第181話~ヴィクトリアと二人きりで一晩過ごした件 ヴィクトリアとてもかわいいよ~

 ようやくワタクシの脳筋兄貴が天界に帰りました。


 あのバカ兄。本当に邪魔で仕方なかったです。

 いつもワタクシの行動を監視しているせいで、ワタクシはあいつがいる間、ホルストさんとの仲を全然進展できなかったです。

 まったく。あいつはストーカーか何か何ですかね。


 それにあいつのせいで、ワタクシだけでなく、リネットさんまでホルストさんとの仲を進展させることができませんでした。


「アタシは抜け駆けする気無いから。ホルスト君との仲を進展する時はフェアに行こうよ」


 リネットさんにも余計な気を遣わせてしまい、本当に申し訳なかったです。


 しかし、それも今は昔。

 邪魔者もようやくいなくなりました。


 これ以上邪魔が入らないうちに、さっさと既成事実を作ってしまおう。

 ワタクシはそう思いました。

 エリカさんとリネットさんに相談すると。




「それがいいと思います」


「そうすべきだね」


 二人ともそう言ってくれました。

 ちなみにワタクシとリネットさんの順番はじゃんけんで決めました。


「ワタクシの勝ちですね」


 ワタクシが勝ったので、ワタクシの方が先にすることになりました。

 ということで、ワタクシ、ヴィクトリアは今からホルストさんを誘ってみます。


★★★


「ホッルスットさ~ん」


 俺がリビングで剣の手入れをしていると、ヴィクトリアが何か滅茶苦茶うれしそうな声で話しかけてきた。

 何だろうと思い、俺が顔を上げると、満面の笑みを浮かべたヴィクトリアが俺の隣にちょこんと座り、俺の腕にしがみついてきた。

 いきなりしがみつかれた俺は慌てる。


「どうしたんだ。突然」

「うちの邪魔な兄貴も消えたことだし、久々にデートをしませんか?」


 そんな風に誘ってきた。


 そうだな。最近、ジャスティスのせいで全然ヴィクトリアたちとイチャイチャできなかったもんな。

 だから、俺は即答した。


「うん、いいよ。どこへ行きたい?」

「久しぶりにお芝居とか見たいですね。連れて行ってくれるんですか?」

「いいぞ。いつ行く?」

「今、ちょうどいいお芝居やっているんです。だから、明日にでも行きませんか」

「ああ、それでいいぞ」

「じゃあ、楽しみにしてますので」


 そう言うと、ヴィクトリアはリビングから出て行った。

 残された俺は明日のヴィクトリアとのデートを楽しみに思いつつ、剣の手入れを再開するのだった。


★★★


 次の日。

 ワタクシはホルストさんとデートに出掛けました。


「ホッルスットさん。腕組みましょ」


 家を出るなり、ワタクシはホルストさんと腕を組みました。

 左腕に思い切りしがみつきました。


 この感触、久しぶりです。

 ずっとワタクシのバカ兄貴のせいでお預けでしたから。


 ですから、久しぶりに腕を組めてとてもうれしかったです。

 うれしすぎて、尻尾を振りたい気分になりますが、ワタクシに尻尾などついていないので尻尾を振ることはできませんでした。


 そうやって歩いていると、途中クレープの屋台が出ているのに気が付きます。

 ワタクシはホルストさんの顔を覗き込みました。

 ホルストさんはすぐにワタクシの行動の変化に気づきます。


「何だ?クレープが欲しいのか」


 コクコクとワタクシは頷きます。


「しょうがないやつだな。好きなのを頼めよ」

「わーい。ありがとうございます」


 こうしてクレープをゲットしたワタクシは、そのまま近くの公園に行き、ベンチに腰を下ろして一緒にクレープを食べることにしました。


「は~い、あ~んしてください」

「あ~ん」

「おいしいですか」

「うん、おいしいよ」


 ベンチに座るなり、ワタクシはホルストさんにクレープを食べさせてあげました。

 クレープを手に持ち、それをホルストさんの口まで持って行ってあげます。


 最初こそホルストさんは緊張している様子でしたが、段々慣れてきたのか、バクバク食べ始めて、最後は、


「おいしかったよ」


と、ほっぺにキスをしてくれました。


 こんな昼間から外で堂々と……ホルストさん大胆です!

