今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第188話~ドラゴン軍団のボスを討伐せよ! VS.レッドドラゴン~
第188話~ドラゴン軍団のボスを討伐せよ! VS.レッドドラゴン~
ドラゴンを退けた日の夜はよく寝られた。
「今日はよく働いたから、眠いです」
夕食を食った後、ヴィクトリアがそうぼやいていたので、早々に自分たちのテントへ向かった。
俺と嫁たち3人は同じテントだ。
ここで4人一緒に寝ている。
ちなみに今回、銀とホルスターはエリカの実家に預けている。
別に実力的に銀は連れてきても良かったのだが、たくさんの荒っぽい大人がいるところに子供を連れて来るのもどうかと思ったので、ホルスターと一緒に置いてきた。
「気を付けて行ってくるのよ」
「パパ、ママ、お姉ちゃんたち行ってらっしゃい」
「皆様、お気をつけて」
エリカのお母さんたちと一緒にホルスターたちも手を振りながら俺たちを見送ってくれた。
ということで、4人で寝ているわけだが。
「ちょっと、うるさいですね」
夕食から2時間くらいはうるさくて眠れなかった。
というのも、商業ギルドがドラゴンを引き取りに来ていたからだ。
「大事な商品なので、丁寧に扱うのですよ」
商業ギルドの支配人のマットさんが大声でそう指示するのが聞こえてくる。
まあ、ドラゴンは高額商品だからな。この後の俺たちみんなの報酬にもなるわけだし、これは仕方ない。
商業ギルド的にも鮮度が高いうちに回収して冷凍保存しておいて、流通量をコントロールして利益を上げたいだろうから、近くに商人たちを待機させていて、急いで来たのだと思う。
とはいっても、2時間程度の話だ。
まだまだ夜は長い。
だから、寝るまで嫁たちをかわいがることにした。
とはいっても、周囲に大勢の人がいる状況の中でむつみあうのはどうかと思うので、なでなでしてやることにした。
それでも。
「旦那様、もっと、もっと撫でてください」
「ホルストさん、とても気持ちいいですよ」
「ホルスト君、大好きだよ」
と、嫁たちは甘えてくるのだった。
そうこうしているうちに、商業ギルドもいなくなって静かになり、疲れも回ってきたので、4人で仲良くいつの間にか眠っていた。
★★★
翌日の昼頃。
「残りのドラゴン共がやって来たぞ!」
城壁の上で見張りをしていた冒険者が大声で叫ぶのが聞こえた。
城壁の下で昼飯を食べていた俺たちのパーティーはすぐに立ち上がり、城壁の上へと向かう。
城壁を上がりながら周囲を見渡すと、
「やってやるぜ!」
と、そう気合の入っている冒険者が多かった。
昨日ドラゴンを倒したことで、全軍の士気が上がっていたからだ。
昨日まで青い顔をしている冒険者が多かったのに……。やはりドラゴンを直接相手にしたことで、自信が付いたのだと思う。
結構なことだ。
おっと、今はそれどころではなかった。
城壁に上がった俺は状況を確認する。
「地竜が10に飛竜が10。それにあれは……レッドドラゴンか!」
現在ここにいるのは合計21匹。
昨日倒したのが50匹で、合わせて71匹で、最初の報告で70匹ほどのドラゴンという話だったから、これで全部出てきた計算である。
今日いるうち地竜は昨日倒したのと同じドラゴン。つまりドラゴンたちの中では一番の雑魚だ。
飛竜も空を飛べると言うだけで、強さ的には地竜よりちょっと強い程度だ。
問題はレッドドラゴンだ。
こいつは俺たちのパーティーが以前に倒したアースドラゴンやレジェンドドラゴンのような上位種だ。
勝てない相手ではないが、まともに相手をしていてはこちらの損害も大きくなる。
だから俺は決断した。
すぐ近くにいたダンパさんにこう進言した。
「あのレッドドラゴンは俺が仕留めます。他のドラゴンは冒険者たちで倒してください」
「レッドドラゴンをホルスト殿一人で?大丈夫なのかい?」
「問題ないです。それから、エリカにリネットにヴィクトリア」
「「「はい」」」
「お前たちは、まず飛竜を地面に叩き落せ!左右どっちかの翼を潰してしまえば奴らものこのこと空を飛んでいられないはずだ。やれるな?」
「「「了解です」」」
「後、『赤の斧』と『青の槍』と『緑の弓』の奴ら」
「「「おう」」」
「お前たちはよくケンカしているけど、昨日は立派に連携できていて、良かったと思うぞ。その調子で地上のドラゴンたちは頼んだぞ」
「「「任せておけ」」」
「それじゃあ、俺はレッドドラゴンの奴を始末してくる」
そう言い残すと、俺は一人レッドドラゴンへと向かって行った。
★★★
「『神強化』、『重力操作』」
俺は自分に魔法をかけるとレッドラゴンに向かって行く。
レッドドラゴンは空を飛んでいて、かつ飛竜の集団たちの一番奥にいた。
多分、自分がボスだということが分かっていて、偉そうに奥に陣取っているのだと思う。
畜生の分際で、指揮官気取りとか、生意気な奴め!
