第266話~魔物退治に向けて出発する そして、嫁たちと白薔薇魔法団の子たちとのお風呂女子会~

 買い出しの翌日。


 俺たちはヒッグスタウンを出てヒッグス領の郊外に向かった。

 今回の目標は魔物の村の殲滅だ。


 村といっても人間の村と同じに考えてはいけない。

 今回の魔物たちの村はいわゆる洞窟集落というやつである。

 どうやら山の斜面に洞穴を掘りそこを拠点としているらしかった。


 正直面倒くさい相手だ。

 下手に洞窟に入ったりしたら闇討ちされてこっちがやられる可能性もあるからな。


 ただ、今回の場合こっちには魔法使いが揃っているので、それを利用して攻略していこうと俺は考えている。

 まあ、詳しい作戦は現地を見てから考えるとする。


 ということで、今は目的地へ向かおうと思う。

 今回、魔物討伐に当たって馬車を3台用意した。

 3台の馬車が縦に一列に並んで目的地の村へと進んで行く。


 一番先頭を進むのは、俺たちの馬車だ。

 というのも一番強い俺たちの馬車が先頭にいた方が道中安全だからだ。

 魔物が襲ってこようが、山賊が襲ってこようが俺たちなら問題ない。


 俺たちに続くのは、白薔薇魔法団の子たちが乗った馬車だ。

 彼女たちは魔法には長けているが、肉弾戦には弱いからな。

 万が一の時に備えて中段の位置に配置している。


 最後尾には騎士団の新人の子たちの馬車が配置されている。

 こいつらは白薔薇魔法団の子たちよりは頑丈だからな。

 最後尾に配置して後方に備えてもらう。

 新人の子たちなので、多少経験不足である点が気になるが、ライトニング先生も一緒に乗ってくれているので問題はないと思う。


 それと、今回は訓練を兼ねた魔物退治ということなので、参加した新人の子たちには訓練をしてもらう。

 騎士団の新人の子たちには馬車の最後尾に座ってもらってテレスコープで後方の監視をしてもらっている。

 それと、白薔薇魔法団のこのうち一人は交代で一人は俺たちの馬車に乗ってもらって、探知魔法を使った索敵の訓練をしてもらっている。


 ちなみに今俺の横にいるのはライラだ。


 エリカについてもらって探知魔法の訓練をしている。


「探知魔法を使う時は、もうちょっと肩の力を抜いて気楽にやりなさい。そうでないと、繊細な感覚の変化を捉えられないですよ」

「はい。頑張ります」


 と、こんな感じでエリカの指導を受けながら頑張っている。

 ちょっと緊張気味にやっているところが初々しい感じがしていいと思う。

 緊張しすぎはダメだが、緊張が無いと訓練にならないからな。

 この位の緊張感でやるのがちょうどいいと思う。


 こうやって、俺たちは順調に街道を進んで行った。


★★★


 魔物の村まで行く道中はのんびりできた。


「みなさん、この暑い中、一生懸命働いていますね」


 馬車の窓から街道沿いの村を眺めて、ヴィクトリアがそんなことを呟く。


 確かに街道沿いの農村地帯では皆が農作業に励んでいた。

 小麦畑や野菜畑の雑草取りに、果樹園での果樹の手入れなどなど、皆この日差しが強くくそ暑い中、麦わら帽子をかぶって、タオルで汗を拭きながら懸命に作業していた。


「ねえ、ねえ、ホルストさん。あのおじさん、桃の実をとっているみたいですが、あんな小さくて青い実なんか食べられるんですかね」

「さあ、どうなんだろうな。俺も農作業は詳しくないし、よくわからないな」

「ああ、あれは実の間引きをしているんだよ」


 俺たちが農作業に対してあれこれ言いあっていると、リネットがそんなことを教えてくれた。


「小さい実を取ることによって、他の実が大きく育つようになるんだよ。どこでも農家はやっていると思うよ。ちょっと手間だけど、その方が実も大きくなって高く売れるからね」

「へえ、そうなんだ。リネットは物知りだな」

「えへへ、そうかな」


 俺に褒められたリネットは嬉しそうに笑う。

 意外にもリネットは農作業にも結構詳しく、果物の実の間引きの他にも今あの人はこんな作業をしているとかいろいろ話してくれた。


 なお、このリネットの話にはホルスターが興味を示したようで、俺たちが話しているところへ寄ってきて、


「リネットお姉ちゃん、あれは?あれは?」


と、しきりに聞いていた。


 ちなみに今回の旅にはホルスターを連れて来ている。

 というのも、今回の討伐対象の魔物たちは大した相手ではないのでホルスターの魔法の練習にちょうどいいかな、と思って連れてきたのだった。


 ホルスターに寄り憑かれたリネットはちょっと困惑しつつも、


「ああ、あれはね」


と、丁寧に説明してやっていた。

 それを見ていると、何か俺までほっこりするのだった。


 こんな感じで、道中俺たちはのんびりするのだった。


★★★


 初日は街道沿いの町の宿屋に宿泊した。


「ようこそ、おいでくださいました。今日はご宿泊でよろしいですか?」

「ああ、30名近くになるんだけど部屋は空いているか?」

「はい、大丈夫です。すぐご案内できますよ」


 宿屋の受付で宿泊の可否を尋ねると、大丈夫そうだったので部屋割りとかは宿屋の人たちに任せることにした。

 一応、うちの家族と白薔薇魔法団、騎士団の3グループで部屋を割ってくれるように頼んだ。


「それではどうぞ」


 すぐに部屋が決まり、宿屋の人たちが部屋に案内してくれる。

 ちなみに今日はヴィクトリアの日なので、俺とヴィクトリアは同じ部屋に宿泊したが、その様子をジャスティスのやつが恨めしげに見ていた。


「私は一応お前のことは認めたが、妹に破廉恥なことをするのまで許したわけではないぞ」


 そんな風にぶつぶつ言っていたが、


「はい、はい。あんたは二人の邪魔をするんじゃないわよ」


と、お母さんの手によりどこかへ連れて行かれていた。


 グッジョブ!お母さん!


