今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第224話~ダークエルフの王都ダークパレス~
第224話~ダークエルフの王都ダークパレス~
ダークエルフの王都に着いた。
ダークパレスとかいう名前らしい。
なんか魔王の居城みたいな名前だが、まあどういう名前を名乗ろうと彼らの勝手なので別に構わないけどね。
「それにしても噂通りですね。ここでは木の上に家が建っているんですね」
ヴィクトリアの言う通りだった。
この町では木の上に家が建っているのだ。
まさにウィンドウの町の博物館で聞いてきた通りの光景だった。
それに町といっても、木がそこら中に生えている関係で、郊外の村のように家があちこちにばらばらに建っていて、あまり町に来たという感じがしない場所だった。
何というか、町というよりも大きな村に来たという感じだった。
それでも町は一応柵で囲まれていて、入り口には門番もいた。
「止まれ!何者だ!」
もちろん門番は俺たちを制止してきたが、
「俺たちはエルフ王の依頼でダークエルフの王に会いに来た。通してくれないか?」
『エルフの証』を見せながらそう言うと、あっさり通してくれた。
それにしても、と思う。
さっきから町の人たちの反応が冷たい気がする。
町の住人のほとんどすべてがダークエルフなわけだが、彼らは俺たちを見ると、こそこそと建物の陰に隠れてこう噂する。
「あれって人間じゃないか」
「そうだ!人間に違いない」
「人間とかかわると、リンドブル様の怒りを買うというぞ。そう神官長様がおっしゃっておられた。本当に恐ろしい」
等々言われている。明らかに好意を持っていない言われ方だった。
ただ、それは仕方がないのかなとも思う。
何せ、彼らは人間どころかエルフとも交流がないのだから。
これだけ閉鎖的だと、排他的になるのも無理はないのかと思う。
それでも気になったのは、リンドブルという発言だ。
リンドブルは太陽の神で、ダークエルフが信仰対象になっていると聞く。
孫であるヴィクトリアの話によると、とても優しくて誰にでも親しげに接してくるらしかった。
だから、人間とかかわるとリンドブルの怒りを買うというダークエルフの言葉の意味がよくわからなかった。
リンドブルがヴィクトリアの言う通りの神だったら、そんな神託をするとは思えないからだ。
まあ、それはともかく、今はダークエルフの王に会うことを優先しよう。
★★★
「うむ、わざわざの訪問、ご苦労である」
30分後。俺たちはダークエルフの王と謁見していた。
ここの謁見室はそんなに広くなかった。
他の国のと比べると7割くらいであろうか。
というのも、ダークエルフの王宮は1本の超巨大な木をくり抜いて造られている。
だからおのずと広さに限界があり、謁見の間もその制限を受けてほどほどの広さのものになっているというわけだ。
それはそれとして、今はダークエルフの王との謁見中だ。
王が俺たちにこう聞いてくる。
「して、そなたらは何用でここまで参ったのだ」
「実は今、エルフの王が病気で臥せっておりまして。それで原因を探ってみたところどうやらそちらで管理している魔樹の呪いのせいではないかという話になり、真相を確かめるためにこうして参ったわけでございます」
「ほう、エルフの王も病に伏せっておるというのか」
俺の言葉を受け、ダークエルフの王はそう発言した。
エルフの王、も?
どういう意味だろうと俺は思った。
「それはどういう意味でしょうか」
「実は、な。3か月ほど前に突然魔樹、我々は神木と呼んでいるが、それが突然暴走したのだ」
「暴走ですか」
「うむ、その通りだ。そして私は暴走した神木を抑えようと太陽の神殿で儀式を行ったのだ。ところが、儀式はうまく行かず、私も神木に呪われることになったのだ」
「そうだったのですか。それで体の方は大丈夫なのですか」
「今のところは軽く咳をするくらいで済んでいる。我らは神木を信仰しているだけあって神木の呪いに対して耐性を持っているのだ。だが、将来どうなるかはわからん」
そう言うエルフの王はどこか辛そうだった。
軽く咳とは言って強がっているが、実は病状は結構重いのではないかと思う。
「それで、エルフ王の病気の原因が神木のためだとこうやって分かったわけだが、それを知ったお前たちはどうするつもりなのだ」
「我々の調査結果によると、呪いを解くには魔樹もとい神木を破壊するしかないと出ています」
「しかし、あれはダークエルフの……」
「神木がダークエルフにとって重要なものだというのはわかっております。しかし、聖なるものでも暴走して呪いを振りまくようになっては、いけません。現に王様にも呪いを振りまいているわけですし。その対象がダークエルフ全体にならないと、誰が断言できるでしょうか」
「うむ、そう言われると確かにな。やはり、民のためにも神木は倒すしか道はないのか……」
「なりませんぞ~」
王が一つの決断をしようとしたとき、そう言いながら誰かが大声で謁見の間に駆け込んできた。
★★★
「太陽の神殿の神官長様。今、王は謁見中ですぞ。許可無く入ってはいけません」
護衛の兵士が『太陽の神殿の神官長』とかいう乱入者の侵入を阻止しようするが、
「うるさい!今は神木の一大事である!黙っておれ!」
神官長はそう言いながら無理矢理入って来た。
