今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第252話~月旅行 闇のクレーター 前編 その闇の正体は『漆黒の霧』~
第252話~月旅行 闇のクレーター 前編 その闇の正体は『漆黒の霧』~
『闇の半精霊』との戦いの後、2日ほどで月の森を抜けた。
あの戦いの後、森の中では大した戦闘も起こらずに、比較的簡単に抜けることができた。
森を抜けた後は最初の草原と似たような草原が続いた。
出てくる敵も最初の草原と大して変わらない。
前に見たウサギや蛇や牛の魔物が出て来るだけだ。
ただ、一つ異なる点があるとしたら。
「さあ、目的地まであと一息だから頑張りましょうね」
ヴィクトリアのおばあさんがそんなことを言い始めたことだ。
どうやら目的地は近いようだった。
と、ここで俺は思い出す。
そう言えば目的地がどこかまだ聞いていなかったな、と。
今までは聞いてもはぐらかされて教えてくれなかったのだ。
だが、ここまで来たのならそろそろ教えてくれるのではないかと思い、聞いてみることにした。
「それで、ヴィクトリアのおばあさん。そろそろ目的地がどこかくらいは教えてくださいよ」
「そうねえ。そろそろ教えてもいい頃ね。……私たちの目的地。それはね」
「それは?」
「『闇のクレーター』よ」
俺の質問にヴィクトリアのおばあさんはそう答えたのだった。
『闇のクレーター』。どうやらそこが俺たちの今回の旅の目的地の様だった。
★★★
闇のクレーターは月の森を抜けてから馬車で一日ほど行ったところにあった。
「うわあ、本当に真っ暗だね。闇のクレーターとはよく言ったものだね」
リネットが闇のクレーターを覗き込みながらそんなことを言う。
確かにリネットの言う通り、闇のクレーターは闇の世界だった。
ヴィクトリアのばあちゃんによると、そもそもクレーターとは大昔に天から降って来た石がぶつかってできた大穴だということだ。
普通のクレーターなら、太陽の光が当たればそこの方もちゃんと見えるのだそうだが、ここのクレーターはいくら光がさしても底が見えたりしない。
それどころか、数メートル先の岸壁の姿さえも見ることができない。
本当の闇の世界なのだ。
「それ」
そんな闇の世界に俺は一個石を投げ入れてみる。
もしかして、石が底に当たってその反射音が聞こえてきたりしないかと思ったからだ。
「やっぱりダメか」
しかし、俺の期待と裏腹に、待てども待てども音は聞こえてこなかった。
これが何を意味するかというと、ここのクレーターは音が聞こえてこないほど底が深いか、それとも何か聞こえてこない別の理由があるかのどちらかだった。
どうせならそこが深いという理由であってほしかった。
なぜなら、その理由であってくれた方が俺的には楽だからだ。
しかしそうはいかない気がする。
というのも、ヴィクトリアのお母さんがそんな簡単な修行を俺たちにさせるとは思えないからだ。
ただ、いつまでも考えている暇はない。
「よし、皆行くぞ!準備しろ!」
「「「はい」」」
そう言うと、嫁たちはクレーターの中へ入る準備をするのだった。
★★★
「それじゃあ、私はホルスター君と銀ちゃんと一緒に馬車で待機しているからね。気を付けて行ってきなさい」
「ママたち、気を付けてね」
「皆様、ご無事をお祈りしています」
闇のクレーターに入って行くに際して、ホルスターと銀は馬車で待つことになった。
ヴィクトリアのお母さんが二人の面倒を見ていてくれるそうなので、それなら俺たちは安心して闇のクレーターの中へ入って行けると思った。
ということで、闇のクレーターの中には、俺と嫁たち、ヴィクトリアのおばあさんの5人で入って行くことになる。
「それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい。……あ、そうそう一つ言い忘れていることがあったわ」
いざ入って行こうとしたとき、ヴィクトリアのお母さんが何か言っていないことがあったのか、俺たちを呼び止めた。
「何でしょうか?」
「今までホルスト君たちには、魔法合成と合体魔法の使用を禁止していたでしょう?それを今から解禁するから、自由に使っていいわよ」
「え?」
ヴィクトリアのお母さんのその言葉を聞いて俺は嫌な予感がした。
確かにこの二つはお母さんから禁止されていた。
理由は、この二つは強力過ぎて使用すると修行にならないからだそうだ。
それが解禁されるということは……。
これから先は強力な敵がいるという可能性が高いということか!
