閑話休題15~淑女会、旅路編~

 『シエルの町』で2泊することになったので、1日時間が空くことになったエリカたちは久しぶりに3人で淑女会を開催することにした。


 ホルスターはホルストと銀が町の広場で遊んでやっている。

 というか、エリカたちがいるのはその広場の目の前のカフェだ。

 3人はここからホルストたちがベビーカーに乗ったホルスターをあやしているのを見ながら会議をするのであった。


「私はミルクティーを」

「ワタクシはアップルジュースください」

「アタシはカフェラテがいいかな」

「畏まりました」


 3人の注文を受けたウェイトレスさんが下がると、3人は会議を始める。


「もうちょっとでヒッグスタウンに着きますが、みなさん、準備はよろしいですか」

「準備ですか?」

「そうです」

「何の準備だい?」

「もちろん私の父に対してです」


 そこまで言うと、エリカは7ヴィクトリアやリネットのことをちらっと見る。


「私の父は、娘の私が言うのもなんですが、かなり頭のいい人です。そして、一族のことを第一に考えて行動します。時には一族の繁栄のためなら、容赦のないことをしたりもします」

「そうなんですか」

「そうなんです」


 ヴィクトリアの問いかけに対して、エリカはきっぱりと断定する。


「それで、エリカちゃんのお父さんは何をしてくるんだい?」

「女の子ですね」

「女の子ですか」

「そうです。うちの父なら、隙あらば旦那様に女の子を近づけてくるでしょうね」

「お待たせしました。ご注文の品をお持ちしました」


 と、ここでウェイトレスさんが注文の品を持ってきたので、3人は一旦話をやめ、一口飲み物を飲む。

 飲み物を飲むと話が再開される。


「それで、話の続きなのですが、実はヒッグス一族は、近年、一族全体で魔力が落ちてきていて、父はそれを非常に憂えているのです」

「そうなんだ。あのヒッグス一族がねえ」

「それで、それがホルストさんと何の関係が?」

「簡単な話です。旦那様って、あれでも非常に高い魔力をお持ちではないですか。だから、跡継ぎの男子がいないヒッグス一族の家の女の子に、旦那様の子を産ませて、男だったらその家の跡継ぎにし、女でも養子を取るなりして、旦那様の血を一族に広げ、全体の魔力を高めたい。とか、うちの父は考えていると思いますよ」


 そこまで言うと、エリカは一旦話をやめ、一息つく。

 そして一呼吸置いたのちに再び話し始める。


「とまあ、ここまでは私の勝手な想像ですけど、父ならこのくらいやりかねません」

「エリカさんのお父さんって、そんなことを考えちゃうような人なんですか」

「一族の繁栄が絡めば、ですかね。普段はとてもやさしくて面倒見がいい方なので、例えば、あなた方が旦那様の子供を産んでも、自分の孫と同じように扱ってくれると思いますよ。だから、過度に心配する必要はありません。それに父がそのようなことを考えないようにする方法はあるのです」

「ほう、それはどんなのだい?」

「簡単です」


 エリカはヴィクトリアとリネットの顔をじっと見る。


「私たち3人で旦那様の子をたくさん産めばいいのです。私たちがたくさん子供を産めば、父も余計な波風を立てないと思いますよ。だから、アリスタ様の使命を果たせたら、あなたたちも子作り頑張ってくださいね」


 ホルストと子供を作れと言われて、ヴィクトリアとリネットの顔が赤くなる。

 その時のことを考えたら、二人とも恥ずかしくてたまらないのだろうと、エリカは思った。


「それと、私の父もそうですが、ヒッグス一族の女の子たちにも注意してください。彼女たちはすごい魔法使いを見ると、すぐ猛アピールしてきますよ」

「そうなのかい?」

「ええ。何せ、彼女たちは親に優れた子孫を残せと言われて教育されていますからね。優秀な魔法使いを見ると放っておきませんね。今の旦那様なら、モテモテでしょうね。ということで」


 そこまで言うと、エリカは右手を机の上に置く。

 それを見て、残りの二人もエリカの手の上に自分の右手を重ねる。


 そして、誓う。


「ということで、ヒッグス一族の女の子に旦那様をかっさらわれないように細心の注意を払いつつ、さっさとアリスタ様の件を片付けて、旦那様の子をたくさん産みましょう。いいですね」

「「はい」」


 こうして、3人は聖なる誓いを合わし、今回の淑女会は終わった。


★★★


 その後3人はカフェでお茶を飲みながら、ホルストや銀がホルスターと遊ぶさまを眺めてすごした。


「ホルストさんて、子煩悩ですよね。ワタクシとの間に子供ができても、あんな風にかわいがってくれるのでしょうか」

「それは大丈夫だと思いますよ。ホルスターを見てればわかるでしょう。きっと、大事にしてくれますよ」

「そうだね。ホルスト君なら、何人子供がいてもいいパパでいてくれるだろうね。数年後にはアタシたちの子供をかわるがわる、今のホルスター君みたいに高い、高いしている光景が目に浮かぶようだね」

「それは素晴らしい光景ですね」

「ワタクシもその光景をぜひ見てみたいです」

「そのために、みなさん、いろいろと頑張らないと。ですね」

「「はい」」


 未来を見ている3人の目は希望に満ち非常に輝いていた。

 いつまでもこんな幸せが続きますように。

 3人は切にそう願うのだった。

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