第269話~魔物の村攻略戦 後編 魔物の村討伐完了!~

 偵察に行った次の日の夜。

 俺たちは魔物退治に魔物の村に向かった。


 ベースキャンプにはジャスティスが一人でお留守番をしている。


「私も行きたいのだ」


 最初ジャスティスのやつはそう言って自分も魔物退治に行きたそうにしていた。


 しかし。


「お兄様。万が一馬車が襲われたりするとワタクシたち帰れなくなっちゃうのです。ですからお兄様にはしっかり馬車を守っていただきたいのです。お兄様だけが頼りなのです」


 ヴィクトリアにそうやって懇願されると、一転。


「任せておくのだ!」


 そう張り切りながら馬車を守ってくれることになったのであった。


 ちなみに、ヴィクトリアにこのセリフを言わせたのは俺だけどね。

 策略が上手くはまってくれて俺は素直にうれしかった。


 俺はジャスティスに魔物退治について来てほしくなかった。

 なぜなら、あいつ鬱陶しいし、第一あいつ強すぎるからあいつがいたら新人の子たちの訓練にならないからな。


 本当、今回ばかりはジャスティスが単純なやつで助かったと思う。


「本当、チョロい兄貴ですね」

「あの子、あんなにチョロい子だったのね」

「あの調子では、将来悪い女に騙されないか、おばあちゃん心配だわ」


 あげく、自分の家族にまで陰口をたたかれる始末だ。

 ちょっとだけかわいそうな気もしたが、これでベースキャンプの守りは万全なので安心して魔物退治に行くことができるようになった。


★★★


「全員配置に就け!」


 魔物の村に到着した俺は新人の子たちに指示を出して配置に就かせる。


 配置場所は主に村に二つある木製の門の前。


 騎士団と白薔薇魔法団の子たちを均等に配置する。

 俺たちのパーティーは俺とヴィクトリア、エリカとリネットで分ける。

 ヴィクトリアのお母さんとおばあさんも二つに分ける。


 後、銀とホルスターはまとめて俺たちの方へ入れた。

 それと、先生はリネットたちの方へ行ってもらう。


 これで、配置は完了だ。

 それでは、攻撃を開始する。


★★★


「ライラ、攻撃の合図の魔法を放て!」

「はい。ホルスト先輩!『火球』」


 俺の指示でライラが攻撃の合図の『火球』の魔法を放つ。

 ライラの魔法は上空まで飛翔すると、ポンという音とともに四方へと四散する。

 それとともに全軍が一斉に攻撃を開始する。


「弓隊、指示地点に火矢を放て」

「『火球』」


 まず一斉に村の入り口にある門の破壊に全力を傾ける。

 ここの門は安普請の木の門なので、一斉に火で攻撃されてあっという間に燃え上がる。


「グワアア」

「ギャアアア」


 と同時に、門番であるゴブリンたちが火に焼かれて絶叫する声も聞こえてきたので、第一撃が成功したのを確認した俺は次の作戦に移る。


「ヴィクトリア!」

「ラジャーです。『聖光』」


 俺の指示でヴィクトリアが村の中心部目掛けて『聖光』の魔法を放つ。

 ピカー、とヴィクトリアの魔法は魔物の村を明るく照らし出す。

 これで村の様子は丸見えだ。


「一斉攻撃!」


 それを皮切りに、今度は全員で一斉に村の建物を攻撃する。

 というのも、魔物たちの住処は確かに洞窟の中なのだが、司令部とか倉庫とかは外に設置しているみたいだったのでそちらを攻撃したのだった。

 俺たちの総攻撃を受けてこちらの建物も大炎上だ。


「ギャー」

「キャー」


 逃げ惑う魔物たちの悲鳴が心地よい。


 さらに。


 所々で、ドカーン、ドゴーンという爆発音が聞こえてくる。

 昨日偵察に来た時にリネットたちが仕掛けた爆弾石に引火して爆発したのだった。


 この爆発で村の建物があらかた吹き飛んだ。

 これで、作戦の第二目標も達成だ。


「よし!全軍で村に突撃しろ!」


 第二目標も撃破した俺たちはいよいよ村の中へと乗り込んでいく。


★★★


「騎士団二人と白薔薇魔法団一人で組んで突入しろ!白薔薇魔法団は探知魔法で索敵をかかさないように!騎士団の奴らは白薔薇魔法団を死ぬ気で守れ!指示は以上だ!全軍行動開始!」

