第13章~エルフの森の地脈を封印せよ!~

第263話~ヒッグス家定例合同演習~

今後は隔日で投稿していく予定なので応援よろしくお願いします。

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 今現在、エリカの実家に遊びに来ている。

 ここに来るといつも思うのだが、エリカのお父さんたちの歓待ぶりがすごい。


「ホルスト君たちはお客さんなんだから、ゆっくりしていいんだよ」


 今回もお父さんがそう言ってくれたので、屋敷中の使用人たちが上げ前据え膳で対応してくれる。


 今朝も、昨晩はエリカの日だったので一緒だったのだが、二人でぐっすり寝ていると、


「おはようございます。朝でございますよ」


と、ちゃんと屋敷のメイドさんが起こしに来てくれたものだ。


「ああ、おはよう」

「おはよう」


 起きた俺たちが挨拶すると、メイドさんはニコリと笑い、


「朝食の準備はできておりますので、お着替えが終わりましたらどうぞ降りてきてください。それでは、失礼いたします」


それだけ言い残すと、俺たちの寝室から出ていくのだった。


 その後、1階へ降りてご飯を食べに行くと、食堂には皆が勢ぞろいしていた。

 エリカの両親に、エリカの兄夫婦、ヴィクトリアにリネット。ヴィクトリアのお母さんとおばあさんに、ホルスターと銀。

 すでに全員が席に着いて話していた。


 それを見て、俺とエリカは自分たちが昨晩遊び過ぎていたことを悟り、ちょっと恥ずかしくなった。

 まあ、いい。今更ごまかしようが無いし、ここは平常心を発揮して、何事もなかったかのような態度で行くとしよう。


「「おはようございます」」


 俺たちもそう挨拶して席に着く。

 俺たちが席に着くと朝食が運ばれてくる。

 今日の朝食はパンにスクランブルエッグ、料理長特製のソーセージ、サラダにお茶というオーソドックスなメニューだった。


 うん、エリカの実家のソーセージはおいしいからな。

 久しぶりに食べることができるのでうれしい。


「あら、このソーセージおいしいわね」

「本当ね」


 ヴィクトリアのお母さんとおばあさんもソーセージを食べて満足なようだ。

 こうやって、俺たちは楽しく朝食を食べるのだった。


★★★


「ホルスター、お母さんたちはお仕事に出かけてくるからね。銀ちゃんとおうちでいい子にしていてね」

「うん、ママ」


 朝食を食べた後は、ホルスターと銀を屋敷に残して出かける。


 エリカは仕事と言っているが、それはそう言うのが分かりやすいからそう言っているだけで、正確には仕事ではない。


 お父さんたちにお世話になっているお礼に、今日軍で行われている合同訓練に講師として参加するのだ。

 別にこれでお金とかをもらおうとは思っていないので、性質的には仕事だが、実質はお父さんたちへの恩返しという感じでやっている。


 そんな感じで屋敷を出た俺たちは練兵場へと向かう。

 屋敷を出て、30分ほど馬車をガタゴトと走らせると練兵場に到着する。


「『火球』」

『水刃』」

「たああああ」

「うりゃああああ」


 俺たちが着いた時にはすでに訓練が始まっており、皆大きな声を出しながら訓練に励んでいた。

 それらの訓練を見ながら練兵場の片隅へ行き、そこへ馬車を停めた俺たちは歩いて目的地へ向かう。


「旦那様、まずはここからですよ」


 エリカに案内されて向かった先は。


「『小爆破』」

「『風刃』」


 女魔法使いだけで構成されたヒッグス家の精鋭部隊『白薔薇魔法団』の訓練場だった。


★★★


「あら、よく来てくれたわね」


 訓練場に着くと、エリカのお母さんが俺たちを出迎えてくれた。

 訓練場には部隊の隊長であるエリカのお母さんが先に来ていて訓練の指示をしていたのだ。


「みんな、挨拶しなさい」

「よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


 お母さんが白薔薇魔法団の子たちを整列させる。

 そして、お互いに挨拶を交わした後、指導を開始する。


 まず俺たちが魔法を実演してみせる。


「『天火』」

「『火矢』」

「『風刃』」

「『聖光』」


 俺、エリカ、ヴィクトリアのお母さん、ヴィクトリアが一斉に魔法を放って見せる。


 しかも一人一発ではなく、一気に同じ魔法を20発ずつ放って見せる。

 魔法を複数同時に放つのは実は結構難しい技術なので、できる人はあまりいない。

 優秀な人材が集められた白薔薇魔法団の子たちでもできる子は少数らしい。


 まあ、できる俺たちにしてもこのやり方は魔力の消費が激しいのでやるのはいざという時だけだけどね。


 それで、俺たちの魔法は見事にそろって着弾する。

 着弾と同時に、ドゴーンと大きな爆発音が発生する。


「おおおおおーー」


 それを見て、白薔薇魔法団の子たちが歓声の声をあげる。


「すごいです」

「さすがです」


 口々にそうやって褒めてくれる。

 褒められた方の俺たちは気恥ずかしくなった。


 実演が終わった後は、指導に入る。


「魔法の使用に一番大事なのは精神の集中ですよ」

「魔力の総量には個人差が大きいですけど、それでも頑張って魔法を使用し続ければ魔法の使用効率が上がって、魔法の使用回数が増えるのですよ。だから、普段の練習が大事ですよ」


