第199話~新ダンジョン攻略 ボス戦 ヴィクトリア、今度こそ宝箱を開けるときは慎重になれよ~

 代官屋敷の捜索が終わった後は、代官屋敷で一泊した。


「結構広い部屋があるね。ゲストルームかな」


 リネットが広い部屋を見つけたのでそこで寝ることにした。


「お風呂、お風呂、お風呂~。久しぶりのお風呂は気持ちがいいですね」


 部屋で横になっていると、お風呂に入っているヴィクトリアの歌声が聞こえてくる。

 ゲストルームの横は何もない部屋だったので、そこにバスタブを設置し、順番に入っていく。


「さっぱりしましたね」


 女性陣が風呂に入った後は俺が入る。


「うん、やっぱり風呂に入ると気持ちがいいな」


 俺も久しぶりの風呂を堪能した。

 熱いお湯につかっていると、体の芯から暖まって疲れが抜けていくような気がする。

 満足した俺は風呂を出る。


「ホルストさん、ご飯できてますよ」


 風呂から入ると、夕飯ができていた。

 メニューは鶏肉のスープと、パンだった。


「いただきます」


 ご飯は暖かいうちに食べたほうがおいしいので、早速食べることにする。


「うん、おいしいな」


 美味しくご飯を食べた後は、寝袋を出してそれで寝た。

 側に魔石ストーブを設置しているので、部屋の中はとても暖かかった。

 昼間、4階層の迷宮を散々歩かされたこともあって疲れていたので、よく寝られた。


 こうして、忙しい一日は終わった。


★★★


 次の日。

 俺たちは5階層の下り階段を降り、次の階層へと向かった。


「旦那様、扉ですよ」

「ああ、扉ですね」


 6階層は5階層と異なり狭く、降りるとすぐ目の前に扉があった。


「ホルストさん、これはあれですね」

「うん、あれに違いないね」


 扉を見てヴィクトリアとリネットがそんなことを言う。


 あれ。

 つまりこの先にダンジョンのボスがいるということだ。

 今まで何度も見てきた展開だった。


 ポン。

 と、俺は自分の頬を叩き気合を入れる。


「よし、行くぞ!」


 そして、俺は扉を開ける。


★★★


「旦那様、あれはバジリスクではないですか」


 部屋の中で俺たちを待ち構えていたのは、頭に派手な文様が描かれた巨大な蛇だった。


「バジリスク?」

「はい。石化の視線を持つ強力な魔物です。頭に王冠を模した派手な装飾をしているのが特徴だとか」

「なるほど、そういうことなら……ヴィクトリア、あれを出せ」

「ラジャーです」


 俺の指示でヴィクトリアが出したのは、以前も使ったことがある石化を防ぐマジックアイテムだ。

 これを全員が身に着けて、戦闘準備は完了だ。


「さあ、やるぞ」

「「「「はい」」」」


 こうして、俺たちはバジリスクとの戦闘に突入した。


★★★


「「うおおおお」」


 戦闘は俺とリネットの突撃から始まった。

 一気に動いて距離を詰めていく。


 ピカッ。

 バジリスクの瞳が怪しく光る。

 バジリスクお得意の石化の視線だ。


 だが、対策をきちんとしている俺たちには通じない。


「そんな攻撃が通じるかよ」


 素通りしてバジリスクに接近していく。


「キシャアアア」


 自分の攻撃が通じないと悟ったバジリスクがその尻尾を振り回して迎撃してくる。


「ふん」


 それをリネットが盾で受け止める。

 バジリスクは石化の視線以外にはそれほど攻撃力が高くないので、リネットがあっさりと攻撃を止めてしまう。

 さらに。


「『風刃』」

「『精霊召喚 火の精霊』」

「『狐火』」


 エリカたちが牽制の攻撃を仕掛ける。

 それにひるんだバジリスクが、攻撃を避けるために体勢を崩す。


「くたばれ!」


 その隙に俺がバジリスクへ躍りかかる。

 ドス。

 一気に首を斬り飛ばしてやる。

 バジリスクの首が地面に落ちて、コロコロと転がっていく。


「まあ、バジリスクが手強い魔物だとは言っても、今の俺たちにはこんなものか」