「うわー」


 俺が命令を下すと全軍が突撃していく。


「おりゃあ、覚悟せええや!」

「『風刃』」

「ここは抜かさないぞ」


 そうやって魔物の残党を撃破しながら村の奥へと進んで行く。

 魔物の反撃は、初撃と第二撃で大ダメージを受けていたこともあり、散発的なものだった。

 順調に奥へと進んで行く。


「うん」


 と、突然新人の子たちの進軍が止まった。

 見ると、目の前には魔物たちの住処である洞窟が点在する光景が見られた。


 どうやら俺たちは村の奥へと到着したようだった。


★★★


「洞窟の周囲に敵の姿は確認できませんでした」


 洞窟を攻撃する前に新人の子たちを周囲の偵察に行かせると、周囲に敵はいないという報告が返って来た。

 どうやら生き残った敵は全員洞窟に逃げたようだった。


 ということで、洞窟の攻撃を開始する。

 もちろん攻撃と言っても馬鹿正直に洞窟に乗り込んだりする気はない。


「ヴィクトリア、煙幕弾を出せ」

「ラジャーです」


 俺はあらかじめ町で買い込んできた煙幕弾をヴィクトリアに出させると、それにみんなで火をつけていく。

 すると一気に大量の煙が発生する。


「風の魔法を使ってこれを洞窟の中へ流し込んでやれ!」

「はい」


 それでこの発生した大量の煙を白薔薇魔法団の子たちが、魔法で次々と洞窟の中へと流し込んでいく。


 5分後。


「ギャー」

「ゴホ、ゴホ」


 大量の煙に巻かれて耐え切れなくなった魔物たちが次々に洞窟の外へと炙り出されてくる。


「始末しろ」


 俺が短く命令すると、騎士団の子や白薔薇魔法団の子たちが剣や魔法で魔物を始末していく。

 ただ、洞窟の中には多数の魔物が潜んでいたようで、倒しても倒してもキリがないくらい出てきた。

 さすがにこの数を新人だけで相手にさせるのは酷だったので、ちょっとだけ手助けしてやる。


「リネット」

「おう」


 リネットが前に出て、この村の中では上位種に当たるゴブリンウォーリアやオークなどの掃討に当たる。

 まあ、強いと言っても今のリネットの手にかかれば赤子の手をひねるのも同然なので、次々に始末していく。


「リネットさんに負けるな!俺たちも行くぞ!」

「おおおう」


 それを見て新人の子たちも勇気を奮い立たせたのか、攻撃はさらに苛烈なものになっていった。


 30分後。


「ようやく、出てこなくなったな」


 とうとう魔物たちが出てこなくなった。

 それを見て、魔物退治も終了かな、と俺は思った。


★★★


「ホルストさん、洞窟の中には魔物は残っていないようです」

「ご苦労さん」


 魔物との戦闘の後、ヴィクトリアに精霊を呼び出させて洞窟の中を探らせると、もう敵は残っていないようだった。


 ということで、収穫タイムの始まりだ。


「ゴブリンの死体は装備品をはがしてこっちへ並べろ。最後にまとめて燃やすから。オークの死体は売り物になるからな。こっちへ並べて回収だ」


 そうやって処分する魔物の死体とそうでないのを分けて並べる。


「『天火』」


 そして、処分する方は俺が魔法で燃やした。

 全部で200体以上はあったので盛大な火柱が立ったが、こんな光景は見慣れたものだったので特に感慨はわかなかった。


 それで、残った売り物になるオークと装備品類は、


「ヴィクトリア」

「ラジャーです」


ヴィクトリアに回収させた。

 これで、今回の魔物退治でやることは完全に終了だ。


「帰るぞ」


 ということで、俺たちは一旦ベースキャンプに戻り、ベースキャンプを撤収してヒッグスタウンへと帰還するのだった。


★★★


 帰路は往路と同じ時間をかけてゆっくりと帰った。

 そして、ヒッグスタウンへ着くと真っすぐに冒険者ギルドへ向かった。


「すみません。依頼達成してきました」


 そうギルドに報告し、回収してきたオークや装備品類を買い取ってもらった。

 その代金の中から、俺が出しておいた今回かかった経費の分だけを回収し、残りを新人の子たちに分配してやった。


「これでは先輩たちの取り分が無いですけど、構わないのですか」

「ああ、そう言えば、お前たちには騎士団や白薔薇魔法団へ入ったお祝いをあげてなかったからな。だから、そのお祝いがわりだと思って受け取ってくれて構わないよ」

「ありがとうございます」

「それよりも、今から飲みに行くぞ。魔物退治のお祝いにな」

「はい」


 そして報酬の分配が終わった後は、お祝いにみんなで飲みに行き、夕方くらいまで楽しく過ごし、今回の魔物退治は終了となったのであった。

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