第66話~希望の遺跡、裏2階層~

 うん、いい夢を見た。


 昨日俺は夢の中で、エリカたち3人のバニーガール姿を拝んでしまった。

 3人とも何というか、普段とかなり雰囲気が違っていて、その色っぽかった。


 できればもう一度見てみたい気がするが、3人にこんなことを頼めるはずがない。

 軽蔑されるのがオチだろう。


 大体あれは俺の夢なのだ。妄想なのだ。

 それにしては妙に現実感が残っているが気のせいだろうか。


 まあ、妄想はここまでにして探索の再開だ。


「おはよう」


 俺は布団から這い出ると3人に挨拶をした。


「「「おはようございます」」」


 3人から元気な返事が返ってきた。

 もう朝食の準備は終わっているようで、地面に敷かれた敷物の上に朝食が置かれている。


「「「「いただきます」」」」


 早速食事を始める。いつも通り和気あいあいと話しながら食べる。

 いつも通り?

 みんな俺を見るときにちょっと顔が赤いような気がする。

 何かあったのだろうか?

 気にはなるが聞けそうな雰囲気でもなさそうなので聞かないでおく。


 しばらくして食事を終えると、片づけをして出発する。


 さあ、いよいよ裏2階層だ。


★★★


 転移魔方陣を抜けると、そこは草原だった。

 背の高い草が生い茂っており、視界がよくない。

 木はほとんどなく、たまに1,2本ずつポツリ、ポツリと生えている程度だ。


「ここは外?じゃないんだろうな」


 リネットさんが皆の気持ちを代弁してそう言う。

 それはみんながツッコミたい所だ。


 一応ここにの空には太陽があり、まぶしく輝いており、暖かさまで感じられる。

 草原には時折風が吹き、草木が風で揺れるのが確認できる。


 どこはどう見ても本物の自然なのだが、それでもどこか胡散臭さを感じるのだ。

 結局はお前の勘かよと思うかもしれないが、そう感じているのは俺だけではない。

 パーティー全員がそうだ。ここまでダンジョンを進んできた経験がそう感じさせているのだった。


「まあ、いいや。行くぞ」


 とはいえ、このままここに突っ立っていても仕方がないので先へ進むことにする。

 少し小高い丘があったので登って周囲を確認すると、遠くの方に大きな塔が建っているのが確認できた。

 他に行く当てもないのでとりあえずそちらへ向かって行くことにする。


「ちょっと面倒だな」


 文句を言いつつも草木をかき分けながら進んで行くと、早速敵が現れた。


「グルル」


 以前戦ったことがある地竜が1匹と、それよりは小型だが二足歩行する小さいが獰猛そうな竜の3匹の群れが現れた。


「なあ、あの小さいのって竜なのかな」

「多分そうだと思うよ。確か図鑑で見たことがある。確か西方の草原地帯に生息しているラプトルとかいう種類の竜だと思う。すばしっこくて、非常に獰猛で商隊なんかをよく襲うらしいよ」

「一応竜なわけですか。で、あいつらって高く売れたりします?」


 リネットさんは手をひらひらと振る。


「全然。あいつらの皮は素材としてはあまり使いようがないし、肉もまずい。正直商品としては価値がないね」


 となれば、地竜は回収して売り払うとして、あいつらは殲滅ということでいいかな?


