今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第182話~リネットと二人きりで一晩過ごした件 いつも一生懸命なリネットの事大好きだよ~
第182話~リネットと二人きりで一晩過ごした件 いつも一生懸命なリネットの事大好きだよ~
ヴィクトリアちゃんがとうとうホルスト君と男女の仲になれたそうだ。
「あれが本当の夫婦になるということなんですね。ワタクシ、感動しました」
ヴィクトリアちゃんはうっとりした顔でアタシとエリカちゃんに初めての感想を述べていた。
羨ましい限りだ。
というか、ヴィクトリアちゃんが終わったので、次はアタシの番だ。
アタシはヴィクトリアちゃんやエリカちゃんほどかわいくないし、演技もうまくない。
男の子をうまく誘う手腕にも長けていない。
二人から見れば野暮な女だと、自分では思う。
しかし、ホルスト君を好きな気持ちは二人に負けていないと思う。
だから勇気を振り絞って、ホルスト君を誘うつもりだ。
アタシ、頑張れ!
そう自分を鼓舞し、ホルスト君を誘う計画を練るのだった。
★★★
「えい、や」
その日、俺はいつものように朝の剣の素振りの日課をこなしていた。
すると。
「ホルスト君。ちょっといいかな」
リネットが声をかけてきた。
「なんですか」
俺は素振りをやめ、リネットの話に耳を傾ける。
「実はこれなんだけど」
そう言いながら、リネットは一枚の紙を俺に見せてくる。
「うん?キャンプ」
それは一枚のチラシだった。
『今王都で大人気!!都会を離れ、大自然の空気を吸おう!!』
そんなことが書かれたチラシは、どうやら王都郊外にあるキャンプ場の宣伝広告みたいだった。
「これは?」
「最近、王都で人気のキャンプ場のチラシだよ」
「キャンプですか」
キャンプと聞いて俺はいつもの冒険者稼業でやるようなテントを張ったり、火をおこしたりというような作業を思わず思い浮かべた。
「ここは、そんな用意一切する必要はないんだよ。キャンプ場にはコテージが設置してあって、そこで寝ればいいし、食材なんかもキャンプ場が用意してくれるし、火をおこすための道具も借りられる。だから、お客さんはのんびりと風景でも楽しんでいればいいんだって」
「へえ、そんな便利な場所があるんですね」
リネットの話を聞いているうちに俺も興味が沸いてきた。
そういう所があるのなら行ってのんびりするのも悪くないと思った。
そんな俺の心の内を見透かしたようにリネットが言ってくる。
「ねえ。ここに行ってみない?二人きりで」
「二人きり?」
その言葉を聞いて、俺はドキッとする。
つい先日のヴィクトリアとのことを思い出す。
そして、今はリネットが俺を誘っているのだと、気が付く。
そんなリネットの提案に対する俺の返答は、もちろん……。
「うん、行こうか!」
肯定だった。
「じゃあ、今から予約してくるからね」
そう言うと、リネットはキャンプ場の予約をしに出掛けてしまった。
本当、楽しみが増えた。
俺はそう思った。
★★★
「ふーん、結構いい場所だな」
数日後、アタシとホルスト君は件のキャンプ場に来ていた。
キャンプ場に着くなり、ホルスト君は喜んでいた。
キャンプ場は王都のすぐそばの小高い丘の上にあり、王都を一望できたからだ。
王都の大理石で装飾されたきれいな街並みを見るのは、とても気持ちが良かった。
アタシは地面に敷物を敷き、持ってきていたお弁当を広げ、ホルスト君を誘う。
「ねえ、折角だから、ご飯でも食べながら一緒に景色を楽しまない?」
「ああ、いいよ」
ホルスト君が提案に乗ってきたので、一緒に座る。
「お、おいしそうだね。いただきます」
席に座ると、ホルスト君が早速お弁当に手を伸ばそうとした。
そこへアタシはこんなことを言ってみた。
「ねえ、アタシが食べさせてあげよっか?」
「え?」
ホルスト君が驚いた顔になるが、無視してアタシは続ける。
「ヴィクトリアちゃんにはクレープ食べさせてもらったんでしょ?だから、アタシも食べさせてあげる。はい、お口、あ~んして」
アタシは弁当箱の中のタコさんウィンナーにフォークを突き刺し、ホルスト君の口に運ぶ。
「あ~ん」
ホルスト君が親鳥に餌をもらうヒナのように大きく口を開け、ウィンナーを食べる。
「おいしい?」
「うん、リネットに食べさせてもらうと、いつもの何倍もおいしいよ」
「よかった」
喜んでもらえたようで、アタシもとても幸福な気分を味わえた。
その後もアタシはせっせとホルスト君にご飯を食べさせたが、そのうちにホルスト君もお腹いっぱいになったようで、
「もう、食べられないよ」
と、言ってきた。アタシはフォークを置き、ホルスト君の顔を見る。
そして、あることに気が付く。
「ホルスト君、口の周りに食べかすがついちゃったね。アタシが拭いてあげる」
そう言うと、アタシは思い切ってホルスト君の口にキスをした。
「え?リネット?」