 ホルストさんが食べ終わったので、次はワタクシの番です。


「ほ~ら、ヴィクトリア、おいしいか?」

「はい、おいしいです」


 ホルストさんに食べさせてもらうクレープは、自分一人で食べるよりずっとおいしかったです。

 それで、もちろん食べ終わった後はあれの出番です。


「ホルストさん、大好きです」


 ワタクシもホルストさんのほっぺたにキスをするのでした。


 その後しばらくの間は、ホルストさんの胸に顔を埋め余韻を楽しんでいましたが、やがて劇の時間が来たので劇に行きました。


★★★


 今日の劇は恋愛ものだった。

 どこかの国の王子が町娘に恋をしてしまって、周囲に反対されるも、王子という身分を投げうってその娘と一緒になるという話だった。


 俺はこの劇を見ていて、王子という身分を捨てることができるとか、実にいい女だったんだな、というような情緒も減ったくれもない感想を抱いたのだが、ヴィクトリアのはしゃぎぶりはすごかった。


「キャー、王子様、素敵です!」


 他の女性客同様、そうやって歓声を上げていた。


 お前、劇場なんだからもうちょっと静かにしろよ。

 そう思ったが、よく考えたら劇場中が騒然としているので、ヴィクトリア一人注意したところで意味はなかったので、何も言わないことにした。


 そうこうしているうちに劇は進み、クライマックスの王子が町娘にキスをするシーンになった。

 すると、突然ヴィクトリアが俺の手を握ってきた。

 驚いた俺がヴィクトリアを見ると、ヴィクトリアは目を閉じ、唇を上に向け、俺の方を向いていた。


 これはあれか?俺にキスをしろということか?

 俺は周囲を見渡した。すると、周囲で何組ものカップルがキスをしているのが確認できた。


 となると、俺もこの波に乗らねばなるまい。

 俺はヴィクトリアにそっとキスをした。 


 すると、ヴィクトリアが腕を伸ばしてがっちりと俺を抱きかかえてきた。

 負けじと、俺もヴィクトリアを抱きかかえてやる。


 そのまましばらくの間、劇が終わるまで俺たちはそうしていたのだった。


★★★


 劇を見終わったワタクシたちはレストランに向かいました。


 食べる料理とか飲むお酒はお店の人にお任せにしました。

 ここはホルストさんと仲のいいワイトさんの家の御用達のレストランで、ワイトさんの紹介できています。

 公爵家の紹介なので、店も丁寧に対応してくれました。


「「かんぱ~い」」


 最初に軽くワインを飲みます。

 その後は次々に運ばれてくる料理を食べて行きます。

 料理はおいしかったです。

 さすが公爵家御用達のことだけはあります。


 ただ、このレストランでのメインのイベントは料理を食べることではありません。

 ワタクシはその時に備えて、虎視眈々と心の準備をしていきます。


 ワタクシは準備をしている間にも食事は進んでいき、最後はデザートのアイスを食べてフィニッシュです。


「さて、ご飯も食べたことだし帰ろうか」


 ご飯を食べたホルストさんがそう言います。


 今です!

 ワタクシはホルストさんの手をそっと握りしめます。


 そして、上目遣いでこう言います。


「今日は帰りたくないです」

「え?」


 それを聞いたホルストさんの目が丸くなります。

 ワタクシは話を続けます。


「今日、ホテルを取ってあるんです。今からそこへ行きませんか?」

「ああ、いいよ」


 この後の展開を予測したらしいホルストさんがオーケーの返事を出します。

 やった!成功です!

 こうして、ワタクシたちは二人きりでホテルに泊まることになりました。


★★★


 ヴィクトリアと二人でホテルに泊まった。

 エリカ以外の女の子と二人きりでホテルに泊まるというのは初めての経験なので、滅茶苦茶緊張している。

 そして、今俺はお風呂に入っている。


「先にお風呂に入ってください」


 ヴィクトリアにそう言われたので先に入ったのだった。


「しかし、広い風呂だな」


 風呂は広かったので、俺は湯船にゆっくり使ってこれからに備えて、英気を蓄えていた。

 すると。


「失礼します」


 何と、ヴィクトリアが入って来た。

 恥ずかしいのか、ヴィクトリアの顔は真っ赤だった。


「お前、何しに来たんだ」

「何って、ホルストさんの体を洗いに来たんですよ。さあ、そろそろ体もぬくもって、毛穴も開いて、体の洗い頃だと思うので、湯船から出てください」


 そう言うと、ヴィクトリアは俺を湯船から出し背中を洗うのだった。

 女の子に体を洗われるのはとても気持ちよかった。


 俺の体を洗った後は、二人で湯船に浸かった。


「ホルストさん、えい!」


 湯船に浸かっていると、ヴィクトリアが水鉄砲を飛ばしてきた。

 ペチャ。

 湯船のお湯が俺の顔に見ごとに命中する。


「やったな」


 俺も負けじと水鉄砲でやり返す。

 しばらくの間、二人でそうやって遊んでから風呂を出た。


★★★


「ふつつかものですが、よろしくお願いします」


 お風呂を出た後、着替えたワタクシは、ベッドの上で正座すると、ホルストさんにそう挨拶しました。


「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」


 ホルストさんもワタクシに会わせて挨拶し返してくれます。


 ということで、いよいよです。

 ワタクシはごろんとベッドの上に横になります。

 そして、囁くように言います。


「ヴィクトリアは初めてなので、優しくしてください」


 ホルストさんはそれには答えず、首をわずかに動かすと、そのままワタクシの体に手を伸ばしてきました。


 こうしてワタクシは大人の階段を登ったのでした。

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