはしゃぐ~
第277話~パトリックの新装備を買う そして、嫁たち、ドライヤーを手に入れて子供のようにはしゃぐ~
王様との謁見の翌日。
「さて、そろそろ買い出しに出掛けるぞ」
俺たちは買い出しに出掛けた。
とは言っても、町へ買い出しに行くわけではない。
いや、一応町へも行くがそれは今から行くところの用意が終わったらの話だ。
「『空間操作』」
俺は転移門を開き、ある場所と館を繋げる。
「行くぞ」
そして転移門を通ってそこへ向かう。
「着いたぞ。ここへ来るのも久しぶりな気がするな」
そうやって着いた建物の看板にはこう書かれていた。
『ヒッグス商会魔道具工房』
そう。俺たちが買い物に来たのはエリカの実家がやっている魔道具工房だった。
★★★
「いらっしゃいませ。あ、これはホルスト様、お久しぶりでございます」
魔道具工房の受付で声をかけると、職員さんがそうやって挨拶をしてくれた。
「ああ、久しぶりだね。ところで注文の品ができていると聞いてきたんだけど」
「ああ、あれのことですね。少々お待ちください」
そう言うと、職員さんは一旦奥へ引っ込み、しばらくして魔道具職人さんを連れて戻って来た。
俺はこの職人さんのことを知っている。
レンブラントさんと言って、前に嫁たちの杖とローブを作ってもらった職人さんだ。
ここの責任者でもある人なので、俺は挨拶する。
「レンブラントさん、お久しぶりです」
「これは、ホルスト様。お久しぶりでございます」
お互いに挨拶を交わした後、早速商品を見せてもらうために移動する。
移動した先は中庭だ。
「ブルルル」
中庭にはすでにパトリックが移動して待機していた。
魔道具工房の入り口に来た時に守衛の人に頼んで移動させてもらっていたのだ。
「それでは、レンブラントさん。早速ですが注文の品を見せて下さい」
「畏まりました。おい、持ってこい」
「はい」
レンブラントさんが部下に指示すると、部下たちは一旦倉庫へ行き、そこから台車に乗せて大きな箱を運んでくる。
そして俺たちの前に箱を置くと、ふたを開けてくれる。
そこから出てきたのは……。
「これが森林でパトリックに装備させる魔道具ですか」
「そうです。どうですか?中々いい感じでしょう?」
「それは装着してみてからの判断だな。ちょっと着けてみてくれ」
「はい、畏まりました」
俺が装備をパトリックに着けるように頼むと、部下の人たちが急いで装備をパトリックに着けてくれる。
「おお、いいじゃないか」
しばらくして装備し終えたパトリックを見た俺は感嘆の声を上げる。
緑と茶色の迷彩柄の馬装はパトリックによく似合っていた。
今回、魔道具工房に注文したのは森林地帯用のパトリックの装備だ。
この装備の効果は主に虫よけだ。
夏の森林という場所は虫とかが多いらしいから、虫とかに刺されないようにするための対策だ。
虫に刺されたりすると、最悪変な病気になることがあるからな。
だから俺としてはできるだけパトリックが虫なんかに刺されないようにしてやりたい。
それがパトリックの主人としての俺の務めだと思う。
それと馬装の柄を迷彩柄にしたのは敵から発見される確率を少しでも減らすためだ。
この柄なら森林の緑の柄に溶け込んで敵から発見される確率は低くなる。
まあ、俺たちの索敵能力は高いので不意を突かれることは少ないと思うが、これも念のためだ。
安全を高める方策があるのなら、なるべくやっておくに越したことはないからな。
「パトリック、カッコよくなりましたね」
それはともかく、パトリックに装着された装備を見てヴィクトリアがはしゃいでいる。
パトリックに抱き着いて、
「良く似合ってますよ」
と、耳元でささやいている。
褒められたパトリックもうれしかったのか、
「ブヒヒヒヒン」
と、嬉しそうな声でいなないている。
あげく。
「うん、この装備は『パトリック森林戦仕様装備』と名付けましょう」
