第37話 ハロルド視点6 王宮の動きがきな臭いです。

俺はキャサリンの活躍を見て唖然としてしまった。


キャサリンはほとんど一人でスノードニアの精鋭2万を殲滅してしまったのだ。


キャサリン一人いれば、スノードニア1国征服してしまうことも出来るのではないかと思えるくらいの活躍だった。


公には俺の祈りに、神が古代竜を遣わしてくれて、2万の大軍を殲滅してくれたことになったのだが・・・・。


その後、古代竜は、耕作地を踏み荒らし、森林を燃やし、敵辺境伯領の領都を破壊、殲滅してくれたのだ。古代竜はキャサリンの意を汲んで行動してくれるのだ。


砦なんて木端微塵にされていた。


更に、慌てて帰ってきた辺境伯軍2千も一掃してしまったのだ。


この二人がセットになればまさに怖いもの知らずだった。


もう、これは何が何でも俺が取り込むしか無いと皆が言いだした。


いや、でもそういうものではないだろう。そもそも、キャサリンは隣国の公爵家令嬢なのだ。


「しかし、ハロルド様にもらってほしいとその父上から頼まれているのですよね。我が家にも公爵家からの使者が参りましたし、このぶんでは王家にも行っていると思われますが」

エイブが俺を見て言ってくれた。


「しかし、キャサリン本人の気持ちもあろう」

「女の勘ですが、キャサリン様もハロルド様に気はあると思います」

アデラインまでが言うのだが。


「そもそも今回のスノードニアの侵攻、王家は知っていて、宰相と第二王子殿下が援軍を送らなかったことが判明して、国王陛下が激怒されて宰相の降格を決定されたとか」

エイブが言い出すのだが、


「元々、宰相は援軍を送るのをいつも渋っていただろうが」

「それはそうですが、キャサリン様の活躍がなければ、今頃は王都も占拠されていた可能性もあります。それだけの戦力をスノードニアは集めていたのです。それを第二王子殿下と宰相が図らずしも騙されて援軍を送らなかったことに陛下は激怒されたみたいで、私に第二王子殿下の教育を一からやってくれるようにと依頼が来ています」

エイブが真剣な面持ちで俺を見た。


「あのわがままな弟をこの地に派遣するというのか」

「3年は面倒を見てほしいと言われています」

「あの弟が3年も耐えられるわけはなかろう」

俺が呆れていうと、


「その時は王子を婿に出すとおっしゃっていらっしゃいます」

「まさか、俺ら2人以外に王子は居ないのだぞ」

俺には信じられなかった。弟を婿に出すということは俺しか王家を継ぐものがいなくなるという事だ。


「陛下は第二王子殿下が、それだけのことをしでかしたというご認識のようです」

「まあ、本当にキャサリンが居なければスノードニアの軍が王城までは押し寄せたのは確実だろうな」

「その意味を知るためにもこの地で最前線で経験しろと言うことでしょう。次はないとも書かれていました」

エイブがいう。


「そのうえで、今回の舞踏会で、ハロルド様の王太子殿下就任を発表されるようです」

「何を言うのだ。俺はそんなのは認めないぞ」

「ハロルド様、ここはお受けされるしか無いかと。あの第二王子殿下が王位を継がれたら、また他国に騙されて国が滅ぶ可能性もあると、考えのある貴族共も心配をはじめたようですし」

エイブじいが言うのだが、


「いやしかし、」

「もはや、今回の件でハロルド様は神に気に入られし王子として庶民の人気も鰻登りです」

「それはその方共が流している噂のせいだろうが」

「ここで、ハロルド様とキャサリン様がご結婚されて子をなされればこの国も安泰でございます」

エイブ爺は更に畳み掛けるのだが、


「いや、待て、その事は、俺とでなくても、キャサリンさえいればいい話だろうが。無敵のキャサリンの血さえ引いている子が出来れば良いのだろうが」

「まあ、そうご自分を卑下なさりますな。元々殺されそうになったキャサリン様を助けられたのはハロルド様ではありませんか」

実は違う。助けてはない。向こうから縋られただけだとは流石に言えなかった。


「また、王宮ではハロルド様を亡き者にしようと第二王子殿下の一派が動いているみたいです」

「それで今回は100騎も連れて行くのか」

「はい。まあ、ハロルド様はキャサリン様とご一緒いただければ絶対に安全でございますが」

「おい、待て、普通は逆だろう」

俺は怒って言うが、エイブ爺は俺の怒りを受け流してくれた。


まあ、キャサリンさえいれば鬼に金棒で、そのとおりなので、あまり強くは言えなかったが。


しかし、普通は女を男が守るものだろう! 俺はそう言いたかった。

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