ホルスト君が驚いた顔になるが、アタシは構わず、ホルスト君を抱きしめに行った。
すると、ホルスト君も覚悟を決めたのか、アタシのことを抱きしめてくれた。
しばらくそのままの態勢で時を過ごし、やがてどちらからともなく離れるとアタシは言った。
「とてもよかったよ」
「ああ、俺もだ」
これで、二人の距離が大分縮まった。
アタシはそう感じた。
★★★
お弁当を食べた後は、近くの川で釣りをした。
キャンプ場側の川は水質も良く、キャンプ場を運営しているという漁業組合の管理が厳格で、住民に漁場を荒らされることもなく、いい魚が釣れた。
「おい、リネット、浮きが動いているぞ。魚が釣れたんじゃないのか」
「そう?……本当だ。釣り糸が引っ張られている感覚がする」
アタシは釣りをするのは実は初めてだったが、その初心者のアタシでも魚が食いついてきたのが分かった。
早速リールを巻く。
だが、つられる魚の方も生き死にがかかっているので必死だ。
激しく動き回って、抵抗してくる。
「リネット、リールを巻くときは無理に巻くなよ。無理に巻くと釣り糸が切れる可能性があるからな。時には巻くのをストップして、魚を泳がせて体力を使わせて、弱らせることも大事だ」
「わかった」
アタシはホルスト君のアドバイスに従って、慎重にリールを巻いていく。
そして。
「やった!釣れた!」
アタシは魚を釣り上げた。
結構大きな魚で、今晩の食材にふさわしいものだった。
「よかったな、リネット」
「うん、うれしい」
アタシたちは抱き合い、喜びを分かち合うのだった。
その後もアタシたちは釣りを続け、気が付いたら夕方になっていたので、釣りをやめ、夕食の準備をするのだった。
★★★
「ホルスト君、焼けたよ」
「どれどれ、では早速食べようかな」
今日の夕食はバーベキューだ。
屋外のバーベキュー台で火を起こして、それで肉や魚、野菜を焼いている。
「ホルスト君、どんどん食べなよ」
そう言いつつ、リネットが焼けたお肉を俺の皿にのせてくる。
「おいしい?」
「うん、おいしい」
そうやって、リネットに促されるまま、俺はどんどんバーベキューを食べて行った。
「大分暗くなってきたね」
そうこうしているうちに夜になった。
季節はもう冬なので大分肌寒さを感じた。
「食事前にストーブに薪をくべておいたから、コテージの中は大分暖かくなっていると思うよ」
ということで二人でコテージの中へ入る。
「ホルスト君、紅茶をいれたよ」
すぐにリネットが紅茶を用意してくれたので、二人で窓の側のソファーに座り、星を見ながらお茶を飲むことになった。
「きれいだね」
「ええ、きれいですね」
コテージの中から見る星の世界は最高に美しかった。
二人してそれに見とれた。
そのうちに、リネットが俺の胸に顔を埋めてきた。
「いい匂い」
そう言いながら、頬を俺の胸に顔をこすりつけてきた。
俺はそんなリネットの頭をやさしくなでてやった。
「アタシ、幸せだよ」
「俺もだ」
そうやって、二人で愛を確かめ合った。
とても幸せな気分だった。
★★★
さて、星を二人で見た後はお風呂に入った。
俺が先に入り、リネットが後から入った。
「ちょっとだけ待っていてね」
そう言い残すと、リネットは俺が入った後の風呂に入っていった。
どうやらヴィクトリアと違って恥ずかしがり屋のリネットにとって、いきなり二人で風呂に入るというのは敷居が高かったらしく、一緒に入ろうとは誘ってこなかった。
まあ、そういうちょっと恥じらい深いところがリネットのいい所なので、俺はリネットのことをかわいらしいと好感をもてた。
とはいっても、風呂に一緒に入らないのなら、その間俺は手持無沙汰だ。
仕方なく、俺はその間ベッドでおとなしくしていた。
ただ、これからすることを考えるとドキドキして落ち着かないので、酒を飲んで気持ちを紛らわせていた。
「ごめん、待たせたね」
そのうちにリネットが風呂から出てきた。
今日のリネットはピンクの薄いネグリジェを着ていた。
普段の彼女と異なり、とても色っぽいと思った。
「そっちへ行くね」
俺がそう思っているとリネットが側に寄って来た。
★★★
さて、アタシも覚悟を決めないと。
ベッドの上でホルスト君の横に座ったアタシは緊張していた。
これから何をすべきか、あらかじめ考えていたのに、緊張で頭の中が真っ白になって上手くできない。
それでも、何とかやるべきことを思い出し、ホルスト君の横にちょこんと正座する。
「ふつつかものですが、よろしくお願いします」
そうホルスト君に挨拶した。
そして、そのままベッドに横になると、
「リネットは初めてなので、優しくしてください」
体中の勇気を総動員して、そうホルスト君にお願いした。
それに対して、ホルスト君は返事をせず、首を縦にゆっくりと振ると、アタシの体に手を伸ばしてきた。
そして、この夜、アタシは大人の女性になれたのだった。
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