閑話休題25~その頃の妹 再びの修道院生活~

「ああ、またここに来てしまった」


 悪友のフレデリカとともに山奥の修道院に送り返されたその日の夜。

 私、レイラ・エレクトロンは自室のベッドの上でそう嘆いていた。


 「スースー」


 私のベッドの隣ではフレデリカがのんきに寝ていた。


 え?一緒に逃げだした私とフレデリカがなぜ一緒の部屋なのかですって?

 何か、面倒くさい奴らはまとめとけという方針らしいです。

 よくわからないことをする修道院だと思うけど、フレデリカとバラバラにされなかったのは私的にはうれしかったですが。


 まあ、修道院に帰ってきたら門とか頑丈になっていたし、修道院の要所要所に外から鍵をかけることのできる扉が設けられていたから、修道院的にも次こそは逃げることは許さない、ときちんと準備したので、一緒にしても大丈夫だと考えているのだと思う。


 私はそんなことを考えながら、不意に自分の頭を触った。

 ジョリッとした感触が手に伝わり私は戦慄を覚えた。

 昼間、坊主頭にされた時の感覚を思い出したからだ。


 そして、思い知らされる。

 またあの辛い生活が始まるのだと。


★★★


「よく帰ってきましたね。シスターレイラにシスターフレデリカ」


 修道院に着くなり私とフレデリカは修道院長に呼び出された。

 そして色々説教され、神の教えを説かれた。


「神様はあなたたちの行いをちゃんと見ているのです。ですから、もう逃げようなどと思ってはいけませんよ」


 そんなことを長々と言われた。

 説教が終わると、そのまま風呂場に連れて行かれ、そこで椅子に座らされて、体に散髪の時に着ける布を巻かれた。


「さあ、行きますよ」


 準備が整うと、修道院長自らの手で断髪された。


 ああ、いつのまにか伸びていた私の髪が~。


 修道院長は髪の根元から容赦なくはさみを入れていき、修道院長が手を動かすたびにすさまじい量の髪の毛が落ちていくのが目に入った。

 それを見て私にできるのはただ涙を流すことだけだった。


 あらかた髪を切った後は、カミソリで剃られた。

 あっという間に私はツルツルの坊主頭になった。

 私は完全にここの子になったのだった。


 ああ、坊主頭さん、こんにちは。また、よろしくね。


 出来上がった坊主頭を鏡で見た私は、そうやって現実逃避するしかなかった。


 私の次はフレデリカの番だ。


 自分の運命を受け入れているのか、フレデリカもおとなしく断髪され、あっという間に坊主頭になった。

 ただ、悲しいことは悲しいらしく、断髪の最中から大粒の涙を流すことをやめなかった。


「さあ、二人ともこれを着なさい。修行の時間ですよ」


 断髪式が終わると私たちはシスター服を支給された。

 そのまま修業が始まる。


★★★


「うう、水が冷たい」


 最初にやった修業は滝行だった。


 もう冬だっていうのに、滝行?

 そう私は思ったが、こうなった以上やるしかなかった。


 それで、案の定、私とフレデリカは冷たい水を浴びて震えることになった。

 髪の毛がなくなってさっぱりとした頭の上から冷水を浴びるのは、とても辛かった。


 しかも、昼間なのにこの状況だ。

 明日からは日課としてこれを朝にやるのだ。

 正直耐えられるのか不安である。


「もういいでしょう」


 30分ほどで滝行は終わった。


「「うう、さむ」」


 フレデリカと二人、修道院長たちが用意してくれていた焚火で暖まり、暖かいお湯を飲ませてもらったら、大分落ち着いた。

 滝行の後は反省文を書いた。


「自らの行いを省みて、それを文章にするのですよ」


 修道院から逃亡したこと。前にここにいた時の生活態度の悪さ。

 そういうことについて反省文を書かされた。


 その後は夕食を挟んで、聖書の写しを書いた。


「神様の正しい教えを写すことによって、心を清らかにするのです。では、今日は『創世記』の第一章を写しなさい」


 そう言われて指示された個所をひたすら紙に写していく。

 ひたすら、ただひたすらに写す。

 それを寝る前まで続けた。


「今日は、このくらいでいいですよ」


 ようやく許しが出たので、今日の修業は終わりだ。

 そのまま寝室に行く。


 風呂には入らない。

 というか、ここの風呂は3日に1回だけだ。

 冬はまだしも、汗をかく夏にはきつい決まりだ。

 まあ、今は冬だし、汗もかいてないからとりあえず我慢する。


 寝室に着くとすぐにベッドに横になる。


 フレデリカはすぐに寝てしまったようだが、私は中々寝られなかった。

 だから、、冒頭の様に余計なことを考えて悶々としていたわけだが、それでも気が付いたら寝てしまっていた。


★★★


「朝ですよ。起きなさい」


 翌朝。早朝。まだ夜明け前。

 宿直当番の修道女の掛け声で私は目が覚めた。

 布団から手をそっと出すと、寒気が手に触れ、ゾッとした。


 もっと布団の中に居たいと思ったが、


「さっさと起きる!」


再び回ってきた修道女の手により、無理矢理布団から出されるのだった。


 やれやれ、また辛い修行が始まるのか。

 そう思いながら私はシスター服に着替える。


 そして、神様に祈る。


 ああ、神様。私をこの地獄からお救いください!


ーーーーーーー


 これにて第9章終了です。


 ここまで読んでいただいて、気にっていただけた方、続きが気になる方は、フォロー、レビュー(★)、応援コメント(♥)など入れていただくと、作者のモチベーションが上がるので、よろしくお願いします。


それでは、これからも頑張って執筆してまいりますので、応援よろしくお願いします。

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