とか、また変な名前を装備につけようとしている。
止めようかなと思ったが、もういいやと思ったのでやめておいた。
どうせ俺がここで止めてもヴィクトリアはそう呼び続けるだろうし、今日はヴィクトリアの日なので、ここで不機嫌にさせたらサービスが悪くなりそうだったので好きにさせることにした。
どうせこの装備にどんな名前を付けようが、大して実害があるわけではないし、ね。
さて、これで今日一番の大きな買い物は済んだし、次行くとするか。
★★★
と思ったのだが、装備を受け取って帰ろうとするとレンブラントさんに呼び止められた。
曰く。
「奥様方から頼まれていた例の商品。試作品が出来上がっておりますので、見て行かれますか?」
とのことだった。
それを聞いて、嫁たちが大騒ぎする。
「あれが完成したのですか。これは早速試してみないといけませんね」
「ワタクシも出来上がったのなら、今回の旅に持って行きたいです」
「アタシもできるの楽しみだったんだ」
そうやって3人でキャッキャと楽しそうに言いあっている。
どうやら嫁たちはこの商品が出来上がるのを非常に楽しみにしていたようだった。
それを見て、俺はレンブラントさんにお願いする。
「それでは、案内してもらえますか」
「こちらですよ」
俺が頼むとレンブラントさんがすぐに案内してくれる。
「これです」
ある部屋に行って、問題の商品を見ると嫁たちが歓喜の声を上げる。
「これこれ、これです。私が欲しかったのは」
「早速使ってみましょう」
「使おう、使おう」
そう言いながら商品を手に取り、早速スイッチを入れる。
商品はブオーンという大きな音を立てながら、口から熱風を吹き出す。
嫁たちはその熱風を髪に当ててみる。
「「「うーん、これなら髪の毛すぐに乾きそうですね」」」
そう言いながら嬉しそうな顔をする。
嫁たちが待ち望んでいた商品。
それはドライヤーだった。
ドライヤーを手に入れた嫁たちは口々にレンブラントさんにお礼を言う。
「ありがとうございます。これで髪の毛を乾かす時間が短くなって助かります」
「本当にありがとうございます」
「大切に使わせてもらいます」
とてもうれしそうな顔をしているので、本当に待ち望んでいたのだと思う。
そんな嫁たちの笑顔を見られて、俺は大変うれしく思うのだった。
★★★
ヒッグス家の工房から出た後はエリカの実家へ行く。
「あ、パパとママだ」
すると、庭で銀と遊んでいたホルスターが俺たちに気が付いて、こっちへ寄ってくる。
「よう、元気にしてたか」
「おばあちゃんたちの言うことぉ聞いて、いい子にしてた?」
「うん」
「そうか、いい子だな」
「頭を撫でてあげるからこっちへおいで」
そうやって近寄って来たホルスターを二人して撫でるのだった。
その後はエリカの両親の所へ行き、今後の予定の話をする。
「ふむ。つまりこれからエルフの禁足地の遺跡へ出かけると」
「はい。ですから、ホルスターと銀を預けて行きますので面倒を見てくれませんか」
「わかった。任せておきなさい」
俺たちがこれから乗り組んで行くのは、とても危険な場所だ。
どうなるかわからない。
ホルスターを連れて行くわけにはいかなかった。
銀は別に連れて行ってもよかったが、ホルスター一人だけ置いて行くのはかわいそうなので一緒に残しておくことにした。
それに今回の敵は強敵そうな予感がするので、あまり子供を連れて行きたくなかった。
「それでは、お願いします」
お父さんたちにそう言うと、俺たちは屋敷を出た。
「パパたち、行ってらっしゃい」
最後にホルスターたちに笑顔で見送られながら、俺たちはパトリックを走らせて門を出る。
これで後顧の憂いはなくなった。
さあ、エルフの遺跡へ向かうとしよう。
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