感傷

中身の無い退屈な

お偉いさんの挨拶を聞き流し

僕はそこを出た


多少見慣れた道

同じような騒がしい人混みの中を

ひとりで歩く


別に寂しくもなかった

そんなの慣れているから

いつものことだから


仲睦まじい男女がいた

知らない人だった

僕の横を通り過ぎていった


別に 寂しくもなかった

そんなの慣れているから

いつものことだから


はしゃいでいるグループがいた

知らない人たちだった

僕を追い抜いていった


別に 寂しくもなかった

「そんなの慣れているから」

「いつものことだから」


寂しくない

「寂しくない」

寂しくはない


また誰か僕の後ろにいる

そして通り過ぎた


ほんの少しの 叶いもしない

期待が静かに崩れ去る

一体何度繰り返してるんだろう


羨ましいのだろうか

恨んでるだけだろう

n回目の勘違い


そうしていつしか消えた

人混みも忘れて

歩き続けた


どこかへ寄り道しようか

また期待を抱いたけど

すぐに消し去った


寂しくはなかった

ただそこには

漠然とした虚しさが

何かへの 声のない渇望が

あるだけだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る