第189話~ドラゴン討伐祝勝会~
ドラゴン共をせん滅してノースフォートレスの町へ帰還した。
「おーい。冒険者ギルドの奴らが帰って来たぞ」
「あいつらがこの町を襲おうとしていたドラゴンたちを倒してきたって、本当か?」
「本当らしいぜ」
「それじゃあ、褒めてやらなきゃな」
「ああ、冒険者ギルド、万歳!」
「万歳!」
ドラゴンの軍団が町を襲ってくるかもしれないと聞いて、戦々恐々としていた町の人たちは、冒険者ギルドの冒険者たちがドラゴンを滅ぼしてきたと聞いて、狂喜乱舞した。
もろてを挙げて冒険者たちを出迎えてくれた。
「おめえ、やるじゃねえか」
「へん。俺の手にかかれば、こんなものよ」
中には知り合いにおだてられて、そんな風に調子に乗っているやつもいたが、誰もそれをとがめたりはしない。
何せ、今日は勝利の栄光を味わう日だ。
多少調子に乗ったところで問題になるはずがなかった。
こうして、俺たちはドラゴンを倒したという達成感で満たされたのであった。
★★★
ノースフォートレスに帰還した日から3日後。
「たくさんの人が集まっていますね」
今回の戦いの祝勝会が開かれた。
場所は何と町の闘技場だった。ここを借り切ってやるとのことだ。
しかも費用は全額ギルド持ちだ。
金がないといつもダンパさんがぼやいているギルドにしては珍しいと思ったが、まあ、今回の件では大量のドラゴンが手に入ったからな。
これを値崩れしない程度に流通量をコントロールして売りさばけば大きな利益になるはずだから、祝勝会を開くくらいは大丈夫だと思う。
「やあ、ホルスト殿。よく来てくれたね」
会場に入ると、入り口の所で、早速俺を見つけたダンパさんが声をかけてくれた。
「これは、ダンパさん。どうも」
俺たちもダンパさんに挨拶し返す。
「君たちが中心になって頑張ってくれたおかげで、今回も何とかなったよ。おかげで、参加してくれた冒険者たちにも十分に報酬を出せそうだし、こんなふうに祝勝会を開くこともできた。本当に感謝しかないよ」
それに対して、ダンパさんは俺たちのことを褒めに褒めてきた。
あまり褒められされ過ぎて、ちょっと照れくさくなったほどだ。
「それじゃあ、今日は楽しんで行ってくれよ」
言いたいだけ言うと、ダンパさんは俺たちを解放してくれたので、俺たちは会場の中へ入っていった。
「うわー、ごちそうが並んでますね。銀ちゃん、頑張って食べましょうね」
「はい、ヴィクトリア様」
会場に入ると、テーブルの上にはたくさんのごちそうが並んでいた。
今日は立食形式で食べ放題である。
それで、早速ごちそうに目を付けたヴィクトリアが舌なめずりしているというわけだ。
ちなみに今日の祝勝会は家族の同行がオーケーだったりする。
だから、俺たちもホルスターと銀を連れてきている。
「ホルストさん、ちょっとワタクシ行ってきます。銀ちゃんも行こ!」
「はい」
ということで、ヴィクトリアの奴は銀を連れて、大皿を手に持ち、さっさとごちそうの方へ行ってしまったのだった。
え?今回は節操のないヴィクトリアを注意しないのかって?
まあ、すでにヴィクトリアが大食いなのはノースフォートレスの冒険者たちの間では知られてしまっているからな。
上流階級のパーティーと違い、ここで注意してもすでに手遅れだからしない。
それに今日はおめでたい席だ。ガミガミ言うのは野暮というものだしな。
それはともかく。
俺たちも食事を楽しむことにした。
「ホルスターは何を食べたい?お母さんが取ってあげるからね」
「うん。お肉がいいな」
「……はい、取ってあげたわよ。お行儀よく食べるのよ」
「うん」
エリカはホルスターに構うのが忙しいようで、ずっと世話を焼いている。
残った俺とリネットは二人でテーブルを回って、好きなものを食べている。
「ホルスト君、このお肉好きでしょ?アタシが取ってあげるよ」
「ありがとう」
リネットはリネットで、ここぞとばかりに俺の世話を焼いてくるのだった。
俺もリネットにお世話されるのはうれしいので、されるがままにされ、取ってくれた料理を次々と平らげていくのであった。
こうして祝勝会は進んでいった。
★★★
「皆様、本日は冒険者ギルド主催の祝勝会にお集まりいただき誠にありがとうございます。皆様の活躍のおかげで、今回ドラゴンの軍団を退けることができました。感謝申し上げます」
祝勝会も中ごろ。
ダンパさんの挨拶があった。
とはいってもそこは荒くれ者の多い冒険者たち。適当に聞き流していた。
中にはダンパさんが話をしているにもかかわらず、気にせず飯を食い続けている猛者もいた。
だが、ダンパさんの次の一言で、全員が真剣な顔になった。
「それでは、皆様への感謝を示すためにささやかながらくじ引き大会を開催しますので、是非、ご参加ください」
「くじ引き大会?ギルドが?」
「ギルドマスター、最高!」
くじ引き大会があると聞いて全員が色めき立った。
金がないギルドが祝勝会をしてくれるだけでもすごいことなのに、その上くじ引き大会までしてくれるとか、天地がひっくり返ったような騒ぎだった。
もっともそこまで良い景品でもないようで。
「三等。屋外で使う薪と火打石のセットです」
「一等。ポーションセットですね」
と、いつか俺が主催したパーティーのくじ引き大会の景品よりも景品の質は低かった。
俺の時はちょっとお高めの武器とかも景品にしてたからなあ。
