第16話 様子がおかしいよ……新田!(夏樹視点)


「お、おはよう新田」

「……」

「に、新田?」


 今日も(最近では)いつものように新田が出て来るのを新田の家の前で待ち、新田が出てきたので挨拶をするがどうも新田の様子がおかしい。

 いつもなら少し怖がりながらも挨拶を返してくれるのだが今日は挨拶されていることに気づいていないのか返してくれない。

 やはり昨日の件だろうか……や、思い出さないでおこう。きっとまた顔が赤くなってしまうから。


「じゃ、じゃあ今日も行こっか、新田」


 いや、挨拶を返してくれないだけならまだいい。昨日の件があるから怒ってるだけなのかもしれないし……怒っていてもおかしくないだろうし。

 で、でも……。


「そ、そんなに見つめるのはやめて……くれない……かな?」


 そう、新田は今日会った時から何故か私のことを見つめてくるのだ。これは私の勘違いではないだろう。現に今もずっと見てくるし。

 で、でもこんなのずっと耐えられない……。

 今だって顔が赤くなるのを必死に堪えてるのに……こんなに見つめられたら。


「もしかして……私の顔になんかついてる?」

「えっ、あっいや……すまん」


 なんとか絞り出した言葉で新田に1番あり得そうな可能性を尋ねるがどうやら違ったらしい。……ま、まぁようやく目を離してくれたからいいんだけど。

 にしても本当になんだったのだろうか?


 そしてその後は普通に登校した新田と私であったが、何故か新田は登校中自信満々な顔であった。理由はよく分からないけどなんか可愛かったのでよしとしよう。


 *



 混乱! 混乱! 圧倒的混乱! 教室は異様な雰囲気に包まれていた。2-Bの生徒達も困惑を隠しきれず中には地震が起こるのではないかと、非常用持ち出し袋を準備する生徒まで現れる始末。……いい心がけです。


 何故そんなことが起こっているのか? 一体生徒達を驚かせているものとは?

 それは簡単。今日は朝から新田 翠氏の様子がおかしいのです。昨日までは美少女な夏樹 葵こと夏樹が近づくと怯えたように遠ざかり、逃げ回るという非常にうらやまけしからんことをしていた彼ですが……。

 なんと今はそれを受け入れるどころか夏樹に積極的に近づく始末! これは明らかな異常事態。

 やはり昨日の件が作用しているのでしょうか? いや、そうとしか考えられない事態です。好きになっちゃったか? 好きになっちゃったのか?

 男ならヘタるじゃなくていっそ告白の1つや2つくらいしてしま____」

「うる、さい」

「ギャァァァァア、目が! 目が! 目に未知の感覚がぁぁぁ」


(どこで手に入れたのか分からない)マイクを持ち騒ぎ続けていた駿太の目を新田の素早い目潰しが襲い駿太が床をのたうち回る。

 駿太は「あぁぁぁ、ナレーションっぽくする作戦がぁぁ」とか変なことを喋っているがスルーして構わないだろう。


 そう、問題は他のみんなも認めるほど今日の新田の様子は変だということ。

 例えば朝のホームルーム前……私がいつものように新田の席の前に立つとお話しようと言うといつもなら嫌がるのだが、今日は快く承諾……むしろ新田の方から話題を振ってくれたり。

 そっそれに時折笑顔を見せたりしてくれる始末で……そ、そのごちそうさまでした?

 じゃなくって!! そういうんじゃなくて……とーにかく変なのだ。


 これ以外にも新田は今日変なところが一杯あってクラスメイトも少し心配している。なんか凄くニヤニヤしてる気がしなくもないけど……みんな多分心配してる。そのはず。


「本当に大丈夫なの新田?」

「んっ元気だぞ? 今日は朝から気分がいいしな」


 私が心配して声をかけるが新田はそれに対し笑顔で返す。……ちょっとヤバいくらいの破壊力だ。今までほとんど見たことのない笑顔……その威力はとんでもないものだ。

 だが、ここで引き下がるわけにはいかない。

 体調面で心配する必要はなさそうだが精神面はどうか?


 真面目な新田のことだから私に罪悪感を抱えて明るい態度をとっているのかもしれないし、怒っていて感情の裏返しなのかもしれない。

 ここは断られるのは分かっているが一応やるしかないだろう。


「あ、あの新田今日……い、一緒に弁当でも食べな____」

「いいよ?」

「そうだよね。駄目だよね」

「じゃあ屋上でも行くか」

「うん____えっ!?」


 あ、あれ? おかしいな、今変な言葉が聞こえた気が……。


「おーい、なにしてんだ? 弁当持っていくぞ?」


 あれ? あれぇぇぇぇ!? へっ、これどうなってるの!? えっと、新田は私と一緒に弁当を食べることをよしとしたの?

 おかしいよ! 今までの新田からじゃありえない!!


 でも、でもっっ!!


「まっ、待ってすすすすぐ行くから」


 こんなチャンスを逃すほど馬鹿な私じゃない。私は混乱しながらも急いで準備をするのだった。


 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回 「新田 翠は自分の気持ち確かめたい」


 この話の新田くん視点です。また、しばらく空いてごめんなさい。投稿……頑張ります。


 最後に少しでも面白い、続きが見たいと思ってくださった方は星や応援お願いします。


 では!

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4万pv感謝! 昨日まで犬猿の仲だったはずの学年一の美少女の夏樹さんが今日会ったらオチてました。本当になんで!? タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK

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