第192話~家族旅行 前半 雪山スキー そして、夜はヴィクトリアとの楽しいお風呂タイム~

 正月が終わってしばらくした頃。


 俺は朝からホルスターと遊んでやっていた。


「パパ、パパ。ほらお城できたよ」

「おっ、やるじゃないか。ホルスター」


 俺はホルスターが積み木を使って、城やら家やらを作るのを手伝ってやりながら遊んでやっているというわけだ。

 ちなみに、この積み木はエリカの両親がこの前買ってくれたものだ。


「おじい様、おばあ様、ありがとう」


 買ってもらえてうれしかったのか、ホルスターはエリカの両親にそうお礼を言っていた。

 以来、ホルスターはこの積み木で銀と一緒によく遊んでいた。

 うん、仲が良くて結構なことだ。


 で、その銀だが。


「銀ちゃん、こっちのワンピースの方がかわいくないですか」

「このフリルのついた帽子がいいんじゃないか」

「でも、それだと折角の髪飾りが……」


 そうやって、うちの嫁ズにいじられていた。

 え?なんでそんなことをされているのかって?

 それは……。


「旦那様、支度ができました」


 と、ホルスターと遊んでいる俺の所へ女性陣がやって来た。

 女性陣を見ると、全員よそ行きの華やかな服を着ていた。


 うん、かわいらしい。

 俺はそう思った。


「それじゃあ、そろそろ出かけるか」

「「「「はい」」」」


 女性陣の支度ができたみたいなので、皆で外に出てパトリックの所へ行く。


「パトリック。旅行中はよろしくな」

「ブヒヒヒン」


 パトリックが俺の呼びかけに答えていななく。

 そう。今日は以前嫁たちに宣言した通り、家族旅行に出かける予定の日だ。

 だから、嫁たち女性陣は張り切って出かける準備をしていたというわけだ。


 さて、ということで早速出発だ。


★★★


「うわー、素敵なホテルですね」


 ノースフォートレスを出発してから数日後、俺たちは目的地のホテルに着いた。

 目的のホテルはノースフォートレスと王都の中間くらいにある山の上にあった。

 周囲に小さな村がいくつか点在するくらいの田舎にあり、最近になってできたばかりのホテルらしい。


 こんなところにホテルなんか建てて儲かるのか?

 そうも思うのだが、ここのホテルにはちゃんと売りがあった。


「ふーん、ここが初心者コースか」

「旦那様。私、スキーとか初めてなので緊張しているのですが」

「ワタクシも初めてなので、ちょっと怖いです」

「まあ、教えてやるから、任せておけ」


 そう。ここのホテルの売りとは併設されたでっかいスキー場だった。

 初級者用、中級者用、上級者用と3コースある上。


「あれがリフトか」


 リフトという珍しい施設まで設置していた。


 普通、スキーと言えば一度滑り終わった後、また上まで登るのが面倒くさいものなのだが、このリフトというものを使えば、自動で上まで引き上げてくれるらしかった。

 だから、これを目当てに俺たち以外にもたくさんの観光客が来ているのだった。


 ちなみにこのリフト。ヒッグス家の魔道具工房が作った特注品らしかった。

 何でも、魔石を動力源にして動いているらしい。

 さすがヒッグス家の魔道具工房!すごいじゃないかと思った。


 なお、ここの情報を聞いたのはその魔道具工房の人からだ。

 この前の新年会の時、ここの話を聞いて、嫁たちが行ってみたいと言い出したので、来たというわけだ。


 さて、それはともかく、エリカとヴィクトリアにスキーを教えてやらなければな。


 ちなみにうちのパーティーでスキーができるのは俺とリネットだけだ。

 俺は上級学校の授業でやった雪中行軍の訓練でさんざん練習させられたからできるし、リネットも俺たちとパーティーを組む以前に、雪山での仕事を受けたことがあるらしく、その時に練習してできるようになったらしい。