まあ、所詮金のないギルドが主催の上、参加人数も多いからこんなものだと思う。
それでも、ハズレでも粗品がもらえるとあって皆ウキウキしながら並んでいる。
「ホルストさん、ワタクシたちも並びましょうよ」
ヴィクトリアがそう言うので、俺たちも並んだ。
並んでいると、くじ引きを引き終えたらしいフォックスの奴に声をかけられた。
「よお、ドラゴンの。お前もくじ引きするのか?」
「ええ、一応。折角ですし」
「そうか。まあ、俺はハズレで粗品のお菓子だったけどな。しゃあないから、後は酒でも飲むわ」
「ははは、そうですか」
「じゃあ、頑張れよ」
それでフォックスとは別れた。
そうやって待っているうちに順番が来た。
「ホルスター。ホルスターはお母さんの分も引いていいからね。2回引きなさい」
「うん。ママ、ありがとう」
まず最初に引いたのはホルスターだ。
エリカが自分のくじ引きの分を譲ってやったので、2回引いた。
「粗品が2個ですね」
クジは2回ともハズレで、粗品をもらったようだ。
急いで開けると、中身は両方ともお菓子のワッフルだったようで、とてもうれしそうにしていた。
まあ、子供がポーションとかもらってもうれしくはないだろうから、これでよいと思う。
「銀も、俺の分引いていいから2回引きなよ」
「ありがとうございます。ホルスト様」
子供が二人いるのに、ホルスターだけ2回引けるのは不公平な気がしたので、俺のくじ引きの機会は銀に譲ってやった。
「粗品です」
銀も2回ともハズレで、中身はワッフルだった。
「うわー、おいしそうです」
銀もホルスター同様お菓子の方が良かったらしく、喜んでいた。
それで、残りはリネットヴィクトリアである。
「ああ、ハズレだったか」
リネットは普通に粗品をもらえたが、
「おめでとうございます。一等のポーションセットですね」
何とヴィクトリアは一等を引き当てた。
一等を引くとか、やるじゃないか、と俺は思ったが、ヴィクトリアの顔は暗かった。
「ああ、ワタクシもワッフル食べたかったです」
どうやら、ヴィクトリアはワッフルの方が良かったらしい。
ホルスターたちがおいしそうにワッフルを食べているのを羨ましそうに見ていた。
どうやらこいつにとってポーションセットは、『猫に金貨』というわけだったようだ。
あまりにもヴィクトリアが悲しそうな顔をしているので、リネットが声をかける。
「ヴィクトリアちゃん、あまり悲しそうな顔しないで。ほら、アタシのワッフル、半分あげるからさ」
それを聞いてヴィクトリアの顔がパッと明るくなる。
「本当ですか?ありがとうございます」
リネットにワッフルを半分分けてもらい、うれしそうに食べ始めた。
実にいい笑顔だ。
やはり、ヴィクトリアはこうでなくちゃなあ。と思った。
★★★
さて、そうこうしているうちに祝勝会は終わった。
「順番にお並びください」
帰り際に今回の報酬が出るというので、冒険者のみんなが並んで受け取っている。
「え?こんなにもらえるの?」
結構な報酬をもらえたようで、みんな驚いている。
今回はノースフォートレスからの報奨金の他にもドラゴンの売却代金もある。
だから、報奨金も結構な金額があった。
「え?雑用だけで銀貨20枚?」
現地での雑用任務をしただけのEランクの冒険者でも銀貨を20枚ほどもらえたみたいだ。
普通なら、あのくらいの雑用の仕事なら銀貨数枚といったところが相場だった。
多分、前線での危険手当という点が考慮されて、この金額になったのだともう。
「金貨1枚?すげーな」
戦闘に参加したDランク以上の冒険者には手柄に応じて報奨金が出たが、最低でも金貨1枚程度はもらえたようだ。
「おう、金貨10枚か。これだけあればしばらくゆっくりできるな」
フォックスクラスになると金貨10枚ほどもらう者もいて、皆ホクホク顔であった。
ちなみにうちのチームは金貨200枚もらえた。
というのも、これにはドラゴンの迎撃のために作成した城壁の代金も入っていた。
「あの城壁、国が買い取ってくれたんだ」
そうダンパさんに説明してもらった。
どうやら軍はあの城壁を関所兼防御陣地として活用する気らしかった。
だから、作成した俺たちから買い取って、多少改修したり設備を設置したりして利用する気らしかった。
せっかく造ったのに潰すのももったいないし、そもそも潰すのも面倒くさかったので、軍が買い取ってくれて俺はよかったと思っている。
まあ、普通にあの規模の城壁を造ろうと思ったら金貨200枚では済まないからな。
軍的にはよい買い物をしたとも言える。
こうして、報酬を受け取った俺たちは、意気揚々と帰宅したのだった。
★★★
祝勝会の帰り道。
俺は奥さんズにおねだりをされた。
「旦那様、大きな仕事も片付いたことだし、どこかへ遊びに行きませんか」
「ワタクシもどこかへ行って、おいしいもの食べたいです」
「大賛成。アタシもどこかへ行きたい」
かわるがわるそう言ってきた。
嫁さんズにここまで請われては、俺も無碍に扱うわけにはいかない。
「いいよ。どこへ行くか考えておきな」
「「「わーい。ありがとうございます」」」
俺の発言に嫁さんズはたいそう喜ぶのだった。
その笑顔を見て俺は、彼女たちと一緒になって本当に良かったと思うのであった。
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