閑話休題8~バニーガールズ~

 アタシことリネット・クラフトマンは、かつてないほど緊張した面持ちで目の前の物を見つめている。

 アタシの横にいるエリカちゃんとヴィクトリアちゃんもアタシと同じ気持ちだと思う。


 アタシたちの目の前にある物。

 それは、ここ希望の遺跡10階層で見つけた衣装だった。


 ヴィクトリアちゃん曰く、バニースーツと呼ぶらしい。


 そう、ホルスト君があの時見つけたいやらしい本に描かれていた女性が身に付けていた衣装だ。

 この衣装は本と一緒に置いてあった物なのだが、アタシたち3人はこれら本と衣装をホルスト君に気づかれないようにこっそり持ってきていたのだった。


 なぜなら、この本と衣装に興味が湧いたからだ。


 というのも、ヴィクトリアちゃんが言うには、


「男性は、こういう感じの女性が好きなはずですよ」


と、いうことらしいので、研究のためという名目で持ってきたのだ。


 はしたないとも思うが、3人とももっとホルスト君に好かれたいと考えているので、これは仕方がないことなのだ。

 ……ということにしておこう。


 そうすると、同じ穴の狢の分際で、あの時ホルスト君にビンタしたのはやりすぎだったということになるが、あの時はアタシたちも初めてこんな破廉恥な絵を見せられて興奮していたので仕方がなかったのだ。


 一応反省はしている。ただ、謝ってしまってホルスト君が調子に乗ると困るので、謝らずに態度とか物で返していくということで3人の意見は一致している。


「それで、ホルスト君はばっちり眠っているのかい?」

「大丈夫だと思います。旦那様は連戦でお疲れの様でしたし、私がオマケで『眠り』の魔法を使っておきましたから、少々のことでは目が覚めないと思います」

「それでは、開けてみましょうか」


 アタシたち3人は恐る恐る本のページをめくった。


「「「ひゃっ」」」


 3人同時に声をあげ赤面する。


 そこには前に見た時と同じ、女性がきわどい服を着て、男性を誘惑したり、さらには男性と睦み合っているような絵までが描かれていた。


「ヴィクトリアちゃん、本当に男の人は女性にこういうことをしてほしいと思っているのかい?」

「思っているので、間違いないと思いますよ。だって、あの時、ホルストさん、目を血走らせながら、この本を凝視していましたもの。男性はみなさんは女性にこのようにしてほしいと望んでいるのですよ」

「そうか」


 アタシはもう一度本を見て、ゴクリとつばを飲み込む。


 アタシがこの絵のような恰好をしてホルスト君の前に立つ。

 それを想像しただけで恥ずかしくなり、心臓の鼓動が早くなる。


 それは他の二人も同様の様で、アタシ同様、ゴクリとつばを飲み込む。

 しばらくはそうやってただ本をじっと見ているだけだったが、やがて誰となくぽつりとつぶやく。


「この衣装を着てみませんか?」


★★★


 アタシたち3人はバニースーツを着てみることにした。


 とりあえず、服を脱ぎ、あられもない姿になると、着用を始める。

 バニースーツには保護魔法がかけてあったのだろう。随分昔の物にしては状態が良い。

 それにアタシたち3人とも身長も体型もバラバラなのに、着てみると妙に各々の体に合うサイズなのだ。

 これは人に合わせて服のサイズが変わる魔法があるので、それが使われているのだと思う。


「これはあれですね。下の面積が小さいですね。これではアソコガ見えてしまうかもしれませんね」

「ああん。もうちょっと見えないところのお手入れをちゃんとしておくべきでした。これでは丸見えです」

「こんな体のラインがわかる服はちょっと」


 3人とも衣装に対して文句を言いつつも嬉々として着用している。

 本音では3人ともこの格好をホルスト君に見せて喜んでくれる様を想像して嬉しいのだと思う。


「ようやく着替え終わりましたね」


 しばらくして3人とも着替えが終わった。

 3人でお互いの姿を確認する。


「「「すごくエッチだ」」」


 感想はその一言に尽きた。


「エリカちゃんはその何というか、大人の色気が出ている感じだね」

「ヴィクトリアさんは、小悪魔的というか、普段と大分印象が違いますね。いいと思いますよ」

「そういうリネットさんも、体のラインが強調されて大きなお胸がより大きく見えて、すごいです。これなら、男の人はイチコロです」


 一応そうやってお互いをほめたたえたりもするが、皆どこか上の空だ。

 恥ずかしさのあまり、心ここにあらずといった感じであった。


 と、ここで異変が起きる。


「何だ?騒々しいな」

「「「!!!」」」


 あろうことか、アタシたちが騒がしくし過ぎたせいでホルスト君が目覚めてしまったのだ。


「あれ?お前たち、その恰好は?」

「『眠り』」


 トテ。だが、とっさにエリカちゃんが魔法をかけると、ホルスト君は再び夢の世界へと戻って行った。

 危なかった。間一髪だった。


 もうちょっとでこのとんでもない恰好を見られるところだった。

 いや、もう見られているのだが、そこは聞かれても、夢でも見ていたのでは?と3人で協力して惚けることにした。


「本当、危ない橋は渡るものではないな」

「その通りです」

「次はもっと慎重にやりましょう」


 アタシたちはその後、さっさと着替えると明日に備えるべく、眠りに入るのだった。

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