第八話 ゾンビは村を制圧する
さてさて。
マオから与えられた任務は二つ。
一つ――村を襲い、住民を殲滅すること。
二つ――その住民をゾンビ化し、魔王の戦力とすること。
マオに聞いたところによると。
彼女がこれまで、村を襲わなかった理由は一つ。
魔王城の戦力不足。
ということはつまり。
ゾイはその戦力不足を、解消するに足る。
そう判断されたということに違いない……すなわち。
「僕はマオ様に期待されている」
と、ゾイは思わずにやけてしまう。
そんな彼は現在、件の村へとやってきていた。
(さて、最初はどうしようかな……とりあえず、村の中に入るか)
どうするかは、それから考えよう。
やるなら、なるべく楽な方法で――。
「止まれ、見ない顔だな……何者だ貴様!」
と、ゾイの思考を断ち切る様に聞こえてくる声。
見れば、槍を持った男がゾイの方へと近づいて来る。
きっと、門番に違いない。
そんな彼は、ゾイへと言葉を続けてくる。
「貴様、何者だと聞いている! この辺りに住む者ではないだろう! それにその腰の剣はなんだ? 何をしに来たのか、身分がわかるものを見せろ!」
「何者? それに身分だって?」
「何がおかしい!」
言って、ゾイの方へとより近づいて来る門番。
きっと門番は、ゾイのことを威圧しようとしているに違いない。
「……ふっ」
昔のゾイなら、きっと怖がったに違いない。
だが、今は違う。
「何がおかしいと言っている!」
と、またも威圧してくる門番。
ここまで来ると滑稽だ。
(雑魚の分際で、僕にこの口の利き方……まるでなってないな)
きっと、この門番。
いや、この村の住民達。
彼等はアオイ達が作り出した平和の上、ぬくぬく暮らしてきたに違いない。
その平和には、ゾイという犠牲があったこと。
それを知りもせずに。
許せない。
アオイたちと同罪だ。
皆殺しにしてやる。
考えたのち。
ゾイは鞘から剣を引き抜き。
「死ね!」
と、ゾイはその剣を門番へと突き出す。
狙いは奴のしんぞ――。
「あ? なんだお前、ふざけてるのか?」
と、聞こえてくる門番の声。
気がつくと、ゾイの剣は門番に弾き飛ばされていた。
しかも――。
「へ?」
ゾイの胸。
そこには槍が突き立てられていたのだった。
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