 地面を転がっていくバジリスクの首を眺めながら、俺は剣を収めるのだった。


★★★


「宝箱と、『転移魔法陣』ですね」


 バジリスクを倒すと、部屋の中にその二つが出現した。

 その二つ以外には部屋に下り階段などはなく、これでこのダンジョンはクリア、ということらしかった。


「さあ、さっそく宝箱を開けましょう」


 宝箱を見たヴィクトリアがすぐに宝箱を開けようとしたので、俺はそれを止めた。


「このバカ!最近宝箱トラップに引っかかりそうになったのに、少しは反省しろ!」

「すみません」


 俺に怒られたヴィクトリアがシュンとする。

 ちょっとかわいそうかなと思ったが、ここで止めておかないとまたこいつはやらかすからな。


 ただ、怒りっぱなしはよくないので、こう言ってやる。


「そう落ち込むな。安全か確認されたらお前に開けさせてやるから」

「本当ですか!」


 ヴィクトリアの顔がパッと明るくなる。

 本当、現金なやつだ。


「それじゃあ、エリカ」

「はい、旦那様」


 俺の指示でエリカが魔法で宝箱を調べる。


「大丈夫みたいです」

「よし、ヴィクトリア」

「はい」


 宝箱の安全が確認されたので、ヴィクトリアが宝箱を開ける。


「これは……魔法の属性を宿したミスリルの剣ですね」

「ほほう」


 それは中々いい物が手に入ったな。

 魔法の属性が宿った剣とか、買えば結構な値段になるはずだ。

 俺のコレクションにするにはいい剣だと思う。


「さて、このダンジョンもクリアしたことだし、帰るとするか」


 お宝をゲットした俺たちはそのまま魔法陣から出てダンジョンを出るのだった。


★★★


「うん、素晴らしい成果だね」


 ノースフォートレスの町へ戻って、ギルドへ報告に行った俺たちをダンパさんが褒めてくれた。

 すでにダンジョンで手に入れたお宝のうち、薬草や鉱石、アイテム、魔物の素材、バジリスクなどは商業ギルドに納品してある。

 その商業ギルドからの報告もあり、ダンパさんは非常に満足しているようだ。


「この分だと、冒険者たちのいい稼ぎ場所になりそうだね」

「そうですね。ただ、ダンジョンはたまに構造が変わることもあると聞きますし、このダンジョンに出現する魔物には強いのも多いです。このダンジョンに挑む場合は入念な準備をするよう冒険者にはよびかけた方がいいと思います」

「うん。ホルスト殿の言う通りだね。そうするつもりだ。ダンジョンがいくら稼げる場所だと言っても、命あってこそだからね。ギルドの情報にはそう記載しておくよ」


 俺の注意喚起にダンパさんも納得したらしく、そう約束してくれた。


「それでは失礼します」


 一通り報告が終わったので俺たちは退散した。

 ちなみに、今回俺たちが行ったダンジョンは手強い敵が多いが稼ぎも多いダンジョンとして有名になり、多くの冒険者が挑み、犠牲者なども出たものの、冒険者の懐を豊かにしてくれたのであった。


★★★


 その晩。


「「「「「「かんぱーい」」」」」」


 ホルスターを迎えに行った後、家で派手に祝杯を挙げた。

 今回の件で結構な収入があったので、エリカたちも奮発して豪華な食事を作ってくれた。


「旦那様、このワイン、おいしいです」

「本当、最高です」


 エリカとヴィクトリアなど、今回手に入れたワインを早速開けて飲んだりしている。

 俺もちょっとだけ飲んでみたが、確かにおいしかった。

 あまり酒が飲めないリネットでさえ、


「これはおいしいね」


と、褒めるほどだ。


 本当、今回のダンジョン探索は大成功だったと思う。

 その後も俺たちはどんちゃん騒ぎを続け、銀とホルスターを寝かせた後もそれは続き、気が付いたら朝になっていたのであった。


 本当、勝利の美酒って楽しい!


 朝になって横になった俺は、二日酔いに苦しみながらもそう思うのだった。

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