最終日、午後9時

「それはいけません慎二様」


美菜子のその言葉を聞いて、慎二は目の前が暗くなるようだった。そして。


「私は、慎二様の奴隷として永遠にご奉仕させていただきたいです」


(これは、奴隷としての演技か?それとも……)


それと同時に、ドアが開いた。黒服たちが大勢部屋に入ってくる。

直前まで奉仕されていた慎二は無防備な下半身をベッドの掛け布団に隠し、呆気に取られていた。


放送で聞き覚えのある声が話し始める。


「いやー、良いものを見せてもらった。これは新しいカップルのマッチングの試みでね、君たちも充分に互いの愛を確かめ合うことができただろう。あ、そうそう、刑罰っていうのは2人とも一生誰かと結婚する権利を失うってものだったんだ」


慎二は美菜子の方を見つめる。美菜子はニコッと微笑んだ。


「慎二“さん”、これからも、よろしくお願いします」

「美菜子“さん”……ありがとう……本当に……!」


「いやいや、おふたりはよく頑張ったよ。ほとんどが支配欲や相手からの暴力に耐えかねて脱落していったからね、素敵な愛情の形を、教えてくれて嬉しいよ、さぁ、これで2人は自由の身だ。好きにしたまえ」


慎二は服を整えると美菜子を抱きしめ、手を繋ぎながらビルのエレベーターを下った。同じようにこの企画に合格したペアはもうひと組いたらしい。


2人は、慣れないさん付けの呼び合いをしながら帰路についたのだった。

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肉奴隷トライアル 羊屋さん @manii642

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