今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第171話~ジャスティスとの修行 天の行 修行完了!そして、いよいよジャスティスとの対決へ~
第171話~ジャスティスとの修行 天の行 修行完了!そして、いよいよジャスティスとの対決へ~
1か月後。季節は移り、もうすぐ冬になろうとする頃。
「やっと、ものになって来たな」
修行をしていると、ジャスティスがそう言ってきた。
「たった1か月で、ここまで生命エネルギーのコントロールができるようになるとは、やるではないか」
「そうですか?」
「うむ、これだけできれば基礎としては十分だろう。『地の行』はここまでだな」
ジャスティスがそう太鼓判を押してくれた。
まあ、この一月苦労したからな。
生命エネルギーを操る訓練だとか言って、いろいろやらされた。
毎日座禅をして、生命エネルギーに対する感覚を磨くことから始まり、体内の生命エネルギーの移動の訓練だとか言って、ジャスティスと手を繋いで生命エネルギーのやり取りを学んだこともあった。
こいつと手を繋ぐとか、あれは正直気色悪かった。
リネットも俺と同じく気持ち悪いと思ったようで、この訓練をするときはちょっと引いていた。
もっとも、シスコンのジャスティスはヴィクトリア以外は興味がないようで、リネットに対しては、俺同様、淡々と訓練するだけだった。
後、生命エネルギーを使った攻撃訓練、防御訓練もやらされた。
「これで鉄板を貫くのだ」
そう言ってジャスティスが持ってきたのは粘土と1センチくらいのかなり厚めの鉄板だった。
「これでですか?どうやって?」
「見本を見せてやるからこの通りにできるようにせよ」
そう言うと、ジャスティスは粘土を一塊握りしめると、生命エネルギーを込めて鉄板に投げつけた。
プス。という鈍い音とともに鉄板に穴が空いた。
嘘だろ?
そう思いつつジャスティスが投げた粘土を触ると、生命エネルギーが抜けたせいか、柔らかかった。
俺の驚いている顔を見て、ジャスティスがにんまりと笑う。
「どうだ。すごいだろう」
「「はい」」
「では、早速練習だ」
「「はい」」
ということで、練習した。
大体できるようになるまで2週間ほどかかった。
「粘土鉄板穴あけ」ができるようになった後は、武器を使っての訓練だ。
武器に生命エネルギーを込めて模擬試合を繰り返した。
そして、生命エネルギーを操る訓練を開始してから1か月ほどで、『地の行』の訓練も終了というわけだ。
「ただし、『地の行』は奥が深い。教えた練習方法を毎日怠らずにやること。基礎を利用して応用を常に考えておくこと。以上をさぼらずに行うこと。それだけは忘れるなよ」
「「はい」」
「それでは、いよいよ『天の行』の修業を始める」
★★★
とうとうジャスティスの修業の最終段階『天の行』が開始された。
「先に言っておくが、『天の行』は本来人間が使用できるものではない」
「それはどういう意味ですか」
ジャスティスがコクリと大きく頷き、説明を始める。
「『天の行』は神気という神の力を用いた武術を使いこなすための修業なのだ。普通の人間は神の力を使えぬ。だから、『天の行』の修業を行うことはできぬ。だが、お前たち二人は神の力を宿した力を持っているだろう?」
ジャスティスの言う神の力。
これは、多分、俺の『神属性魔法』とリネットの『戦士の記憶』のことを指しているのだと思う。
「「はい、持っています」」
「よし、今から実戦形式でそれを磨いてやろう。『天の行』が終わるころにはお前たちは神の力をかなり使いこなせるようになっていることだろう」
「「はい、よろしくお願いします」」
こうして、『天の行』の修業が始まった。
★★★
「ホルスト君、一緒に武器を見に行かないか?」
『天の行』の修業で忙しい日々の中でも休日はある。
ある日の休日、俺はリネットにそう誘われた。
ちなみにエリカとヴィクトリアは銀とホルスターを連れて王都の図書館へ出かけている。
あいつらは本を読むのが好きだから、こうやってたまに図書館や本屋へよく出かける。
後、ジャスティスの奴は金魚の糞のようにヴィクトリアについて行った。
どうせ冷たくあしらわれるのが分かっているのに、無駄足ご苦労なことだと思う。
「ああ、いいよ」
リネットに誘われた俺は一緒に出掛けた。
最近寒くなってきたので、しっかり厚着をして寒さに備える。
見ると、リネットも寒いのは嫌なのか、その小さな体に分厚い衣服を着こんでいた。
「さあ、行こうか」
「ああ」
俺たちは手を繋いで家を出た。
