第274話~エルフの禁足地の遺跡の情報と貴重な古代魔術書をゲットする!~

 図書館にこもって2週間。

 とうとう目的の品物を発見した。


「ホルスト君、これを見てみて」


 図書館でいつ果てることもなく図書館で本を探していると、リネットが俺に1冊の本を見せてきた。


「どれどれ」


 リネットから本を受け取った俺が題名を読んでみる。


「『禁足地の遺跡に関する調査結果と伝承の考察』か。ビンゴだ!」


 それがお目当ての本だと確信した俺は小躍りした。

 早速みんなを集合させ、本を読んでみることにする。


 なお、全員で本を読むのは効率が悪いので代表としてエリカが読むことにする。

 まあ、俺たちの中ではエリカが一番頭が良くて、本を読むのも早いからな。

 それが一番効率的だと思う。


「私が読みますので、皆さん少しお待ちください」

「ああ、任せたよ」

「お任せください」


 エリカはそう言うと件の本を読み進めていく。

 ただ単に読むだけではなく、ちょこちょことメモを取りながら細かく読んでいるので時間はかかると思う。で、その間、俺たちは暇だ。


 ということで、何をして時間を潰そうかということになった。

 すると、リネットがこんなことを言い始めた。


「これだけ広い図書館なんだからさ。何か有益なお宝本があると思わない?だったら、この際だから図書館の中をもうちょっとだけ探してみない?」

「なるほど、それはいい考えだな」


 ということで、俺たちは再び図書館の中をうろうろし始める。

 とはいっても、リネットが言うような貴重な本に当てがあるわけでもないので単に本棚の間を流れるように歩きながら、何となく題名を見て役に立ちそうな本を探すことになった。

 正直意味があるのかないのかわからない所だが、散歩として考えればちょうどよかった。


 そんな風にして図書館内を2,3周した頃。


「うんしょ、うんしょ」


 リネットがそうやって無理に背伸びしながら、本棚の一番上の本を手に取ろうと頑張っているのを目にした。


 うちのパーティーの中でリネットが一番背が低いからな。

 だから家でもこうやって高い場所にあるものを取るのに苦労している光景をたまに見たりする。

 そういう時に俺はリネットが取ろうとしている物を取ってやって、


「ありがとう」


と、言われることがよくある。

 その時のリネットの笑顔はとてもかわいらしく、見ているととても心が和む気がする。


 ということで、今回も手伝ってやることにする。


「リネット、本を取りたいのか?だったら取ってやるよ」

「ホルスト君」


 俺が声をかけると、リネットはいつも通り嬉しそうに返事をしてきた。

 それを見ると俺もうれしくなり、こう聞く。


「どの本が見たいんだ?」

「あの青い背表紙の本が気になる」

「わかった。ちょっと待っていろ」


 俺はリネットの言う通りにそのお目当ての本を取り、リネットに渡してやる。


「ほらよ」

「ありがとう」


 本を渡してやると、いつものようにリネットは笑顔でそう答えてくれた。

 俺は十分に満足した。


「それで、リネット。その本は何て本なんだ」

「アタシもよくはわからないんだけど……『古代魔術書ヒエログリフ』って書いてあったから、何か大事な本じゃないかと思ったんだ」


 古代魔術書?ヒエログリフ?

 なんかすごい名前の本だな。これは期待できそうだな。


 リネットから本の名前を聞いた俺は、子供のように、妙にワクワクするのだった。


★★★


「これは結構良い物を見つけてきたわね」


 リネットが見つけてきた本をヴィクトリアのお母さんに見せると、お母さんはその本に対してそのような評価を下した。


「へえ、そんなにこの本は良い物なのですか」

「ええ、人間の世界にある魔術書としては価値があるものね」

「そうなんですね」

「そうなの」

「それで、お母様、さっきから『良いものだ』としかおっしゃっていませんが、具体的にはこれはどういった本なのですか」

「うん、それはね」


 と、ここでもったいぶってお母さんは一呼吸おいて、コホンと咳をする。

 大分芝居がかった行動だった。

 ヴィクトリアもそうだが、ヴィクトリアの家系ってどうしてこう芝居がかった行動が好きなのだろうか。


 というか、これ俺とヴィクトリアに子供ができたら、その子にも遺伝したりしないだろうな?

