今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第257話~厳しい修行の日々と束の間の休暇の家族サービス そして、エルフの王様の依頼~
第257話~厳しい修行の日々と束の間の休暇の家族サービス そして、エルフの王様の依頼~
「『神化 火矢』」
エリカが極大化した魔法に『魔法使いの記憶』から取り出した神の力を少し混ぜて魔法を放つ。
しかし、今回はうまく行かなかったようで、折角放った魔法は目標に命中する前にプスッと消え去ってしまう。
「あら、エリカちゃんは失敗しちゃったわね。まあ、『神化』はさすがにすぐにできるようにはならないから、練習あるのみね」
エリカが失敗したのを見て、ヴィクトリアのお母さんがそう呟く。
なお『神化』とは、極大化された魔法に神器から供給される神の力を混ぜて魔法の威力を上げる手法だ。
極大化よりもさらに強力な魔法を使うことができるが、魔力と神気、異なる力を同時に使うのでさらに使用の難易度が上がる。
特に人間の場合、神気のコントロールなどしたことがないので尚更だ。
実は俺も『神属性魔法』に込める神気の量を調整することで使うことができる。
ただ、今まで使用する神気の量など意識したことがないので苦戦している。
もっとも、神気の使用に慣れているからといって必ずしもうまく行くわけではない。
「ふふふ、次はワタクシの番ですね。『神化 防御結界』……あれ?失敗しましたね」
今度はヴィクトリアが魔法を使ってみるが、やはりうまく行かない。
ヴィクトリアは俺たちと出会う前はバンバン神の力を使っていたはずなのだが、やはりうまく行かなかった。
まあ、ヴィクトリアの場合は神の力を自分の自堕落な生活を維持するためにしか使っていなかったからな。
急に魔法などの高度なことに使えと言われても、熟練度が足らないのでできないのだと思う。
それに神の力を使っていたと言っても、何も考えずに適当に使っていただけみたいなので、尚更できないのだと思う。
と、こんな風に3人仲良く『神化』の修業にいそしんでいるわけだが、俺にはもう一つ課題が与えられていた。
「どう?ホルスト君、『三魔法合成』は使えそう?」
「そうですね。二つなら余裕なんですが、三つとなると難易度が違い過ぎて難しいですね」
俺が取り組んでいるもう一つの課題。
それは『魔法合成』で三つの魔法を合成することだった。
「三つの魔法を合成できるようになると、格段に強力な攻撃を行えるようになるわよ」
とのことなので、頑張って挑戦している。
しかし、今の所一度も成功していない。
そのくらい難しいからだ。
まあ、練習あるのみだと思う。
「さあ、頑張るぞ!」
そうやって嫁たちと練習にいそしんでいると、ふとヴィクトリアのお母さんがホルスターと銀に魔法を教えているのが目に入った。
「それじゃあ、ホルスター君、やってみて」
「はい。『極大化 火矢』」
何といつの間にか『極大化』の訓練をしていた。
ホルスターの魔法はヴィクトリアのお母さんが用意した的に命中すると、炎を巻き上げながらあっという間に的を焼き尽くした。
エリカには劣るが、まぎれもなくそれは『極大化』された魔法だった。
「ホルスターちゃん、すごい!」
それを見て、銀がホルスターに近寄っていき、抱き着いてしわくちゃになるまで頭を撫でている。
「銀姉ちゃん、撫ですぎだよ」
一応思い切り撫でられて恥ずかしかったのか、ホルスターがそんな拒絶のセリフを言う。
しかし、口ではそう言うものの、体の方は全然嫌がっておらず、銀のなでなで攻撃に特に抵抗するような態度をとっておらず、むしろ歓迎しているようにさえ見えた。
うん、これがいわゆるイヤイヤ期というやつなのだろうか。
なんか違う気もするが。
後で、エリカに相談という所か。
それにしても、いつの間にか『極大化』まで使えるようになっているとか、我が子ながら凄いと思う。