★★★
「うわあ、たくさん武器を置いているね」
武器やに到着して中を見渡したリネットの目が輝き出した。
「この短剣なんか刃の輝きもいいし、柄の装飾もいいね。1本くらいはこういうのを持っておくのもいいかな」
リネットは飾ってある短剣を1本手に取ると、鞘から抜き、刀身から柄の装飾まで入念にチェックする。
どうやら気に入ったようで、物欲しげな目で短剣のことを見ている。
俺は俺で、ロングソードを1本手に取ると、鞘から抜いてブンと振ってみる。
「うん、中々いい振り心地だな]
そう言いつつロングソードの刀身を見ると、純粋な鉄ではなく、特殊な加工をされた鉄であるようだった。
以前使っていたエリカが実家からくすねてきた鋼の剣みたいだった。
ちなみに、あの剣については勝手に使ったことと壊したことをエリカのお父さんに謝ったのだが、
「剣の1本くらいでそんなに謝る必要はないよ」
と、あっさり許してくれた。
さすがエリカのお父さん!寛大な心を持っていらっしゃると思った。
それはさておき。
「リネットはその短剣にするのか?俺はこのロングソードにするよ」
「うん、これにするよ」
リネットも欲しい武器を見つけたようなので、俺はリネットから短剣を受け取ると、店のカウンターへ持っていく。
「すみません。これください」
「毎度ありがとうございます」
そして、代金を支払い商品を受け取る。
え?何ですでに最強の武器を持っているのに武器屋で武器を買うのかって?
これは俺とリネットの趣味だ。
素晴らしい武器の価値は素晴らしい美術品に勝る。
俺はそう考えて、趣味として武器を集めている。
いわゆる武器コレクションと言われる趣味だ。
そうして集めた武器を将来家でも買った時に飾っておきたいなと思っている。
リネットも鍛冶屋の娘らしく、いい武器を見ると欲しくなるようで、こうやって一緒になって集めている。
「あまり理解されない趣味かもしれないけど、将来孫が遊びに来た時、『じいちゃん、ばあちゃん、あの剣カッコいいね。欲しいな』と言ってくれた時に、『いいよ。持って帰りな』って、あげられるようになっているといいね」
そんな妄想を二人で話したこともあった。
さて、武器も買ったことだし、後はどこかで飯でも食べて、ぶらぶらして帰ろうと思う。
★★★
『天の行』の修業にも終着が見えてきた。
「お前たち、技の切れがだいぶ良くなってきたな」
俺たちの練習を見て、ジャスティスが褒めてくれた。
それを聞いて、俺はようやくここまで来たかと思った。
この1か月。俺とリネットは『天の行』の修業に集中した。
おかげで、『神強化』で扱う技の精度や威力を上げることができた。
リネットも『戦士の記憶』の中にある技で使用できるものが増え、当然元から使える技の精度や威力も上がっていた。
さらに言えば、『戦士の記憶』に記録されていた基本技で俺も使えていた『忍び足』や『見切り』などの基本技もより正確にできるようになった。
やはり技について詳細に知っている人物に色々教わるのは効果的な修行らしかった。
「さて、『天の行』もそろそろ卒業だな」
ジャスティスが俺の顔を見てそう言う。
「それでは約束通り、そろそろ私と試合をしてもらおうか」
「はい」
「日時はそちらで決めてよい。私にその実力を示すことができたら妹との仲を認めてやろう」
そんな俺とジャスティスとの会話を聞いてヴィクトリアが嚙みついてきた。
「お兄様、まだそんなことを言っているのですか」
そう兄に抗議するが、妹に甘いジャスティスもそこは聞き入れない。
「ヴィクトリア、これは試練なのだ。ホルストが邪神の復活を阻止するというのならこれは避けて通れないのだ。私に認められないのなら邪神の復活の阻止など到底無理なのだ」
「でも……」
「いいんだ。ヴィクトリア」
俺はなおも抗議しようとするヴィクトリアを止めに入る。
「俺を信じてくれ、ヴィクトリア。必ずお前の兄ちゃんに認めさせてみるから」
「……わかりました。ワタクシ、ホルストさんのことを信じます」
「ありがとう」
そう言うと、俺はヴィクトリアの頭を撫でてやった。
しばらく撫でた後、俺はジャスティスの方へ向き直る。
「それでは、3日後に対決しませんか?」
「いいだろう」
ということで、俺とジャスティスの勝負は3日後に決まった。
果たして俺はジャスティスに認めてもらうことができるのか?
それはわからない。
だが、やるだけやってみよう。
俺はそう誓うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます