第44話 久しぶりにカミラ様に会いました
翌日、アンネ様と一緒に朝食を食べ、2人でお茶をして楽しむ。今日は急遽貴族学院が休みになったため、アンネ様もいるのだ。
ちなみに私は、近々貴族学院を退学する予定だ。元々貴族が通う貴族学院。我がファレソン侯爵家は、近々正式に取り潰されるだろう。だからもう私は、貴族ではなくなるからだ。
既に書類は準備してあり、後は提出するだけ。ダスディー侯爵に頼んで、明日にでも提出してもらうつもりだ。
「ジェシカ様、実はあなた様に会わせたい方がいらっしゃるのです」
嬉しそうにそう言ったアンネ様。私に会わせたい人って誰かしら?疑問に思いつつ客間で待っていると、扉から入って来たのは…
「ジェシカ様、お久しぶりですわ」
「カミラ様、修道院から戻っていらしたのね。よかったわ」
そう、カミラ様だ。どうやらダスディー侯爵が私との約束を守ってくれ、カミラ様を修道院から出してくれた様だ。
「ジェシカ様、今回の件、本当にありがとうございます。実は私も、昨日の断罪の場にいたのですよ。それにしても、ネイサン様のあの醜い姿、今思い出しても笑いがこみ上げてきますわ。まさかジェシカ様に泣いて縋るだなんて」
そう言ってカミラ様が声をあげて笑っている。その姿を見たアンネ様も
「本当に、あれはないですわよね」
そう言って笑っていた。確かにあの姿は、醜態以外の何物でもない。
「あんな男を私は愛していたなんて、人生最大の汚点ですわ。本当に恥ずかしい限りです」
散々笑った後、ふとカミラ様が我に返った。同情の眼差しで、カミラ様を見つめるアンネ様が、そっとカミラ様の肩を叩いている。
「まあ、でも無事断罪できたのですから、よかったではないですか。来週からカミラ様も、貴族学院に通うのでしょう?」
「ええ、そのつもりですわ。ねえ、ジェシカ様も一緒に貴族学院に通いましょうよ。もうあなた様を傷つける者はおりませんわ。せっかくお友達になれたのに、このままさよならなんて、嫌です!」
「私もカミラ様と一緒の気持ちですわ。ねえ、ジェシカ様、もうあなた様は1人ではないのです。父もジェシカ様を養子に向かえてもいいと言っているのですから、ぜひここで一緒に暮らしましょう」
真剣な顔で私を見つめる2人。でも…
「ありがとうございます。でも、私はずっと旅に出る事が夢だったのです。ですから準備ができ次第、この国を出ようと思っておりますわ」
これだけは、絶対に譲れないのだ。
「…わかりました。本当にジェシカ様は頑固なのですから…」
少し寂しそうに笑ったカミラ様。
「確かに寂しいですが、ジェシカ様はずっと旅に出る事を夢見ていらっしゃいましたから、応援して差し上げましょう。でも、万が一旅に行き詰まったら、すぐに帰って来てくださいね。あなた様の居場所は、ここにありますから」
「ありがとうございます、アンネ様」
その後は女3人、話しに花を咲かせた。昨日といい今日といい、本当に楽しい時間を過ごした。それもこれも、全てアンネ様のお陰ね。カミラ様もわざわざ訪ねてきてくれて、本当に嬉しいわ。
17年間、本当に色々な事があった。でも…
1年前、行動を起こそうと決意して本当によかった。あの時決断できたから、きっと今の幸せがあるのだろう。そんな気がした。
ただ…やはりヴァンを失った心の傷は、まだまだ癒える事はない。きっと一生癒えないだろう。それでも私は、前を向いて生きていきたい。
そう強く思った。
10日後
やっとお父様たちの判決が出た。お父様と王妃様は極刑、継母は国の端にある重犯罪者が収容されている施設に収容されることになった。ダスディー侯爵がかなりわかりやすく書類をまとめていてくれていた様で、異例の速さで裁判が進んだらしい。
そして、私の実家でもあるファレソン侯爵家は、正式に取り潰され、私は平民になった。ネイサン様も先日、正式に公爵家の養子に入ったらしい。
最後まで私の名前を呼び、泣き叫んでいたとの事。本当に情けない男だ。
正直お父様の極刑が決まった時、何とも言えない気持ちになった。殴られたり暴言を吐かれたりはしたが、あれでも一応私の父親だ。正直、生きて罪を償ってほしかった。
でも、判決で決まった事なのだから、仕方がない。きっと世間では、親を売った恐ろしい令嬢と言われているのだろう。それでも、私は自分のしたことに後悔はない。
陛下からもかなりの額の慰謝料を貰った。さあ、いつまでもここで甘えている訳にはいかない。
その日の夕食時、私は皆に明日旅に出る事を伝える事にした。
「皆様、長い間お世話になりました。父たちの裁判も無事終わりましたので、明日、旅立とうと思います」
「明日旅に出るのですか?そんな…いくら何でも急すぎますわ。だって、ジェシカ様のお別れ会だってしていないのですよ。それなのに…」
「アンネ様、ありがとうございます。でも、もう決めたのです。それに、お別れ会などして頂いたら、旅立ちにくくなります。出来れば静かに旅立ちたいのです」
既に泣きそうな顔のアンネ様に、そう伝えた。
「でも…」
「アンネ、ジェシカ嬢が決めた事だ。素直に送り出してやろう。ジェシカ嬢、本当に旅立ってしまうんだね。私たちは、いつまでもここにいてくれていいと思っているのだよ」
「ありがとうございます、ダスディー侯爵。でも、旅に出る事は、最初から決めていた事ですから」
「そうか、わかった。でも、見送りはさせてもらってもいいだろうか」
「はい、もちろんです」
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