レッドドラゴンに何となく見下されている気になった俺は、内心腹立たしげに思いながらも、レッドドラゴンへ向かって真っすぐに突っ込んでいく。
「グオオオ」
途中、俺の邪魔をしようと飛竜が3匹ほど襲い掛かってくるが、
「邪魔だ!どけ!」
すれ違いざまに3匹とも首を切り落としてやった。
首を落とされた飛竜は、そのまま真っ逆さまに地面へと落下していった。
これで、飛竜は残り7匹。大分エリカたちの負担も軽くなったと思う。
ちなみに残りの飛竜は俺に襲い掛かってくるどころか、ササっと距離を離してしまった。
多分、俺の動きを見て、恐れおののいたのだと思う。
さすがは畜生。大将を見捨てて、自分は逃げるとか……最高の見世物だな!
まあ、飛竜なんて雑魚は放っといて、俺はレッドドラゴンに一直線に迫っていく。
「ゴオオオオ」
向かってくる俺に対して、レッドドラゴンが炎のブレスを吐いてくる。
レッドドラゴンの炎のブレスは通常のドラゴンのそれよりも強力なことで知られている。
しかし、今の俺にとってその程度の攻撃は大したものではない。
キングエイプの『超振動波』、グランドタートルの『荷電粒子砲』をくらってきた俺だ。
それらを退けてきた俺に、この程度の炎が通じるわけがない。
「『天凍』」
魔法で氷の槍を作り出すと、炎ブレスをいとも簡単に相殺してやった。
さらに、俺の氷の槍は炎を消し去るだけでは飽き足らず、レッド泥ゴンの体を貫いていく。
「ギャアアアア」
体を氷の槍で串刺しにされたレッドドラゴンが絶叫を上げる。
その隙に俺は一気にレッドドラゴンに接近し、
「えい!」
レッドドラゴンに思い切り蹴りを入れてやる。
ビュンと、すごい勢いでレッドドラゴンが地面に落ちていく。
俺は地面に落ちるレッドドラゴンを追撃するために、一緒に降下する。
そして、剣を振りかぶってレッドドラゴンをまっぷつたつにしようとしたが、止めておいた。
よく考えたら、レッドドラゴンの頭とか重要な商品だ。
真っ二つにして商品価値を下げるのはもったいない。
だから、急遽路線変更した。
レッドドラゴンの生命エネルギーを入念に探知し、心臓の位置を探ると、そこに思い切り剣を突き立てた。
「ぐへ」
心臓をやられたレッドドラゴンが一瞬で息絶えた。
「『重力操作』」
レッドドラゴンを始末した俺は、魔法を使ってなるべく死体が気付かないようにレッドドラゴンを地面に下ろす。
「うん、もう息はないな」
そして、レッドドラゴンの死を確認すると、戦場の状況を確認すべく後ろを振り返る。
「エリカたち、俺の指示通りやってくれたみたいだな」
見ると、飛竜たちはすでに上空に居なかった。
全頭エリカたちに翼をもぎ取られ、地面を這いずり回っていた。
飛竜を叩き落したエリカたちは、すでに他の冒険者たちの攻撃に加わり、残ったドラゴンたちに殲滅に力を注いでいた。
「さあ、もうひと踏ん張りだ」
それを見て俺も冒険者たちへ加勢するのだった。
★★★
「うひょう。今日も大漁ですな」
戦場に転がるドラゴンの死体を見て、マットさんが歓喜の声を上げている。
まあ、気持ちはよくわかる。
昨日に引き続いて大量のドラゴンが手に入ったのだからな。
しかも、今日の獲物の中にはレッドドラゴンや飛竜といった普通のドラゴンよりも高額な商品が混ざっている。
マットさんが子供みたいにはしゃぐのも無理はなかった。
ただ、それでも商業ギルドの支配人にまで出世した人だ。
「そのドラゴンは一番馬車。そっちは十番馬車に積みなさい」
一通り喜んだ後は、きっちりと自分の仕事をこなしていた。
こういう切り替えができる点はさすがだと言えた。
一方の俺たちはというと。
「ヴィクトリア。この布団とテーブルは収納リングに入れておけ」
「ラジャーです」
もうドラゴン軍団は全滅したことだし、撤収の準備をしていた。
とはいっても、するのは自分たちの私物の片づけだけだ。
なぜなら、Dランク以上の戦闘要員の冒険者たちとは別に、Eランクの冒険者たちを雑用係、炊事係等として冒険者ギルドが雇って連れて来ていたからだ。
だから、戦場の後片付けや共用の荷物の片づけは彼らがしてくれるので、俺たちは何もする必要がないというわけだ。
それに加え、ドラゴンの死体の回収は最初に言ったとおりに商業ギルドが放っといてもやるし、本当に俺たちは出発までまでのんびりしていればよかった。
ちなみに、うちの嫁ズは3人でトランプのポーカーをしていた。
「私は2ペアですね」
「アタシはスリーカードだね」
「やった。フルハウスです。ワタクシの勝ちです。クッキーいただきです」
そうやって3人で楽しそうにお菓子をかけて遊んでいるのを見て、俺は心底ほのぼのするのだった。
そうこうしているうちに片づけも終わり、ノースフォートレスへ帰ることになった。
「さあ、帰るぞ」
「「「はい」」」
こうして、俺たちはノースフォートレスへ帰還するのであった。
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