 そうやって、エリカとヴィクトリアのお母さんが大まかに講演した後、個別的に指導に入る。

 白薔薇魔法団の子に実際に魔法を使ってもらった後、それを見て指導する。


「魔法を放つときに魔方式の展開がスムーズに行ってませんね。そういう場合は……」

「あなた、今魔力のコントロールが乱れていたわよ。それでは、魔法の威力が落ちちゃうわ。それを直すには、こういう訓練を……」


 みたいな感じで指導をしている。

 皆とても真剣に話を聞いていて、そこからも部隊の士気の高さがうかがえる。


「ヴィクトリア先生、その『精霊召喚』についてもっと詳しく教えてください」

「いいですよ。まず魔方式から教えますね」


 一方のヴィクトリアは、白薔薇魔法団の中でも回復担当の子たちに『精霊召喚』の魔法について教えている。


 まあ、回復担当の魔法使いの子って攻撃魔法が不得手な子が多いからな。

 その点、『精霊召喚』の魔法は、『僧侶の記憶』の中に収められていたことからもわかるように、回復役の子の方が得意な場合が多いからな。


 だから『精霊召喚』の魔法を身に着けて火力不足を少しでも補いたいのだろうと思う。


「と、こんな感じで魔法を使用すれば精霊を呼び出せます。それで、大事なのはここからです。『精霊召喚』を実際に使うにはその呼び出した精霊と契約をする必要があります。さもなければ、精霊は召喚者の言うことを聞きません。だから、『精霊召喚』の魔法で一番重要なのはこの契約作業です」

「それで、契約に一番大切なことって何ですか?」

「一番は相性ですね。術者と気の合わない精霊は絶対に契約してくれません。後は相手の精霊が出してきた条件をどれくらい飲めるかという点ですね」


 等々、回復役の子たちにきちんと指導してやっている。

 最近、ポカばかりやっていたヴィクトリアにしてはきちんとやれていると思う。

 もちろん回復役の子たちもヴィクトリアの話を熱心に聞いていい感じだと思う。


 ちなみに、これは蛇足だが、俺はヴィクトリアが精霊と契約する時にちょっとズルしたのを知っている。


 ヴィクトリアはこの魔法を身に着けるにあたって、個々の精霊たちと個別に契約するのでなく、最初にこの世界の精霊王を呼び出してまとめて契約したのだ。

 精霊王との契約がある以上、この世界の精霊たちはヴィクトリアとの契約を拒否できないのだ。


 まあ、効率的なやり方と言えばそうなのだが、精霊王と契約する時にちょっとだけズルをした。

 どういうことかというと、前提として、精霊王のさらに上の存在としてすべての世界の精霊たちを統括する存在である精霊神という存在がいるのだ。

 それで、ヴィクトリアは精霊王と契約する時にその精霊神の名を出したのだ。


 というのも、精霊神はヴィクトリアのおばあさんのアリスタの秘書をしていてヴィクトリアとも仲が良かったらしいのだ。

 精霊神とヴィクトリアの関係を知った精霊王が拒否するはずがなく、ヴィクトリアは精霊王と無事契約できたのだった。


 ズルと言えば確かにズルであるが、俺たち的にはヴィクトリアが役に立ってくれているので黙認している。


 なお、このことを知ったヴィクトリアのお母さんは呆れていたが、


「まあ、そのくらいで精霊神も怒ったりしないだろうし、別にいいか」


と、最後は苦笑いしていた。


 と、まあこんな感じで訓練は順調に進んで行くのだった。


 ……え?俺は何をしているのかって?

 俺は全体を眺めながらみんなの補助をしている。


 ……と言えば聞こえはいいが、要はほとんど何もしていない。いや、させてもらえない。

 というのも、エリカとヴィクトリアが俺と白薔薇魔法団の子たちをあまり接触させたくないようで、「次の『黒虎魔法団』の講習の時まで英気を養っていてください」と言われてしまったからだ。


 本当うちの嫁たちは監視が厳しい。

 別にここの子たちとどうこうなるわけがないというのに。

 まあ、それも俺に対する愛情がそれだけ深いということだから別に構わないけどね。


さて、そんなわけで暇だから次の講習の開始までのんびりと女の子たちが一生懸命訓練する様でも眺めていようと思う。


「おー、皆中々頑張っているな!」


 ということで、俺はそんなことを呟きながらゆっくりと女の子の訓練の様子を眺めていたわけなのであるが、こんな風に見ているだけでも嫁たちはさらに警戒してしまったらしく、この後、嫁たちに囲まれて愛情たっぷりのおもてなしを受ける事になるのであるが、それは次回のお話である。


 本当、俺って嫁たちに愛されて幸せだなと思う。

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