第9話 結論
「一応聞いておくんですけど……それってギルド長以外はないですよね?」
「そうだね。ギルド長との契約は僕の仕事だけど、君を再雇用できるのはギルドの権限だ。僕のできることじゃない」
「ですよね……」
つまりどういう事かというと、私はクビになった以上今はフリーということになる。そのため今までのように普通のギルド職員として働くには他の新人と同じく、面接やらを受け直さなければならない。これができるのは少なくとも来年だ。
一方で面接などとは違い契約はいつでも交わすことが出来る。つまり、ギルド長として私と契約をするのであればすぐに復帰ができるというものだ。
だが、それは私のギルド長としての能力を買われるということ。経験も知識も乏しい、そんな私がいきなり全職員と冒険者の責任を背負うのだ。
崩壊寸前のギルドの全責任を負うか、それとも少なくとも1年間収入ナシで生きていくか、どちらに進んでも先の見えない選択肢である。そもそもなんで私なんかにギルド長の提案が来るのか。
「――うん、迷うよね。僕が町長を引き受ける時もそうだった。だって元々は目立たないヒラだった。でも気づけば30年以上続けられているからね」
迷う私に、町長はそれとなく呟いた。
「誰だって最初は初心者。僕のは一例に過ぎないけど、結局合う合わないかはやってみなければ分からないものだ。まあギルドが好きな気持ちがあれば何とかなるさ」
「ギルドを好きな気持ち……ですか」
頷く町長。
今まで何となく働いてきたせいか、そんなこと考えたことがなかった。
そもそも、何故このギルドに勤めてきたのか。改めて考え直すと分からないものだ。収入のため? やりがい? 何も思いつかない。それとも忘れてしまったのだろうか。
そもそもこんな事で迷うくらいならギルド長なんて勤まらないのでは? でも折角チャンスを貰ったわけだし……いや、これはチャンスと言えるのか? ――だめだ、考えがまとまらない。
そんな私を見かねたのか、町長はいつの間にか私の横にいて、私の肩を軽く叩いた。
「と言っても、シオン君にとって大事な選択を今すぐに出させるというのもおかしな話だ」
「……!」
「結論が出たら、またここに来て。そこまでは僕がどうにかしておくよ。早くしろとは言わない。でも、自分にとって最も納得出来る答えを、次来た時に聞かせて」
「……はい、分かりました」
私はそう言って残っていたお茶を飲み干し、「失礼しました」と一言礼をして部屋を出ていった。
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