と、こんな風にホルスターの方は順調そうなので、リネットの方を見る。
「つまり、この魔物は……」
「ふむ、ふむ」
リネットはエリカのばあちゃんから魔物に関する座学を受けていた。
結構真剣に聞いている。
こうやって魔物に関する知識を学ぶことはとても大事なことだ。
魔物に対する知識を持っていると、魔物に適切に対応することができるからだ。
だからリネットがこの方面で頑張ってくれると、俺たちとしては非常に助かるので、リネットには頑張ってもらうとしよう。
こんな感じで俺たちの無人島での訓練は順調に進んで行った。
★★★
このようにして厳しい修行をしている俺たちだが、休む時はゆっくり休むようにしている。
「旦那様、準備ができましたので出かけましょう」
「ああ、行こうか」
今日は家族全員で遊びに行く。
目的地は闘技場だ。
といっても、剣闘士の試合の見物ではない。
今日行われるのは子供向けのイベントだ。
なんでも子供向けの劇をやったり、じゃんけん大会やくじ引き大会などがあるそうだ。
ただ、完全に子供向けというわけでもなく、エール酒の飲み放題などもやっているらしく、親子で楽しめるイベントとなっているらしかった。
「さて、行くぞ!」
ということで、俺たちは胸をワクワクさせながらイベントに向かうのだった。
★★★
「ホルスターちゃん、この劇面白いね」
「うん、銀姉ちゃん面白いね」
ホルスターと銀が劇を見て喜んでいる。
それを俺とエリカがほほえましく見ている。
二人が喜んでいるのを見ていると俺たちもうれしい。
俺たちの横ではヴィクトリアも劇を見ている。
売店で買ってきたポップコーンとジュースをぼりぼり食べながら、割と真剣に見ている。
まあヴィクトリアって劇を見るのが好きだからな。
俺との初デートでも劇へ行ったし、今でも二人っきりでデートへ行く時なんかは、「劇へ行きたいですね」と、せがんで来る。
ちなみに今日の劇の内容は、人魚のお話だ。
昔、勇者に命を助けられた人魚のお姫様が、勇者を海底の王宮に招待して歓迎するという話だ。
「その勇者さん、地上に帰って宝箱を開けたらおじいさんになったり、人魚のお姫様、泡になって消えちゃったりするんでしょうか」
劇を見ながらヴィクトリアがそんなことを呟いていたが、それはどこの話だ。
この話はその後は人魚の王様に頼まれた勇者が海底の魔物を倒すという話だぞ。
割と有名な話だから、誰でも知っていると思うぞ。
ただ、それはそれで面白い作品を作れそうな気がするから別に構わないが。
それと、ヴィクトリアのお母さんとおばあさん、リネットはエールの飲み放題へ行っている。
「リネットちゃん、私たちと一緒に飲みましょう」
「あの~、あまりアタシお酒飲めないんですけど」
「大丈夫よ~う。子供向けにソフトドリンクの飲み放題もあるから」
そうやって渋るリネットを強引に連れて行ったのであった。
多分、今頃はお酒を飲みながら別売りのソーセージでもつまんでいるんじゃないかと思う。
俺たちも劇やその他のイベントを楽しんだら、そっちの方へ行こうと思う。
と、こんな風に俺たちはイベントを楽しんでいる。
★★★
劇が終わった後はじゃんけん大会とくじ引き大会へ行った。
このイベントは有料参加型で、お金を払うと参加できる仕組みだ。
「さあ、行ってきな」
「「はい」」
俺がお金を払った後、そうやってホルスターと銀を送り出す。
二人は走って他の子供たちが集まっている会場へ向かって行く。
まるで背中に羽でも生えているかのような軽やかな足取りで、その楽しそうな後姿を見ているだけで、二人がとても楽しみにしていることが分かる。
「あーん。ワタクシも参加したかったです」
その二人の後姿をヴィクトリアが羨ましそうに見ている。
じゃんけん大会とくじ引き大会に参加できるのは成人していない者だけだ。
だから当然ヴィクトリアは参加できない。
というか、大会の賞品ってお菓子やおもちゃだぞ。
いい大人が参加したがるんじゃない!