俺はちょっと不安になった。
だが、だとしてもここで逃げ出すわけにはいかない。
俺は気を引き締める。
「わかりました。全力で頑張ります」
「ええ、頑張ってね」
最後にお母さんにそう言われると、俺たちには闇のクレーターへと入って行った。
★★★
「『重力操作』」
俺が魔法を使うと、嫁たちが周囲に集まってくる。
そして、そのまま4人で一塊になって闇のクレーターの底へ目掛けて降りていく。
ちなみに、ヴィクトリアのばあちゃんは俺たちとは一緒にならず、一人で降りていくとの話だ。
「『永続光』」
穴の中はとても暗かったので、エリカが魔法を使って周囲照らし出す。
しかし、それも俺たちの周囲だけの話で、5メートルも離れるとそこから先へは光が届かなくなる。
周囲を見渡しても闇があるだけで、見えるものと言ったら、薄っすらと光を放っているヴィクトリアのばあちゃんくらいだ。
「旦那様、ここ本当に暗いですね」
あまりにも先が見渡せないせいだろう。
エリカが不安そうな顔で俺にくっついてくる。
というか、エリカだけではない。
「ワタクシもなんか怖いです」
「この闇を見ていると、何だか飲み込まれそうな気分になるね」
ヴィクトリアとリネットも不安を口にしながら、俺にくっついてくる。
全員体が少し震えているので、今のこの状況を不安に思っているようだ。
そんな嫁たちに俺は声をかけてやる。
「みんな、そんなに不安がるなよ。この俺がついているからさ」
「「「はい」」」
俺が嫁たちにそう宣言すると、嫁たちから元気な返事が返って来た。
どうやら俺の言葉で立ち直ってくれたようだ。
俺は俺の言葉が嫁たちに届いてくれたことに満足した。
と、こんな感じで俺たちは闇のクレーターの中を進んで行った。
★★★
「ヴィクトリアちゃん、今すぐ『防御結界』の魔法を使いなさい」
闇のクレーターの中を進んでいると、突然ヴィクトリアのばあちゃんがそんなことを言い始めた。
「おばあ様?」
「いいから!早く!」
「はい。『極大化 防御結界』」
おばあさんの指示に従い、ヴィクトリアが防御魔法を張る。
すると。
「邪気?」
突然、言いようのない邪気を感じる。
それと同時に、ゴンという防御結界をたたく激しい音が聞こえてくる。
「なんだ!」
俺は音の方を見てみる。すると、驚愕の事実に気が付く。
「闇が……闇が襲ってきている!」
どうやら俺たちの周囲の闇が俺たちに襲い掛かってきているようだった。
ヴィクトリアのばあちゃんの方を見ると、彼女も闇に襲われているようだ。
もっとも、おばあさんも周囲に結界を張って軽くいなしているようで問題はなさそうだ。
それはともかく、おばあさんには聞かなければならないことがある。
「ヴィクトリアのおばあさん、この闇は一体何ですか?」
「この闇は、ね。あなたたちがこの前戦った『闇の小精霊』の集合体『漆黒の霧』よ」
「『漆黒の霧』?」
「そうよ。そして、この『漆黒の霧』を倒すことがあなたたちに与えられた試練よ」
『漆黒の霧』を倒すことが与えられた試練。
そう聞いた俺たちは武器を構え、戦いに備えるのだった。
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