入ってくると、神官長は俺たちと王の間に入ってきて、強引に王へ話しかける。
「王よ。なぜどこの馬の骨とも知れぬ人間の話を聞いて、神木を破壊しようとしているのですか」
「しかし、このままでは民に被害が……」
「そのようなことになるはずがございません。私が以前に進言した通り、神木が暴走したのはエルフの王の仕業に違いないのです」
ここまで話を聞いたところで、俺はこの神官長という男は何を言っているのだと思った。
ちょっとこの男を探ってみる。
神官長は頭に白いものが大分混じった高齢のダークエルフで、結構太っていて狡猾そうな顔をしていた。
同じ神官長でも、ネイアさんとはかなり違うな、と思った。
外見の他に中身も探ってみることにする。
生命エネルギーの動きを探ってみる。
すると、王に向かって何かしゃべる時に生命エネルギーの波動が少し乱れているのが確認できた。
これは虚勢を張っているか、嘘をついている時の反応だ。
つまり、こいつは信用できないやつだということだ。
それに、何というか、以前にかかわったことがあるフソウ皇国の大臣と同じ臭いがする。
要するに絶対に仲良くできない人間ってことだ。
以上が俺の評価だが、まあ、ここは焦らず二人の会話を見守ることにする。
「それは本当の話なのか?聞くところによると、エルフの王も神木の呪いにかかって病に臥せっているというではないか」
「それはエルフの王の策略に違いありません。そうやってうまいこと言って、我らから神木を奪おうとしているに違いありません。見てください!この者たちの目を!邪悪に染まった穢れた目をしているではありませんか」
そこまで言われて俺はさすがにむっとした。
穢れた目だと?一体、初対面の人間にどうしたらそんなことを言えるんだと思った。
何か言い返そうとしたが、俺の服をエリカがつかんで止めてきた。
ちらっとエリカを見ると、まだ早い、エリカの目はそう言っていた。
仕方がないのでもう少し様子を見ることにした。
「この者たちが邪悪?私にはとてもそうは見えないが」
「どうやら王も騙されているようですな。実は今朝、私に太陽神リンドブル様からご神託があったのです。今日、王のもとに神木を倒すように言ってくるエルフの王の使者を語る者が来るであろうと。こいつらがまさにそうなのです」
言いたいだけ言うと、神官長は俺たちを指さしてくる。
とても不愉快だった。
さすがに我慢できなくなったし、頃合いだとも思ったので反論することにする。
「さっきから聞いていればちょっと失礼ではないですか?人のことを邪悪だと言ったり、証拠もないのに人のことを偽物だとか、騙そうとしたりしているとか言ったり、一体どういうつもりですか」
「黙れ!この邪教徒が!すべては我が神のご神託である。証拠など不要である」
本当にこいつは不愉快なやつだ。
どうやら証拠もなく、神の言葉ということにしてこの場を乗り切るつもりのようだ。
だから、こう言ってやった。
「神の言葉?それは本当なのですか?神があなたのような人物に言葉を授けるとも思えませんが」
「むきー。神の言葉を疑うとは……とんでもない奴め」
「あなたがどう思おうと勝手ですが、そこまで言うのなら何か神の意志を示すものを見せてほしいものですね」
ここまで来たら売り言葉に買い言葉だ。
俺も言いたいだけ言わせてもらった。
どうせこの偽神官には何もできないだろうと思ったからだ。
だが、奴はにやけた顔でこう言った。
「いいだろう。お前たちに神の意志を示してやろう。明日正午、『神の審判』の儀式を行う」
「『神の審判』?神官長、それはやりすぎでは?」
「いいえ、王よ。この者たちは神の意志を疑ったのです。ですから、きちんと神の意志というものを教えてやらなければなりません。構いませんよね」
「うむ……、それでは仕方がないな」
王はなおも俺たちを庇ってくれそうだったが、神官長に神の意志と連呼されて
それ以上何も言えなかったのだろう。最後は『神の審判』とやらを行うことに賛成してしまった。
「お前たちも異存はないだろうな?ここまで神の意志を疑ったのだ。『神の審判』で有罪判決が出たら罰を受けてもらうぞ」
「いいぜ。『神の審判』が何か知らないが、受けて立とうじゃないか」
神官長が何か脅すように言ってきたが、俺は負ける気がしなかった。
何せ、こっちには本物の女神様がいるからな。
こいつらが何を企もうと、その企みをすべて打ち砕く自信があった。
「ほう、いい覚悟だな。では、『神の審判』の時までお前たちには大人しくしていてもらおうか。おい、衛兵」
「は!」
「こいつらを王宮の客室に案内しろ。そして、見張りをつけて明日の正午までおとなしくしてもらえ」
「はい、畏まりました」
神官長がそう言うと、衛兵が俺たちを王宮の客室に案内してくれて、俺たちはそこで一晩過ごすことになるのだった。
★★★
その晩、太陽の神殿の神官長室にて。
「明日の『神の審判』で使用する杭の準備は万端であろうな」
「はい。神官長様の命令通りに、必ず奴らが有罪になるように細工しております」
「そうか。これで明日やつらが泣きわめく様子が見られそうだ。楽しみだわい」
神官長と部下がそんな会話をしている様子が見られた。
果たして神官長の企みはうまく行くのだろうか?
神はお前たちの行いをちゃんと見ているぞ!
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