俺がそう言っても、
「だって、楽しそうなんですもの」
と、ヴィクトリアは中々あきらめない。
まあ、確かに会場の子供たちは楽しそうにしているから、その気持ちはわかる。
だから、こう言ってやる。
「お前ら、今から3人でじゃんけん大会をするぞ」
「旦那様?」
「本当ですか?」
俺の言葉を聞いて二人の表情が変わる。エリカは驚いた顔、ヴィクトリアはうれしそうな顔になる。
ヴィクトリアは自分も遊べると思って喜んでいるのだろうが、エリカは自分が誘われると思っていなかったのと大勢の人の前でじゃんけんをする気恥ずかしさで驚いているのだと思う。
しかし、見損なうなよ。俺は嫁さんをのけ者にしたりするような人間ではない。
誘うのなら、この場にいる二人とも誘うぞ。
だから俺は嫁さんたちの表情の変化に構わず続ける。
「俺とじゃんけんして勝てたら、そこの屋台でアイスを買ってやる。それじゃあ、始めるぞ」
少々強引にじゃんけんを始める。
「「「ジャンケン、ポン」」」
「くそ!負けたか!」
あっさりと俺は負けてしまった。
速攻で二人を連れてアイスの屋台に行く。
「好きなものを頼め」
「それでは、ワタクシはストロベリーで」
「えーと、私はバニラで」
「俺はメロン味がいいな」
「毎度ありがとうございます」
俺は3つ分のアイスのお金を店の主人に払うと、それをもって会場の方へ戻り再びホルスターたちの方を見る。
「ホルスターちゃん、頑張って!」
「うん」
見ると、銀が何やらホルスターを応援していた。
どうやらじゃんけん大会で、銀は早々に敗退したらしいが、ホルスターはいいところまで進んでいるらしかった。
あと数回勝てば、何か賞品をもらえるみたいだった。
「ホルスター、頑張れ!」
無論、俺も息子を応援する。
そんな感じで、俺もじゃんけん大会を楽しんだのであった。
★★★
夕方までイベントを楽しんだ俺たちは、ヒッグス家の商館に帰った。
「もう、飲めないです」
「お母さんも、眠いわ」
「おばあちゃんもすぐに横になりたい気分ね」
「もう、3人ともだから飲み過ぎだって言ったのに」
じゃんけん大会とくじ引き大会が終わった後は、エールの飲み放題の会場に言ってしこたまエールを飲んだ。
主にエリカとヴィクトリアが。
酒豪のエリカはしこたま飲んでも表情一つ変えず、家に帰る段階になってもケロッとしていたが、それに付き合って飲んだヴィクトリアは酔いつぶれた。
来て早々エール飲み放題会場で飲みまくっていたヴィクトリアのお母さんとおばあさんと3人仲良く酔いつぶれた。
その3人を俺とリネットの二人で担いで帰って来た。
本当、飲むときは人への迷惑も考えて飲んでほしいものだと思う。
「失礼します」
さて、酔いつぶれた3人を部屋へ寝かせた後、リビングでのんびりしていると、ネイアさんがやって来た。
何か深刻そうな顔をしているので、異常事態があったのだと思う。
「何かあったの?」
「はい。実は今しがた王宮から使者の方が見えられて、ホルスト様に依頼したい件があるから明日にでも是非王宮の方へ来て欲しいとのことでした」
「そうなの」
「はい。それで、どうしますか」
「そうだな。お前らはどうしたらいいと思う?」
俺はエリカとリネットの顔を見る。
「王様のご依頼でしたら受けてもいいのではないですか」
「そうだよ。少なくとも話は聞くべきだと思うよ」
どうやら嫁たちは王様の依頼を受けろという意見らしい。
「わかった、明日にでも訪問させてもらうと伝えてくれないか」
「はい、畏まりました」
そう言うと、ネイアさんは部屋を出て行った。
しかし、エルフの王様直々の依頼か。
一体どんな依頼なのだろうか。
きっと難しい依頼なのだろうが、同時にやりがいと報酬の大きさにも期待できた。
そのことを考えるだけで、体の内側から妙な高揚感が湧き出てきて、その日は寝られなかったくらいだ。
さて、エルフの王様直々の依頼。
話を聞くのが本当に楽しみである。
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