 この時だけは本当お母さんに感謝したものだった。


 さて、このようにして各自が部屋に入り荷物を置いた後は、皆で食事だ。

 1階の食堂の半分ほどを俺たちが占拠して食事をする。


「お待たせいたしました」


 俺たちが席に着くと、すぐに食事が運ばれてきた。

 メニューはパンにスープに鶏肉のソテーにサラダというオーソドックスなものだ。

 味付けはまあまあだった。


 ただ味付けがちょっと濃かったのだけは気になったが、ここには若い人が多いので宿屋の人が若い人向けに濃い味付けにしてくれたのだと思う。


「これ、おいしいっすね」

「私、お酒飲むの初めてなんだけど、意外においしいですね」


 騎士団の子も白薔薇魔法団の子も満足してくれているようで何よりだ。

 食事が終わった後はこの後の打ち合わせだ。


「それで、俺たちはこれから魔物の村を討伐しに行くわけだが、何か質問はあるか」

「はい、先輩、いいですか」


 最初に質問してきたのはライラだった。


「魔物の村といってもどのくらいの魔物がいるとかの情報はないんですか」

「ないな。現地へ着いた後、偵察して調べる」

「偵察って、どうやるんですか」

「それは現地で教える。他には?」

「ホルスト先生、どのように攻撃するつもりですか」

「騎士団の子を前面に立て白薔薇魔法団の子が後方から攻撃するのが基本戦術だな」


 ……とこんな感じで会議は順調に進んで行ったのだった。

 新人の子たちに教えるのは大変だが、皆真面目に話を聞いてくれたので有意義な会議だったと思う。


★★★


 エリカです。

 今私たちは白薔薇魔法団の子たちと一緒ににお風呂に入っています。


 旦那様たち男性陣は男風呂です。


「さあ、弟子一号風呂に行くのである」

「……はい」


 騎士団の子たちやライトニングさんはともかく、ヴィクトリアさんのお兄さんとお風呂に入るのは嫌だったらしく渋々という感じで旦那様は男風呂へ行っていました。


 それで私たちの方ですが楽しくやっています。


「エリカ先輩、とてもお肌、きれいですね。子供がいる女性のものだと思えないです」

「ヴィクトリア先輩もお肌ツヤツヤで羨ましいです」

「リネット先輩も、きれいですね。お手入れ大変でしょう」


 そうやって白薔薇魔法団の女の子たちが私たちのお肌を洗ってくれます。


 彼女たち、意外に体を洗うのが上手いです。

 というのも、白薔薇魔法団では集団でお泊りして訓練することがあるらしくその時に先輩の体を後輩が洗ったりするらしいです。

 その時に洗い方が雑だと、


「ちょっと、あなた。人の体を洗う時はもっと優しく洗いなさい」


と、厳しく注意されるらしいのです。


 随分と体育会系な風習だと思いますが、まあそれを言っても仕方ないので、そんなものかと思うことにします。

 ということで、白薔薇魔法団の子たちは私たちの体を一生懸命洗ってくれるのでした。


 その一方で、ヴィクトリアのお母さんとおばあさんは湯船に浸かって冷酒で一杯やっています。


「熱いお湯に浸かりながら冷たいお酒を飲むのは最高ね」

「本当にね。実は体にあまり良くないという説もあるけど、一度この味を知ったら止めることなどできないわね」


 そんな風に言いあいながらぐびぐび飲んでいます。

 多分、この前温泉旅行に行ったときにお風呂でお酒を飲むということの味を覚えたのでしょう。

 それからというものお風呂にお酒を持ち込んでは飲んでいるみたいです


 しかし、本当においしそうですね。

 体を洗ったらさっそく私たちも合流せねば。

 そう思いました。


 後、ホルスターは白薔薇魔法団の女の子たちのおもちゃにされています。


「ホルスターちゃん、お姉ちゃんが洗ってあげるからこっちおいで」

「アー、ズルい!私もホルスターちゃん、洗いたい」

「私もホルスターちゃんみたいな小さい弟が欲しいな。うちの弟、今年から上級学校へ入って、少し生意気になったのよね」


 そうやって女の子たちにもみくちゃにされながら体を洗われています。

 あまりにも女の子に構われるので、顔を赤くして戸惑っていたりします。

 それを見ていると、我が子ながらかわいいと思ってしまいます。


「ううう……ホルスターちゃんを洗うのは銀の仕事なのに……」


 ちなみにその横では銀ちゃんが女の子たちにホルスターを取られたことに不満を抱いてぶつくさ言っています。


 まあ、ホルスターはいつも銀に任せていますからね。

 銀の不満はわかります。

 ホルスターも旦那様に似て良い男ですからね。

 私も将来は絶対にモテるようになると思っています。

 ちょっと親バカが入っているかもしれませんが、そういう確信はあります。

 本当、我が子ながら末恐ろしい子です。


 と、まあこんな感じで私たちはお風呂で楽しく過ごしました。

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