今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第187話~ドラゴン軍団迎撃作戦 襲い来るドラゴンの大軍を撃滅せよ!~
第187話~ドラゴン軍団迎撃作戦 襲い来るドラゴンの大軍を撃滅せよ!~
「『天土』」
俺が魔法を使用すると、たちまち地面の上に大量の巨大な石の塊と土が出現する。
「ヴィクトリア、やれ!」
「ラジャーです。『精霊召喚 土の精霊 水の精霊』」
ヴィクトリアが俺の指示で精霊を呼び出す。
「さあ、急いで石と土を整えて、即席の防御壁を作るのです」
呼び出された精霊たちは、ヴィクトリアの指示で石と土を整え始め、1時間ほどでかなり立派な城壁を作り上げてしまった。
「さて、これで城壁はいいかな。それじゃあ、ダンパさん、お願いします」
「ほい、来た。みんなやってくれ」
「ういっす」
今度はダンパさんの指示で待ち構えていた職人さんたちが動き出す。
職人さんたちは城壁の真ん中くらいにあるスペースに行くと、
「えいほ、えいほ」
と、持ってきた分厚い鉄扉をそこに設置し始める。
30分後。
「できましたぜ」
門が出来上がった。これで、城壁の完成だ。
「『重力操作』」
俺はひょいと城壁の上に飛び乗り、城壁の上から風景を眺めてみる。
「いい眺めだ」
俺は出来上がった城壁に満足した。
★★★
俺たちは今ノースフォートレスと北部砦を結ぶ街道の途中にある山道にいた。
ここで俺たちはドラゴン軍団を迎撃するつもりなのだ。
それで、まず城壁を作った。
ただ、普通に作ったのではドラゴン軍団の襲来にとても間に合わない。
だから、俺が魔法で石と土を大量に作り出し、ヴィクトリアにそれを整えさせることで急造の城壁を作ったのだ。
その長さ、およそ300メートル。
城壁のすぐ横には高い岩山がそびえたっているので、ドラゴン軍団がここを通過するには城壁を突破するしかなかった。
「よし、それでは準備にかかれ」
城壁が出来上がったので、防衛戦の準備に入る。
「予定通り、配置に着け!」
ダンパさんの指示で、ノースフォートレスの冒険者たちが配置に着く。
今回の迎撃戦の主役は冒険者たちだ。
一応、ノースフォートレスの町の警備隊も参加しているが数は少ない。
というのも、このあたりの軍の主力は北部砦に駐屯しているので、ノースフォートレスの町にそんなに軍はいないのだ。
彼らにはノースフォートレスの町を守護する程度の兵力しかないのだ。
援軍も要請しているという話だが、決戦には間に合わないだろう。
だから、彼らにはノースフォートレスの町を守ってもらうことにする。
ただ、それでも少数とはいえこちらに人数を割いてきたのは、決戦に軍の部隊がいなかったということになれば軍の評判が落ちるからであろうと思われる。
さて、それはともかく。
これで決戦の準備は整った。
後はドラゴン共がやってくるのを待つとしよう。
★★★
城壁を建造した翌日。
「城門の5キロ手前にドラゴン共が現れました」
斥候にやっていた冒険者たちが戻ってきてそう報告してきた。
「いよいよか」
城壁周辺が緊張した雰囲気に包まれる。
「よし、急いで戦闘糧食を配布しろ。皆戦いに備えるんだ!」
ダンパさんの指示で全員に決戦前の食料が配られる。
ちなみに何かというと、おにぎりだ。
「これはフソウ皇国でよく食べられている食い物なのですが、すぐに食べられて腹も膨れるので、戦闘前に食うのにぴったりですよ」
と事前にダンパさんに勧めておいたのだ。
で、朝のうちに大量にご飯を炊き、おにぎりを作っておいて、今配っているというわけだ。
「うん、中々うまいじゃないか」
幸いなことにおにぎりは冒険者たちにも好評なようで、みなおいしそうにほおばっていた。
さて、腹も膨れたことだし、いよいよドラゴンとの決戦だ!