 後、俺たちが使っているスキーの道具はホテルで借りたものだ。

 ホテルではスキー道具の他にも子供用のそりなんかも貸し出している。


「ホルスターに銀ちゃん。他のスキー客には十分に注意して遊ぶのよ」

「大丈夫だよ、ママ」

「エリカ様、ホルスターちゃんのことはお任せください」


 そうやってエリカに注意された後、二人用のそりで楽しそうに遊んでいた。


「それじゃあ、立つことから始めようか」


 子供たちが楽しそうに遊んでいるのを見ながら、大人たちはスキーの練習をするのであった。


★★★


 2時間後。


「二人とも大分できるようになったじゃないか」

「そうですか?まあ、最初より良くなったという実感はありますけど」

「ワタクシもです。ちょっとだけですが、できるようになりました」


 エリカとヴィクトリアが何とかスキーができるようになっていた。

 とはいっても、人間で例えるのならよちよち歩きができるようになりましたと言ったところだからな。まだまだと言えばまだまだだ。


 とはいえ、短期間でここまでできるようになったのは、普段から基礎訓練を怠っていないからだと思う。


 うん、すごいぞ!二人とも。

 ということで、次へ行こうとしたが、ここで二人が足が痛いと訴えてきた。


「旦那様、言いにくいのですが、太ももの内側が張ってきて、結構つらいです」

「ワタクシもです。立っているだけで辛いです」


 それを聞いて、これは筋肉痛だなと思った。

 スキーというのは結構脚の筋肉を使うからな。慣れていない二人にはきついのだと思う。


「仕方ないな。それじゃあ、今日の練習はここまでにして、後はホテルでのんびりするか」

「「「はい」」」


 ということで、ホテルへ帰ることにした。


★★★


「大分、落ち着きました」


 ホテルへ戻って温かいスープを飲んで、温かいご飯を食べて、暖かい飲み物を飲み物を飲んだらホッとしたのか、そんなことを言った。


 まあ、外は寒かったからな。暖かいものを食べると落ち着くよな。

 俺も人心地付いたし。


 と、ここで俺は外を見る。

 ホテルのレストランはガラス張りになっていて外が良く見えた。

 ホテルは山の上にあるので、ここからなら、外の景色が良く見えた。

 そして、ふと気づく。


「あの建物は何だ?」


 ホテルのある山から少し離れた山の上に、小さな建物がポツンと建っているのが見えた。


「あの建物は何ですか?」


 店員さんに聞いてみると。


「ああ、あそこは修道院ですね」


 そう教えてくれた。


「修道院ですか」

「ええ、あそこは山奥の修道院と申しまして、結構歴史のある修道院で、若い娘を集めて修行させているらしいですよ」

「へえ、そうなんですね」


 何かどこかで聞いたような話だが、修道院なんか王国にはたくさんあるのできっと気のせいだろう。


「そういえば、ちょうど明日の昼頃、あそこの修道院主催で、地域の交流行事として芋炊きをやるそうですよ」

「芋炊きですか!」


 芋炊きをすると聞いて急にヴィクトリアが割り込んできた。


「ええ、そうですよ。何でも、地域の有志から食材を募って屋外で大きな窯を使ってジャガイモのシチューを作るそうで、実はうちのホテルも食材を出させてもらったりしています。結構おいしいと評判で、最近はこのあたりの村のみならず、ちょっと離れた村の人も食べに来るみたいですよ。ただ、この辺の村の人でない場合、何か食材を持って行って寄付して食べさせてもらっているみたいですけど」


 興味津々のヴィクトリアに店員さんが詳しく説明してくれた。

 店員さんの説明を聞いたヴィクトリアが俺のことをじっと見てくる。


 あ、これは行きたそうな顔をしているな。

 俺はそう思った。

 ただ、俺も店員さんの話を聞いて興味が沸いたので。


「それじゃあ、その芋炊きとやらに皆行ってみるか?」

「「「大賛成です」」」


 行ってみることを提案したら、嫁たちは全員賛成だったので明日芋炊きに行くことになった。


★★★


 その日の夜。


「ホッルスットさ~ん。お背中流しますね」


 俺は泊っている部屋の風呂で、ヴィクトリアに背中を流してもらっていた。


 今日はヴィクトリアと夜を過ごす日なので、ヴィクトリアとこうして風呂に入っているというわけだ。

 ヴィクトリアは俺の背中を洗う時に結構ごしごし力を入れてくる。

 ヴィクトリアなりに一生懸命やろうとしてくれている結果であるから、別に文句はないが、たまにちょっとこそばゆい気がする。


「さて、次は俺の番だな」


 ヴィクトリアが俺の背中を洗った後は、俺が洗う番だ。

 ヴィクトリアの柔らかくてきめの細かい肌を丁寧に洗ってやると、


「ああ、気持ちいいです」


ヴィクトリアがそうやって喜んでくれる。


 一通り洗った後は一緒に湯船に浸かる。


「ホルストさん」


 湯船につかるなり、ヴィクトリアが抱き着いてくる。

 最初に一緒に風呂に入ったときには、おっかなびっくりだったヴィクトリアも、今ではだいぶ慣れたのか、行動が大胆になってきている。


「最高だよ。ヴィクトリア」


 甘えてくるヴィクトリアを俺も抱きしめてやる。

 バスタオル一枚越しにヴィクトリアの体温が伝わってきて、とても心地よい。


 そうやって、湯船で十分暖まるとお風呂を出た。

 そして、ベッドへ行き、二人だけの時間を過ごすのだった。

 とても楽しかった。

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