A1 スタート前の現実話

A1-1 配達

ピンポンとブザーが鳴る。


「はーい、どなたですか?」


「郵便です」


 誰かを確認してドアを開ける。


「ありがとうございます」


 落ち着いて穏やかそうな眼鏡をかけた女性が顔を出す。


「サインか印鑑お願いします」


 女性はサインを書き終える。


「はい、ありがとうございます」


「はてはて?何かしら」


 名義を確認すると三滝正樹(みたきまさき)と書かれている。


「ふう………………まさちゃん、◯だ◯とグッズ届いてるよ」


 大きい声で呼び始めるとバタンと大きな音を立てドアが開き少年は顔を出す。


「………母さん、俺はそんなの頼んで」


 ガシッと突然抱きつかれる


「毎回言ってるでしょ母さんではなく、なみちゃんと呼びなさい❗」


 耳元で話始める。


「だから」

「なみちゃんと呼びなさい❗」


「…………はい、なみちゃん」

 笑顔の圧力で素直に呼び始める。


「よろしい🎵」

 正樹から離れる


「じゃなくなみちゃん、そんな物買ってません」


「じゃあ中開けて良い?」


「なみちゃん、プライバシーは?」


「別に見るのは良いでしょ」


「嫌嫌、俺の部屋で空けるから」


 荷物を持って行こうとすぐ部屋に行こうとするが肩を掴まれる。


「別にやましい物は買ってないなら、別に見て良いでしょ」


「自分の買った物は見せたくないでしょ。なみちゃんもそういう時あるでしょ」


「何?まさちゃん、私が買った物が気になるなら言ってよ今度買った物を教えてあげるから♥️」


「………そういう意味ではなく、秘密にしたいことは誰にでもあるでしょ」


「家族なら秘密はなしだよ、まさちゃん♥️」


「秘密にさせてください、邪魔しないで」


 何とか手を離そうと強引に行こうとするが引きはなせずにいると目の前にポニーテールの黒髪の女性が立っている。


「え?」


 気づいたら箱が手元になく何故か床に自分が横になったというか、よくわからない状態になる。


「隠し事はだめだよ、まさちゃん」


 俺の身体にのり始めて話始める。


「ね、うっ」


「姉ちゃん呼びは禁止だよ、まなか姉ちゃんと呼びなさい」


 関節を締める、正樹の身体がミシミシ、ギリギリとにぶい音がし始める。


「ね、まなか姉ちゃん、やめて、やめて、痛い、痛い、おれる、おれる」


「さてさて、まさちゃん、箱の中身を見せて欲しいなあ」


「別に見る必要ないでしょ」


「私に秘密はなしだよ、まさちゃん」


 さらに関節を締める。


「ぎ、なみちゃん助けてというか止めて」


「スキンシップ楽しそうだね、まなかちゃん🎵ほどほどにスキンシップしなさいね🎵」


「はいはい、なみちゃん」


「助けて」

 声が届いたのか、もう一人の眼鏡をかけた少女がかけつけ、まなと呼ばれた子を引き剥がす。


「まなかお姉ちゃん、なみちゃん、止めなさい、まさちゃんが困ってるでしょ」


「あらあら、まいちゃん」


「なみちゃん、見せたくないものは誰にもあるから、別に良いでしょ」


「だめよ、情報は共有するものだよ、まいちゃんも中身、気になるでしょ?」


「べ、別に気になったりはしないかな」


「はいはい、バレバレだよ、まいちゃん、あなたも見たくて気になってしょうがないんだね」


「別に見なくて良いよ」


「あらあら、素直になりなさいまいちゃん」


「だから、見なくて良いよ」


 言い争い始め、正樹は箱を持って部屋に逃げ込もうとする。


「はいはい、逃げちゃだめ足払い」


 まなかちゃんの足払いが決まり痛まない程度に倒される。


「まいちゃん、ちょっと耳貸して」


「何、まなかお姉ちゃん、」


(やましい物の可能性があるかも知れないから見るべきだよ)


「仮にやましい物でも、プライバシーはあるでしょ」


(そうだとしたら、知っておくべきだ)


「別に見る必要なんて」


(知っておくことで、埋められる溝はあるはずでしょ、まさちゃんが大好きならなおさらだ、良いところも、悪いところも知っておくのも大切だ)


「…………でも、」


「はいはい、それじゃあ開封するね」

 空気を読まずに突然なみちゃんが開封し始める。


「「「なみちゃん」」」

三人は空気の読めない行動に声を出してしまう。


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