★★★
「ドラゴンが来たぞ!」
城壁の上からテレスコープで様子をうかがっていた冒険者が、ドラゴンを発見し、大声で叫んで警戒を呼び掛ける。
俺も城壁からずっと先の方を見てみる。
「とりあえず来たのは50匹くらいか」
ここから確認できたドラゴンの数は地竜が50匹くらいだった。
いきなり50も来たが、全部で70ということなので、こいつらを潰せばかなり勝利に近づくはずだ。
「ホルスト殿、どうする?」
ダンパさんが俺に攻撃の可否を聞いてくる。
それに対して、俺は首を横に振る。
「まだ早いです。もっと引き付けてからでないと攻撃の成果は上がりません」
そう言いつつも俺はタイミングをはかる。
そして、ドラゴンの戦闘が所定の位置に来た時。
「今だ!『天土』」
魔法を発動する。
ドラゴンたちの目の前に突然複数の落とし穴が出現する。
その落とし穴はとても深く、大きさもドラゴン一匹がちょうど入るくらいの大きさしかなく、一度ドラゴンがその落とし穴に落ちると、簡単に抜け出すことができないしろものだった。
「グオ?」
突如進路上に現れた落とし穴にドラゴンたちが次々に落ちていく。
しかも、深く作った落とし穴だから、同じ穴に複数のドラゴンがはまっていくという事態が起こった。
あれでは、先に落ちたドラゴンは後から落ちたドラゴンに潰されてひとたまりもないと思う。
普通に圧死するか、良くても重傷で動くことはできないだろう。
それに後から落ちたドラゴンも穴が深くて這い上がることができないはずなので、戦闘には参加できないはずだ。
「これで、半分ほどのドラゴンが戦闘不能だな。すべては計画通りだ」
俺は計画通りに事が進んでほくそ笑む。
だが、まだ穴に落ちなかったドラゴンが20匹以上いる。
さあ、本番はこれからだ!
俺は気合を入れ直す。
★★★
残った20匹以上のドラゴンが仲間の屍、まだ死んだか確認していないが、を乗り越えて城壁へ向かってくる。
「ホルスト殿……」
「もうちょっとです。……今だ!『天土』」
十分にドラゴン共が城壁に接近してきたところで、俺は再び魔法を放つ。
すると、ドラゴンたちの後方に落とし穴が出現する。
これで、城壁と落とし穴に挟まれてドラゴン共は逃げ道がなくなったわけだ。
これでドラゴンたちにできるのはこちら、つまり死地へ向かって行くことだけになった。
「『天土』」
俺はさらに魔法を放つ。
すると、上空に無数の鉄の槍が出現し、ドラゴンたちめがけて降り注ぐ。
「グオオオオン」
鉄より硬いと言われるドラゴンの皮膚と言えども、上空から勢いつけて落ちてくる鉄の槍を防ぎきることはできない。
次々に槍に貫かれて、悲鳴を上げていく。
「ダンパさん!今です!」
「弓隊、魔法使い隊、攻撃開始!」
ダンパさんの指示で攻撃が開始される。
ビュッ、ビュッ。
と、雨嵐のように矢がドラゴンたちに降り注ぎ。
ボン、ボン。
と、魔法が次々に炸裂する。
それでも、魔法や弓の嵐を潜り抜けて接近してくる奴もいるが。
「俺たちに任せろ」
Bランク以上の冒険者が迎撃に出向く。
もちろん、俺とリネットも突撃していく。
「フォックスさん、ドラゴンの腕を斬り飛ばしてやったので、とどめをお願いします」
「おうよ」
とはいっても、俺とリネットはドラゴンの戦闘力をそぐことに集中して、トドメはフォックスたちに任せている。
そっちの方が被害が少なくなると判断したからだ。
そんなことを続けているうちに魔法と弓の嵐を潜り抜けてきたドラゴンたちが全滅した。
それと同時に、弓と魔法の攻撃を受け続けているドラゴンたちもかなり弱ってきているのが確認できた。
「よし!Cランクの冒険者も突撃せよ」
それを見て、ダンパさんが次の指示を出す。
「わー」
ダンパさんの指示でCランクの冒険者たちが攻撃を開始する。
弱って碌に動くこともできなくなったドラゴンたちが、冒険者たちの攻撃で次々に命を奪われていく。
「ブオオオ」
それでも、ブレス攻撃で抵抗してくるドラゴンもいたが。
「任せろ!」
こちらもブレス耐性のある盾を持ったタンク役の冒険者を用意していたので、特段ブレスによって被害が出たわけではなかった。
そうやって、城門前まで進軍してきたドラゴンたちを全滅させた後は、落とし穴に落ちたドラゴンたちの番だ。
「『天土』」
ドラゴンたちを閉じ込める目的で掘った穴を魔法で埋めると、今度はほぼ全軍で落とし穴に向かった。
「おら!往生せいや!」
冒険者たちが穴の上から、弓や魔法、投げ槍で攻撃を仕掛け、1匹ずつ確実にドラゴンを仕留めていく。
「せーの」
始末したドラゴンは1匹ずつロープで引き揚げ、次のドラゴンに攻撃を開始する。
そんなことを3時間ほど続けた結果。
「これで、終わりだな」
最後のドラゴンの死体が穴から引き揚げられる。
「ダンパさん、これで何とかドラゴン共の第一波は退けましたね」
「ああ。これもホルスト殿たちのおかげだよ。本当に感謝する」
「いや、そんなことはないです。これも皆が頑張ったからです。それよりもまだドラゴンは残っています。次の戦いに備えて準備しましょう」
このようにして、ノースフォートレス冒険者団とドラゴン軍団の一日目の戦いは終わったのだった。
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