「行くぞ!」


 戦闘の方針が決まったので戦闘開始だ。


「グオオオオオ」


 まず、3匹のラプトルが猛スピードで突っ込んで来る。

 向こうはラプトルの俊敏さを生かした先制攻撃のつもりなのだろうが、予想通り過ぎて笑える。


 俺は落ち着いて魔法を行使する。


「『天爆』」


 猛スピードでこちらに向かっていたラプトルの目の前で爆発が発生する。


「「「?」」」


 爆発に巻き込まれたラプトルが、訳が分からないまま、悲鳴一つ残すことなくその体を爆散させる。

 後に残ったのは小さなクレーター一つだけだった。


「次、行くぞ」


 残るは地竜1匹だ。


「『神強化』」

「『筋力強化』、『防御強化』」

「『光の加護』」


 まずは魔法で戦闘準備を整えてから突撃する。


 ゴオオオオオ。

 地竜がブレスを吐いて攻撃してくる。


「リネットさん、俺の少し後から来てください」

「あいよ」


 俺が前を進み、盾でブレスを防ぐ。

 十分に前へ進んだところで、俺の後ろからリネットさんが地竜に躍りかかる。

 両手斧を地竜の前脚に向けて振り下ろす。

 ドス。鈍い音とともに地竜の前足が1本胴体から離れる。


「ぐぎゃあああ」


 あまりの痛みに地竜がブレス攻撃を止め、絶叫する。

 ザン。その隙に今度は俺が残った地竜の前脚を切り飛ばす。

 これで、地竜は完全に身動きが取れなくなった。


「とどめ!」


 最後はリネットさんが地竜の首へ斧の一撃を入れて、終了である。

 後は予定通り地竜を回収して、俺たちは探索を再開するのだった。


★★★


 その後も俺たちは敵を排除しながら、順調に裏2階層を攻略していった。

 そして、いよいよ目的の塔へと到着する。


 しかしその前には大物がいた。


「旦那様、あれはアースドラゴンでは?」


 塔の前にはアースドラゴンがドンと構えていた。

 アースドラゴンは地属性の攻撃を得意とする属性ドラゴンだ。

 力も先程戦った地竜などとは比較にならないくらい強い。

 厄介な相手だった。


 ただ、属性ドラゴンなだけあって弱点もある。


「アースドラゴンは風属性と雷属性が弱点ですね。だから、その系統の攻撃を行えば効果があります」


 そう、アースドラゴンは風属性と雷属性の攻撃が弱点だった。


「だから。私が最近覚えたとっておきの魔法を使って、動きを止めますので、旦那様がとどめを刺してください」

「わかった」

「後、リネットさんは魔法で強化しますので私とヴィクトリアさんの防御を、ヴィクトリアさんはリネットさんがダメージを負ったら、すぐさま回復してください」

「心得た」

「ラジャーです」


 作戦が決定すると、早速行動を開始する。


「『神強化』、『重力操作』」


 剣に風属性、雷属性の2属性を付与し、空を飛んで一気にアースドラゴンに接近する。


「グルル」


 俺の接近に気づいたアースドラゴンが低いうなり声をあげる。

 よし、これでアースドラゴンの注意を引き付けることができた。

 エリカが魔法を使う時間を稼げた。


 俺がそのようにしている間にエリカが魔法を完成させていた。


「行きます。『暴風』」


 エリカが魔法を唱えると、たちまち強力な真空の刃と雷を伴う嵐が発生する。

 嵐は発生するなりアースドラゴンに襲い掛かる。


「ギャオオオオン」


 真空の刃がアースドラゴンの体を切り裂き、雷いかずちが体をむしばむ。


「ぐおおお」


 堪らなくなったアースドラゴンがエリカへ向けて魔法を放つ。

 『石槍』、「鉄槍」、『金剛槍』がエリカに迫る。


「アタシがいる限りここは通さないよ」


 しかしそれらの攻撃はエリカの前に立つリネットさんが防いでしまった。

 片手斧と盾を駆使し、攻撃が届く前にすべて叩き落してしまった。


 防いだ時に多少ダメージを負ったみたいだが。


「『中治癒』」


 その程度の傷はすぐにヴィクトリアが直してしまう。


 うん、完璧な連係プレーだ。

 こちらは任せておいて大丈夫そうだ。


 そう思った俺はアースドラゴンを見る。

 今、アースドラゴンはエリカの魔法で起こった嵐に巻き込まれて身動きが取れない状態だ。

 つまり、隙だらけというわけだ。


 今こそ、攻撃のチャンスだ!


 そう考えた俺は、上空から嵐の中心へと移動する。

 嵐の中心部分は少し威力が弱い。

 俺はここからアースドラゴンめがけて突っ込んで行く。


 グサ。

 俺の剣がアースドラゴンの脳天に突き刺さる。


 突き刺した部分から血と脳みその一部が噴き出るのが確認できた。


「とどめだ!『天雷』」


 脳天に剣を突き刺した俺はさっとその場から離れ、突き刺した剣めがけて特大の『天雷』を放つ。


「ぐもおお」


 『天雷』の魔法の直撃を受けたアースドラゴンは断末魔の悲鳴を残し、その場に倒れ込むと、二度と動かなくなった。


「やったな」

「「「はい」」」


 俺たちの完全勝利だった。


★★★


 アースドラゴンを討伐し、死体を回収した俺たちは塔を登った。

 塔の外周部には螺旋状に階段が設置されており、俺たちはそこを通って塔の屋上へと移動した。


「おっ、あったな」


 予想通り等の屋上には転移魔方陣があった。


「それでは、次行くぞ」

「「「はい」」」


 俺たちは次の階層へと移動した。

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