第230話~魔樹を救え! 前編~

「旦那様、前方から物凄い邪気を感じます」


 魔樹への街道を進んでいると、エリカがそんなことを言ってきた。


 第三の関門を突破してから2日。

 とうとう魔樹へと到着したようだ。


「みんな、ようやく魔樹へと到着したようだぞ」


 そう馬車の中へ声をかけると、他のメンバーが降りてくる。

 全員が降りたところで、声をかける。


「ようやく3つの関門を突破し、魔樹へとたどり着くことができた。これも、皆の力があってこそだ。ありがとう」


 そこまで言うと、俺はお礼の意味を込めて皆にぺこりと頭を下げる。


「だけれども、本番はこれからだ。リンドブル様と約束した通りこれから魔樹を俺たちは救わなければならない。だから、これからも皆の力を貸してほしい」

「「「「もちろんです」」」」


 皆の返事を聞いて俺は頷く。


「よし、それじゃあ、後は打ち合わせ通りに行くぞ。俺とエリカとヴィクトリアとリネットはこのまま魔樹の所へ向かう」

「「「はい」」」

「銀はここで待機して、パトリックと馬車を守ってくれ」

「了解です。ホルスト様」

「よし、それでは行動開始!」


 そうやって最終の打ち合わせを済ませると、銀を除いた4人が魔樹の元へと進んでいく。


★★★


 と、魔樹に行く前にするやっておくことがある。


「ヴィクトリア、頼む」

「はい、ラジャーです」


 俺がそうやって頼むと、ヴィクトリアが嬉しそうに俺に近づいてくる。

 そして、俺の頬にブチュッとキスをする。

 しばらくすると、俺の体がポッと光り出す。


 『シンイショウカンプログラムヲキドウシマス』


 いつもの声が俺の頭の中に響いてきて、神意召喚の力が発動する。

 俺は早速自分の力を確認してみる。


『神属性魔法』

『神強化+4』

『天火+4』

『天凍+4』

『天雷+4』

『天爆+4』

『天土+4』

『天風+4』

『天罰+3』

『重力操作+3』

『魔法合成+2』

『地脈操作+2』

『空間操作+3』

『世界の知識+2』


 と、こんな感じだった。

 前回ヴァンパイアと戦った時と比べて、ほんの少し熟練度が上がっている。


 後、『天罰』とかいうのが増えている。

 しかも今現在+3なので、通常時は+2ということだ。

 使ったことのない魔法の熟練度がこれだけ高いのは初めてだが、多分、ジャスティスとの修行や普段の絶え間ない修行の成果が出ている、のだと思うことにする。


 ちなみにこの魔法の効果をヴィクトリアに聞いてみると、


「それは聖属性の攻撃魔法ですね」


と、言われた。


 さて、これて新たな力も得たことだし、魔樹と戦うことにしよう。


★★★


「あれが魔樹か」


 それからしばらくして魔樹の元へたどり着いた俺たちは、魔樹を見て驚くことになった。


 何せとにかくでかいのだ。

 ダークエルフの王宮は巨木をくり抜いて造った建物だったが、あれの十倍ほどはでかかった。

 多分、木の幹の太さは直径で1キロ、いや2キロ近くあるのではないかと思う。

 その上、高さも300メートルくらいはあると思う。


 正直、ここまで近づくまでこの木の存在に気が付かなかったのが不思議なくらいだ。

 その点を後でヴィクトリアに聞いてみると。


「神木って、幻覚の魔法を使って自分の存在を隠すことがあるんですよね」


 とのことだった。


 それはともかく、こんな木どうやって破壊すればいいの?と思ったが、ここまで来たらやるしかない。 

 ということで、とりあえず魔樹について調べてみる。


「『世界の知識』」


 俺の魔法で魔樹について情報を探ってみると。


 『ダークエルフの神木』

 太陽神リンドブルがダークエルフたちに与えた神木。

 ダークエルフたちに豊穣を与えてくれる。

 ただし、エルフたちには特に何も与えてくれないので、エルフたちからはやっかみも込めて『魔樹』と呼ばれている。

 現在は暴走状態であり、ダークエルフに呪いを振りまく存在となっている。

 これを止めるには神木のコアを破壊する必要がある。

 なお、倒した後、コアの残骸から神木の種子を回収できる。

 種子はダークエルフの王宮の庭へ植えてある程度育ってから、この場所に植え直すとよい。


 ……と、こんな情報が俺の頭の中に浮かんできた。


 魔樹の概要から倒し方、種子の育て方まで解説してくれていて、いい情報が得られたと思う。

 ということで、情報を得たので、エリカに相談してみる。


「なあ、エリカ。この木を倒すには木のコアを破壊すればいいそうなんだが、コアの位置ってわかるか?」

「コアですか?少々お待ちください。……あ、これはちょっと面倒くさそうですね」

「面倒くさい?どんな風に?」

「コアは木の中心部、すなわち一番防御力の高い場所にあります。この大きい木のど真ん中まで攻撃を届けるのは、中々難しいと思います」

「なるほど」


 エリカの説明に俺は頷く。

 確かにこの木のど真ん中にコアがあるというのなら、そこを攻撃するのは骨が折れると思う。


 だけど、俺たちにはやるという選択肢しかないのだ。

 だから、俺はゆっくりと愛剣クリーガを抜き、こう言う。


「確かにコアを破壊するのは難しいかもしれない。しかし、それでも全力でやるしか俺たちに道はない。そうだろ?」

「「「はい、その通りです」」」


 俺の問いかけに対して、嫁たちからいい返事が返ってきた。

 さて、これでみんなの決意も固まったことだし、魔樹と戦うことにする。


★★★


「『神強化』」

「『筋力強化』」

「『敏捷強化』」


 魔樹と戦う前に強化魔法をかけて万全の体制を整える。


「『精霊召喚 火の精霊』」


 ヴィクトリアも精霊を呼び出して、準備を整える。


 さて、準備も整ったことだし、攻撃を始めることにする。

 早速覚えたての魔法を使わせてもらう。


「『魔法合成 『天火』と『天罰』の合成魔法、『神の業火』」


 俺の手のひらに魔力が集中し、聖なる輝きを放つ炎が出現する。

 俺はそれを暴走して呪いに染まった魔樹へ向けて放つ。


「行けえええええ!」


 俺の魔法はまっすぐに魔樹へと向かって行き、魔樹に命中するとドゴオオンと大爆発を起こした。

 こうして、俺たちと魔樹との戦闘が始まったのだった。

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