今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第229話~魔樹へと続く道 第三の関門 勇気を示せ!~
第229話~魔樹へと続く道 第三の関門 勇気を示せ!~
第二の関門を突破してから二日経った。
第三の関門まであと少しだと思うが、実際のところどうだかよくわからなかった。
「ホルストさん、敵ですよ」
それでも相変わらず敵は出てくる。
ヴィクトリアの言葉で俺が迎撃に出る。
「大アゲハ蝶か」
出てきた敵は大アゲハ蝶という敵だった。
大アゲハ蝶はアゲハ蝶が魔物化した存在といわれており、人の倍ほどの大きさがある。
その鱗粉は催淫効果があると言われている。
これを浴びた人間は味方を敵と誤認し、同士討ちを始めるという。
「ヴィクトリア」
「は~い。『精神防御』」
ということで、ヴィクトリアに精神を防御する魔法をかけてもらい攻撃に移る。
鱗粉にさえ気を付ければ、大アゲハ蝶は怖い敵ではない。
近づいてくる俺に大アゲハ蝶が鱗粉を放ってくるが、ヴィクトリアの魔法のおかげで効果はない。
「たあああ」
俺は一気に大アゲハ蝶に近づき、頭から胴体を真っ二つにしてやる。
ズバッと真っ二つにされた大アゲハ蝶は地面にそのまま落ちていく。
「ヴィクトリア」
「は~い。今、行きます」
それを見て俺はヴィクトリアを呼ぶ。
もちろん、大アゲハ蝶を回収するためだ。
大アゲハ蝶の羽についている鱗粉は混乱の魔法薬の材料として高く売れるからだ。
さて、また1匹敵を片付けたことだし、移動を再開するとしよう。
★★★
「ホルストさん。先行している土の精霊の報告によると、この先に何かあるようですよ」
大アゲハ蝶を倒してしばらくすると、ヴィクトリアがそう報告してきた。
どうやらようやく第三の関門へ来たようだ。
「おい、着いたようだぞ」
俺が馬車の中へ声をかけると、ぞろぞろとエリカたちが出てくる。
「旦那様、着きましたか?」
「みたいだぞ。土の精霊がそう言っているって」
「左様ですか。まあ、とりあえず近づいてみましょうか」
「そうだな」
ここでグチグチ言っていても仕方がないので、第三の関門へ近づいていく。
すると。
「門だね」
今までの2か所と同様にそこには門があった。
「ヴィクトリア、頼むよ」
「ラジャーです」
俺はヴィクトリアを伴って門へと近づいていく。
そして2人で例の文字がないかを確認する。
「あ、ホルストさん。あれではないですか?」
ヴィクトリアが門の上の方を指さす。
俺もそちらを見てみると、確かに神代文字みたいだった。
「ヴィクトリア、読んでくれよ」
「ラジャーです。えーとですね。Show courage.”勇気を示せ”って書いていますね」
勇気を示せ、か。
どういう意味だろうか。
ここもヴィクトリアのじいちゃんが作ったものだろうから、前の2つと同様に単純な意味のような気がする。
まあ、いいや。
ヴィクトリアの家族のやったことだ。
あまり深く考えると深みにはまるような気がする。
ここは単純に行こう。
俺は門を開けた。
★★★
「穴ですね」
「穴だね」
ヴィクトリアとリネットが目の前にある大きい穴を見て、コントのようにやりあっている。
第三の関門の門をくぐった先には大きな穴があった。
穴は幅10メートルくらいの大きさがあり、底はどこまでも深く底が見えない。
穴の真ん中くらいには橋が架かっていた痕跡が残っており、ロープが掛けられていたであろう杭の跡とロープの残骸が残っていた。
「ここはこの穴を越えて行けってことなのかな」
「多分、そうだと思います」
「それって、勇気と関係あるの?」
「さあ、どうなのでしょうか」
俺の問いかけにエリカが首をかしげる。
俺もエリカと同じ思いだ。
どう考えても”勇気を示せ”という言葉と試練の内容があっていないからだ。
なんか納得がいかない気がしたが、今はそんなことで悩んでいる時ではない。
何とかしてこの穴を越えなければならない。
俺とリネットだけなら全力でジャンプすれば何とか飛び越えられるだろう。
ただ、それだと他のメンバーや馬車を連れて行けない。
俺は頭をフル回転させて考えてみる。
そして、ある結論を導き出す。
「そうだ!『重力操作』だ」
この程度の穴なら重力操作の魔法で楽に飛び越えられることに気が付いた。
「みんな、こっち来い」
すぐにみんなを俺の側に呼び寄せ、
「『重力操作』」
魔法を行使する。
だが。
「あれ?うまく魔法がかからないな」
なぜかうまく魔法がかからなかった。
「どうやら、ここはワタクシのおじい様の力によって魔法が使えなくなっているようですよ」
俺の様子を見て、ヴィクトリアがそんなことを言う。
そうなのか?
まあ、試練ということだからそういうこともあるのだろうと思った。
しかし、困ったことになった。
これでこの穴を越える方法がなくなってしまったからだ。
★★★
「さて、どうしようか」
俺は皆と相談する。
「ロープ付きの矢を向こう側の杭まで飛ばして、ロープを渡らせてその上を渡るとかはどうかな」
「それだと馬車が渡れないし、ヴィクトリアあたりがロープから落っこちそうだ」
「ホルストさん、それちょっとワタクシのことをバカにしすぎではないですか?」
「ほう。それじゃあ、お前は一人で細いロープを歩いて渡れるのか?」
「……ごめんなさい。やっぱり無理です」
しかし、中々いいアイデアがわいてこない。
しばらくそうやって実りのない相談をしていると。
「そうです!」
ヴィクトリアが突然大きな声を上げた。
こいつはいつもいきなりだな。
そう思ったが、とりあえず話を聞くことにする。
「何だ。この問題を解決する手段でも思いついたのか?」
「はい。ワタクシ、一つ思いついたことがあります」
「ほう、なんだ」
「実は、ワタクシのおじい様って映画見るのが好きなんですよね」
「映画?映画ってなんだ」
「映画とは、まあ簡単に言えば劇を手軽に見られるようにしたものです」
何だ、それは?
よくわからないがそういうのがあるのか。
まあ、いい。
「それで、その映画がどうしたんだ」
「実は昔、おじい様と一緒に見た映画の中ににこんなシーンがあったのです。その主人公は遺跡の中でここのように何もない穴のある部屋に来たのです。それで、そこには石碑があって、”勇気を示せ”と書かれてあったのです」
「へえ、それは……今と同じ状況だな」
つまり、その映画とやらの内容に解決策があるということか。
「それで、そいつはどうしたんだ」
「はい、勇気をもってその穴に足を踏み入れたのです。するとそこには見えない床がありまして、主人公は無事に向こう側に渡れたというわけです」
「見えない床か」
なるほどそういうことか。
俺は橋の残骸のあった所に接近してみる。
そして、地面の土をつかんで穴へ向かって投げてみる。
すると。
「お、ヴィクトリアの言う通り、確かに見えない床があるみたいだな」
俺が投げた土が穴の空中に浮かんでいた。
どうやらそこのところに見えない床があるようだ。
俺はさらに大量の土を見えない床の上にぶちまけてみる。
「うん、これだけの広さがあるなら、馬車も十分に渡ることができるな」
見えない床は馬車が渡るのに十分な広さがあるようだった。
「よし、それじゃあ渡るぞ」
「「「「はい」」」」
こうして第三の関門を俺たちは突破することができたのだった。
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