 ……うん、そうならないように今から気を付けておこう。


 それはともかく、満を持したお母さんがおもむろに口を開く。


「これは魔法の事典ね」

「事典ですか」

「そう事典ね。これを紐解いてみれば、魔法のことなら大体わかるという代物ね」

「へえ、それはすごい物ですね」

「ええ、すごいの。これを見れば『極大化魔法』とか、そういうのもちゃんと載っているからね」


 何とお母さんによるとこの本には『極大化魔法』のことまで掲載されているらしかった。


 『極大化魔法』は人間の中では伝承されていない技術だ。

 現に俺たちもヴィクトリアのお母さんに伝授されるまで知らなかったわけだし。

 そういうのまで載っているということは、この本には本当に価値があるのだと思う。


 それに、『極大化魔法』が載っているということは、他にも役に立つ魔法技術が掲載されている可能性も高そうだった。

 それを利用すればもっと豊かな生活を人類は送れるようになるだろう。


 そういう未来が訪れるのは楽しみなことだと思う。

 うん、本当一級品のお宝を見つけることができてよかった。


「旦那様、一通り読み終わりましたよ」


 俺がそんな妄想にふけっていると、エリカがそう声をかけてきた。

 どうやら本を一通り読むことができたようだった。


 ということで、『ヒエログリフ』のことはとりあえず置いておいて、エリカの話を聞くことにする。


★★★


「まずは、こちらの地図を見てください」


 そう言いながらエリカが見せてきたのは一枚の地図だ。

 これは問題の本に挟まっていたものだ。


 それを見せながらエリカはこう言う。


「この地図の×の部分に遺跡があります」

「ほほう」


 俺たちはエリカの指し示す地点を興味深げに見つける。

 その地点は禁足地の中でもかなり奥ばった場所にあり、辿り着くのは困難そうだった。


 俺たちがみんな地図を見たのを確認したエリカは話を続ける。


「それで、遺跡への入り方なのですが……、『融和の門の門の前にて、太陽と月をあがめる王の末裔たちが太陽と月の踊りを捧げよ。さすれば、遺跡への道は開かれん』ということらしいですよ」


 エリカが必死になって本を読んだ結果を聞くとそういうことらしかった。


 融和の門って何よ?

 と色々ツッコみたい気持ちがわいてきたが、エリカの話によると、俺たちが求める遺跡の前にある門らしかった。

 それで遺跡へ行くのにはこの門を通る必要があるらしかった。


「それで、『太陽と月をあがめる王の末裔たちが太陽と月の踊りを捧げよ』ってことの意味は?」

「それは多分、太陽神を信仰するダークエルフと月の女神を信仰するエルフ。その両者の、しかも王が『太陽の踊り』と『月の踊り』を門の前で一緒にしろ、という意味だと思います」


 やはりそうか。

 エリカの話を聞いた俺はそう思った。


 だが、それは難しい事であった。

 王様にわざわざ出張ってきて門の前で踊ってもらうとか無理に決まっている。


 当然だ。


 王様には国の政務を見るという仕事があるのだ。

 しかも禁足地の遺跡へ行くのには結構時間がかかるはずだ。

 ということは、その間王様がずっといないという事態になるはずで、そうなると国の運営が滞る可能性が高かった。

 封印をどうにかできても、それと引き換えに国が混乱していいわけがなかった。


 そうやって俺がどうしようかと思っていると、ヴィクトリアのおばあさんが声をかけてきた。


「ホルスト君。もしかして、王様が躍らなければならないって思っていたりする?」

「ええ、そうですが」

「それ、別に王様じゃなくても構わないわよ。王様に近い王族なら誰でもいいわよ」


 ふーん、そうなのか。それなら王様に頼んだらどうにかなるかも。


 と、そこまで考えた時、俺の脳裏にある考えが浮かんだ。

 あれ?何でヴィクトリアのおばあさん、そんなことを知っているの?もしかして……。


「もしかして、おばあさん。この遺跡のことについて全部知っていたりします?」

「ええ、もちろん知っているわよ。だって、その遺跡を造ったの、私と旦那様のリンドブルだもの」


 俺の質問に対して、おばあさんはしれっとそう答えた。

 それを聞いて俺はちょっとイラっとした。


「おばあさん。知っていたのなら、なぜ最初から教えてくれなかったのですか?おかげで俺たちは……」


 と、そこまで言ったところで、おばあさんが俺の口に指を当て、静かにするようにジェスチャーしてくる。


「それは、ね。これがあなたたちに与えられた試練だからよ」

「試練?……ですか」

「そう。試練よ。あなたたちは、ここが終わった後も他の場所の地脈の封印をしなければならない。そのためには色々と学ばなければならない。ここで苦労して本を探してもらったのもその学びの一環よ。私たちが教えたものでなく、こうやって苦労して学び取ったものでないと、将来あなたたちが困難に直面した時役に立たないから。だから、わざわざ苦労してもらったの」


 そのおばあさんの言葉は妙に説得力があって、有無を言わせない感じのものだったので、俺はそれ以上何も言えなくなった。


 というか、俺たちを鍛えるためにわざとそうしてきたのかとわかって、物凄く合点がいって気持ちがすっきりした。

 だから思わずお礼を言ってしまった。


「そうだったんですね。俺たちのことを考えて行動しててくれたんですね。どうもありがとうございました」

「別にわかってくれたのならいいわ。それよりもこれからよ。頑張ってここの封印を何とかしなければ、ね」

「はい、頑張ります」


 ということで、俺は改めて封印をどうにかすることを誓うのだった。

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